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第三章 文化体育発表会編

【あらすじ】


 誘拐騒ぎを経て、そのままイシケナル・ミーノマロ公爵の治めるカヒナシ領に留まる事になったヘリオス。その彼との通信手段として、セレネは緋色の小ネズミを用いた高速での手紙の遣り取り方法を確立する。その手紙により、商隊の前に魔物が現れる事が立て続けに起こっている情報を得る。


 学園では、相変わらずセレネを目の敵にして言い掛かりをつけて来るユリアン。言い掛かりついでに護衛ズにも探りを入れて来た彼女に応戦しようとしたところで、彼らの名前をはじめとした、家族や年齢等々、基本的な事すら何も知らない事実に今更ながら気付いてショックを受ける。


「僕が君の護衛であるのは何物にも代えられない前提条件だよ。それに次いで、君も知っている通り、僕自身が継承者であると共に監視者でもある。そして監視者であるがゆえに、継承者とは言い切れないながらも特殊な魔力の色を持った君を見守るため、僕がここにいるんだから。だから僕は君のためにここに居る。それじゃぁ、ダメ?」


 ハディスに素性を問いただしてもやんわり明言を避けられてしまうことから徐々に歯がゆさが募るセレネ。その気持ちは、分からない事に対するものだけではなく『手の届く、懐に入れた範囲の人間は守りたい。だから護衛であるハディスやオルフェも護りたい』と云う思いから来ていた。セレネに護衛が必要な理由については、ここで初めてハディスから継承者しか持たない特殊な色の魔力をセレネが持っており、それを知り、利用しようとする高位貴族が居るからだと伝えられる。同時に、セレネの桜色の魔力が該当する神器が無いことも語られる。


「約束してください。貴方達はわたしの護衛です。貴方達のやる事、身の安全の責任はわたしが取ります。なので、絶対にわたしを差し置いて厄介ごとに首を突っ込まないでください。やるなら一言言ってください。無理に止めないくらいには貴方たちを信頼しています。」


素性が知れないながらも、既に彼ら2人を認めているセレネはその思いを伝えるのだった。



 各地で魔物の目撃例が増える中、セレネの親友であり、エクリプス辺境伯令嬢スバルの元へ、領地から魔物発生についての調査依頼がもたらされる。辺境の地であるエウレア地方でも、カヒナシ同様に魔物の目撃証言が増えていたのだ。

 勿論、周辺地域でも冒険者や旅人も僅かながら被害を受け始めていた。その中でも、なぜか抜きん出て商隊が多く被害を受けていた。



 学園では文化体育発表会に向けての準備が始まり、セレネは歴史学のグループ課題を「建国史」調査として取り組み始める。また、全学園生を対象とした歌劇の練習も始まり、衣装などの小道具準備の担当となる。そんな中、歌劇の演技指導として特別講師ポリンドが現れる。

 難航する建国史や月に関わる調査で、ポリンドやミワロマイレから王家に関わる者しか得られない情報が有ることを知る。そして同時に、その情報を得るには妻や愛妾として、ハディスをはじめとした王家に関わる者との縁を結べば良いと伝えられ、困惑し、反発するセレネだった。


 カヒナシ郊外への、文化体育発表会用の資材を積んだ商隊到着に合わせ、スバルと計画していたエウレアとカヒナシ間の調査・偵察兼、商隊の出迎えに向かうセレネ達。カヒナシでは、魔物に堕ちかけた人間「生成(なまなり)」騒ぎに巻き込まれ、成り行きによって同行することになったイシケナルとともにシンリ砦へ向かうことになる。

 シンリ砦の面した大樹海は、一面黄色い魔力に覆われてしまっていた。それは、とある因縁を持ってイシケナルと繋がっていたムルキャンが、引き起こしていた異常事態だった。黄色い魔力を用いた自己研鑽によって魔物を使うことができるようになり、それと共に生成へと変じていたのだ。商隊ばかりが襲われていたのも、セレネの居るバンブリア商会を始めとした商会への嫌がらせだったことが判明。けれど、イシケナルとセレネは和解していた。また、イシケナルの所領を他人の魔力で覆い尽くし、更にシンリ砦の兵士に被害の出た「超巨大トレント出現」すらムルキャンの仕業だったことで、イシケナルは激昂する。反省し、更にセレネの口車に乗せられたムルキャンは、番人として森に留まり、人への被害が出ない様に監視し、また護る役目を請け負うことになるのであった。



 文化体育発表会に先立ち、王城では「月見の宴」が開催される。セレネは継承者候補として正式にデウスエクス国王から発表される。窮屈な高位貴族の集まりに辟易し、会場を離れていたセレネ。するとその目の前に、異常な行動を取る青龍が現れる。ポリンドの魔力の化身である青龍の異変に、緊急事態を悟ったセレネは閃きにより不可能と思われていた青龍に乗る方法を編み出して、ポリンドの窮地に駆け付ける。襲われるポリンドを青龍の背に拾い上げる事によって救い出したセレネは、そのまま天空を駆けて王国の成り立ちへの思索を深めるのだった。



 学園ではようやく歴史学の課題の終着点が見え調査結果と仮説を織り交ぜた発表パネル『かぐや姫が愛を貫いたら人類存亡の危機を回避して王国を造っちゃいました!女神とよばれて溺愛されてます! ~帝と5人の貴公子の献身は少女を女神へと導く~』が完成する。


 そして文化体育発表会当日、歌劇は恙なく執り行われ、更に剣術・体術のトーナメントでは、セレネが出場した体術4年の部で優勝を飾る。発表会最後を飾る歌劇主演者達と、剣術・体術表彰式を称えるステージでは、歌劇主演者として壇上にいたユリアンが、寄せられる観客からの拍手喝采に興奮し、新たな獲物を狙って薄紫の魔力の帯を、何筋も作り出しながら観客に飛ばす。来賓や王国の要人が集まる場での魅了とはつまり、国家転覆や権力者の掌握と云った大それたことと取られ兼ねない一大事!ユリアンにはそこまでのつもりはなかったとしてもこれはまずい!危機感を覚えたセレネが、会場の人々の注意を引き、ユリアンの魔力の効果を相殺する妙案として思い付いたのは、緋色ネズミの力を借りた新たな演出だった。多少の失敗はあったものの、ポリンドの機転もあって文化体育発表会は大盛況のうちに終幕を迎えたのだった。

 学園からの帰路、見上げた夜空の月から宵の明星の様な一際明るい星が、空を流れて行くのを目撃する。ただの流れ星かと思いきや、それをハディスに伝えると、どうやらそれはかぐや姫の手をすり抜けて、月から零れ落ちる魔物「月の忌子(ムーンドロップ)」と呼ばれる危機だと説明されるのだった。


本編はこちら

https://ncode.syosetu.com/n0221hl/



【登場人物】


第三章の登場人物まとめです。



■セレネ・バンブリア(主人公)■

15歳(4年生)、桜色の髪、琥珀色の瞳、黙っていれば妖精の様な儚く可憐な乙女。王立貴族学園の生徒会長。「神器」の継承者候補。

前世の記憶があり、記憶と知識をもとにバンブリア商会発展を望む。魔力を纏って出来る事をイメージ&実践した結果、そこいらの騎士には劣らない体術を持つことになっている。



■ヘリオス・バンブリア(弟)■

14歳(3年生)、珊瑚色の髪、瑪瑙色の瞳。幼い頃はセレネと瓜二つだったが、成長期を迎えて可愛い系ではあるものの少年らしい容姿になっている。王立貴族学園生徒会の書記。

バンブリア商会が誇る技術担当。姉と共に行動することで鍛えられた魔力の制御は大したものだが、共にいるのが規格外の姉なので、それはあまり分かっていない。



■テラス・バンブリア(父)■

バンブリア男爵その人。代々続く竹細工の商いを家業としていたが、セレネが生まれ、その才能に気付くや、教育に力を入れ、順調に業績を伸ばして男爵位を得る。外回り&交渉担当。



■オウナ・バンブリア(母)■

赤みの強いマリーゴールド色の髪に紺のスーツを颯爽と着こなすキャリアウーマン。

バンブリア商会の商会長(経理、人事などデスク担当)。



■ハディス(ハディアベス・ミウシ・フージュ)■

20歳。赤髪、黒に近い深紅の瞳、垂れ目。肩までの髪。

王弟(3男)、自称護衛。騎士団総長。『火鼠の裘』の継承者で、膂力・攻撃力を司る紅色の魔力を持つ。



■オルフェンズ(暗殺者、吟遊詩人、護衛)■

肉体年齢ならハディスと同じくらい(20歳程度だが、昔から『蓬萊の玉の枝』の継承者は同じ容姿で伝えられている為、生きた長さは開国以来)。腰までの銀髪(奇麗なのでセレネに女装させられてしまうことも……)、アイスブルーの瞳。

セレネに出会うまでは、気に入った者の生命を奪うことで充足感、高揚感を得てきた困った男。『蓬萊の玉の枝』の継承者で、隠遁・隠密力を司る白銀色の魔力を持つ。



■ギリム・マイアロフ(神殿司)■

セレネの同級生。神殿では、魔力視と視力両方の確保のため片眼鏡(モノクル)スタイル。鬱金(うこん)色の瞳。前大神殿主の息子。王立貴族学園生徒会の会計。

魔力を操る力は群を抜いているが、彼自身に色を持った魔力は無い。



■イシケナル・ミーノマロ(公爵)■

特異な魔力「魅了」で人心掌握に優れ、若くして公爵位を継いでいる。20代半ば。

紫紺の髪に鮮やかな紫の瞳。魅了体質が強すぎるためあまり表に出ない。フージュ王国先代国王の姉を祖母に持つ。祖父は王立貴族学園長のクロノグラフ・ミーノマロ。『燕の子安貝』の継承者で、魅了を司る紫色の魔力を持つ。



■バネッタ・ニスィアン(伯爵令嬢)■

セレネの同級生。友人になれた!とセレネは信じている。教室で最高位の爵位を持つ。利用できるものは利用するが、認めないものには心を開かない。王立貴族学園生徒会の庶務。



■スバル・エクリプス(騎士爵)■

セレネの同級生で親友。一括りにした長い(はしばみ)色の髪。自身が剣を(ふる)って武功を立て、騎士爵を得ている。



■ユリアン・レパード(男爵令嬢)■

3年生。レパード男爵家18女。赤みがかった金髪のゆるふわウエーブで、大振りなリボンでハーフアップに髪をまとめている。薄紫の瞳に、眉と睫毛は髪とは違って生来の煉瓦色。魅了の魔力を持つが、王子曰く「微弱な魅了」であり、ドッジボール部員達にも効かなかった。男爵からの指示と、自らの成り上がり志望から、学園内の高位貴族や見目良い令息獲得を狙う。



■アポロニウス・エン・フージュ(王子)■

12歳(1年生)、金の組み紐を編み込んだ胸までの艶やかな黒髪。父は国王のデウスエクス・マキナ・フージュ。王立貴族学園生徒会の副会長。



■カインザ・ホーマーズ(騎士団団長令息)■

1年生。王子の学友兼護衛担当。ユリアンに次いでイシケナルの魅了に掛かった。現在は解けているが、ユリアンと、婚約者であるメリリアン・ジアルフィー子爵令嬢(飴色サラ艶ストレート髪)の間で「俺のモテ期キタ―――!」と浮かれていたが、1ケ月後の『文化体育発表会』までにケジメをつけるよう、王子から宿題を出されている。



■ロザリオン・レミングス(宰相令息)■

1年生。フージュ王国宰相の嫡男。王子の学友の一人。その他、公爵家令息も居る様だ。王立貴族学園生徒会の庶務。



■ムルキャン(前・大禰宜)■

グレーの髪のテラス程の年齢かと思われる男。自身は大した魔力は持たないが、ミワロマイレの有り余る魔力を利用、操作していた。自己顕示欲は高いが、中間管理職であり、鬱屈した感情が溜まっていた。



■ポセイリンド(ポセイリンド・ミユキ・フージュ)■

(もも)にまで届こうと云う、しっとりつややかな藍色の髪を無造作に下ろした、妖艶の表現がぴったりの美人。ハディスの兄。『龍の頸の珠』の継承者。

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