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第12話:喰らう者


俊弥

頭脳:D 身体能力:B 武器:ワルサーP99

特徴:力はあるが頭は弱い。よく和司にいじれれる、いわゆるいじられキャラ。頭脳、身体能力共に班員の中では最低ランク。お調子者であり優しい性格である。

新潟はミサイルの影響でほとんどが焼け野原になっていた。とりあえず魚沼市まで行くことにした。

「ひどいな」

ミサイルで死んだ人が地面に転がっていた。これも全て星野かと思うと怒りと憎しみがこみ上げてくる。それから走り続けると魚沼市に着いてしまった。だが何も見当たらない。

「手がかりなしか」

そう言いながら和磨は周囲を詮索し始める。

一体どれだけ探しただろう。もう日が落ちている。そんな時、

「何かあったぞ」

遠くの方に場違いな洋館を発見した。洋館の前まで行くと立て札が立てられていた。

「ライス研究館 危険注意」

この立て札により、さっきの生き残っていた住民の話が頭に残っていた。

「あそこは何やっていたか分からないけれど、一回大きな悲鳴が上がったんだよね」

何故悲鳴が上がるんだ。ま、行ってみれば分かる。それに星野がいるとしたらここしかないはず。

「さぁ行くか」

車から降りたのは康太、和司、リョスケ、俊弥の四人だった。亮太とこうちゃんは深夜の疲れのため、和磨と車に残ることになった。

俊弥が空を見上げる。晴れていたのに急に曇り始めてきた。それが洋館の雰囲気を悪くしていた。

「嫌な感じだな」

そう洩らし、リョスケ達の後ろについていった。目の前に立つとすごい不気味だ。康太はそう感じていた。ミサイルのせいで壁は焼き焦げ、窓ガラスの大半は割れていた。康太がドアノブに手を回すとあっさりとドアは開いた。中に入ってみると思った以上に汚くはなかった。多少、カビの臭いが鼻に付くが。和司の意見で二手に分かれることになり、和司と康太、リョスケと俊弥に別れて捜索することにした。

和司と康太は、一階のリビングへ行った。手がかりになりそうな物は何も無かったが、つい最近まで誰かが住んでいたような感じだ。二人はしばらく捜索した後、二階へ向かった。

リョスケと俊弥は書斎を探していた。

「きったね~」

リョスケが本をつまんでいた。本はシミと汚れで読めるものではなかった。リョスケはずっと探し続けていた。その時、一瞬だが背筋が凍るほどの気配を天井から感じた。リョスケはすぐに天井を見上げるが、何もいなかった。俊弥もいなくなっていた。

「あのゴリラ」

本を床に叩きつけ、すぐに部屋を出て行った。

「あんなところ汚くて探せねぇっての」

俊弥は書斎の隣にある衣装部屋の前に立っていた。

ドアを開けるとすぐ目の前に大きな影があった。驚きと恐怖で声が出ない。そのまま尻餅をつくが、よく見ると鏡に映った自分だった。

「おどかすなよ」

鏡に向かってそう言い部屋の中に入っていく。

「ここも汚えなぁ~」

そう洩らし、床に落ちている物をどかしながら前へ進む。

「ドスッ」

後ろから何かが落ちたような音がした。後ろを見ると俊弥は言葉を失った。そこにいたのは、頭はおにぎりそのもので目は無く、ひどくやせこけた人間のような姿、あばらは浮き出ている。そして異常な程爪は長く、爬虫類のような雰囲気を持つ生物だった。

この時、俊弥は恐怖とは別の感情を抱いていた。自分でも何か分からない。だが昔経験したことのある感情だった。

「何だよこいつ」

俊弥はすぐに銃を構え、謎の生物に向けて撃つが、素早すぎて当てることができない。部屋は狭く俊弥には不利な状況だった。

「くそっ」

こんな時に銃の弾が切れてしまう。すぐに新しい弾を詰め込む。だがこの隙を見逃してくれなかった。謎の生物が壁から飛び掛かってきた。紙一重で俊弥はかわす。爪にかすっただけで服が切り裂かれた。

「どこだ」

俊弥は謎の生物を見失ってしまう。前後左右を確認してもいない。

「そこか」

俊弥は天井を見上げた。謎の生物は天井に張り付いていた。

「いける」

俊弥はその時勝利を確信した。また飛び掛かってきた時、紙一重でかわし、梅干に銃弾を食らわせることができる。

「来い、来い」

この油断はすぐに死の恐怖へと変わった。謎の生物の口から自分の体長よりもはるかに長い舌を出してきた。その先端には入れ歯のような物がついている。

「やばい、避けなきゃ死ぬ」

頭はそう思っているが動くことができなかった。俊弥はこの時、謎の生物を見たときの感情が何なのか気が付いた。

いや、感情ではない。相手との圧倒的な力の差、何をしても縮まることのない才能の差、これだった。

「気づくのが遅かったな」

そうポツリと洩らし、逃げようとはしなかった。正面から死を迎いいれようとしていた。

頭の中でみんなと過ごした思い出が蘇る。

まだみんなと遊んでいたかった、

まだみんなと話していたかった、

まだみんなと笑っていたかった、

俊弥の頬に一筋光る雫が流れた。

「みんなごめん」

俊弥から飛沫が上がる。紅い、紅い飛沫が。

俊弥の声はトイレにいたリョスケにも聞こえていた。すぐにトイレを飛び出す。

「俊弥」

リョスケは俊弥の声が聞こえた方に全速力で走った。衣装部屋の前に立つとリョスケの右手にあった散弾銃が落ちた。

「嘘…だろ…」

リョスケの目に映ったのは、俊弥の屍の上にいる謎の生物だった。すぐに二階に逃げようと全力で走った。恐怖のあまりそれしか頭になかった。だが、謎の生物は、階段の中腹に素早く移動しリョスケの逃げ道を塞いだ。

「くそ」

力無くそう言い、リョスケはキッチンへ逃げ込んだ。



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