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猫の神様  作者: 雨世界
8/8

8 どこに行くの? そっちは危ないよ。

 二人のいる遊園地には観覧車があった。

 それも遠くからでもその姿を確認できるくらいに大きくて立派な観覧車だった。(その観覧車はもちろん、この遊園地の一番人気のアトラクションだった)

 観覧車に乗っている間、珍しく二人は無言のままだった。


 後日、林太郎はその言葉通りに三匹の子猫の絵を描いた。

 みかんの絵の描かれた段ボール箱の中にいる三匹の眠っている子猫の絵。

 その絵はとても素敵な絵だった。(少なくとも日和にはそう思えた)

 素朴で、素直で、優しい感じのする林太郎みたいな雰囲気を感じる絵だった。(その絵の題名は『まるとさんかくとしかく』という子猫たちの名前をそのまま題名にした名前だった)

 その絵を林太郎は日和に十四歳の誕生日の贈り物として、プレゼントしてくれた。

 日和はそんな大切な絵はもらえないと言ったのだけど、林太郎は日和にもらって欲しいと言って、日和にその絵を手渡した。

 その日以来、日和のこの世界で一番好きな絵は猫の神様からまるとさんかくとしかくに変わった。

 

「林太郎くんは、猫の神様って題名の由来、知ってる?」と日和は言った。

 縁側に座っていた林太郎は、三匹のとても可愛らしい(生意気そうな)子猫の兄弟の頭を撫でなら、「いや、知らない」と日和に言った。

「でも、あの絵は実際にあった風景を見て、描いた絵じゃなくて、猫が死んでしまってからおじいちゃんが生前の死ぬ直前の猫の姿を思い出して描いた絵なんだってことは知っている」

 と林太郎は言った。

「そうなんだ」と日和は言った。

 まるとさんかくとしかくという題名の絵を描いてから、なんだか林太郎が急に大人になってしまったような気が日和はしていた。

 なんとなくだけど、子供のままの自分をこの場所に置き去りにして、林太郎一人だけが先に大人になってしまったような気がしたのだ。

 そのことをお日様の照らす明るい光の中で、ひなたぼっこをして居る日和は少しだけ寂しく思った。

「どうかしたの? 日和」

 自分の顔をじっと見ている(猫みたいな)日和を見て林太郎は言った。

 そんな林太郎に日和は突然、自分の体と顔を林太郎に近づけて、人生で初めてのキスをした。


 どこに行くの? そっちは危ないよ。


 猫の神様 終わり

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