第二十八話
「被害は甚大。魔王城に入る、最低人数にも達していません。増援は、早くても夕方です」
「夕方まで待とう」
「その方が賢明だ。城の中もやはり強敵で?」
「一体だけだ。モラクス。牛の姿をした、悪魔だ。巨大で強い。攻撃の種類も豊富だ。全開はそいつのせいで、時間を食ってしまった」
「それは聞いています。そうしますと、上にどんどん行かせたほうがよろしいのですか?」
「いや、追いかけてくるかもしれない。そうなると、魔王と一緒に戦うことになる。だから、一匹に対し、あらゆる人数で戦わせて、モラクスを食い止める。そして魔王には、少数精鋭で倒すしかなくなる。大人数で、戦うのが一番いいのだがな」
太陽が山間に隠れ、月が昇ってきた。増援部隊が到着した。
「これ以上は無理だな」
「多すぎて、魔王城へ入れない。これぐらいでいい」
隊長は兵士達に指示を始めた。
「相手はモラクスだけだ。だが、強敵だ。オルスとテッド、ここに残れ」
他の部隊長は、みんな伝えに行った。残る二人。
「二人は、魔王優先だ」
「二人だけですか?」
「勇者と賢者もいる。この中で一番活躍できるだろう。この四人で戦ってもらう。もし、モラクスを倒したら、そちらに加勢するようにさせる。お前たちは、一番後ろにいろ」
「はい」
「今日で決着をつけるぞ」
プラッカー王国の兵士達が、一斉に入っていく。しばらく時が過ぎた後、オルス、テッド、勇者と賢者は、最後に入っていった。
天井には、魔法使いが放ったライオードが、天井の至るとことに付いている。
長くて広い廊下には、誰もいなかった。両脇には、幾つもの部屋があったが、魔物や味方の気配は全くない。
「駆けるぞ。時間が惜しい」
勇者を先頭に、廊下を駆けていく。
「どいて下さい!」
前から声が聞こえた。四人は右に避けた。衛生兵だった。すれ違う。そこには、右腕を潰された重装兵が、担架で運ばれていく。意識はなかった。
次々と運ばれて来る。腹が千切れた者。顔面を潰された者。前から、怒号、悲鳴の声が聞こえて来る。
「いいか、俺たちの為に戦っているのだ。絶対に忘れるな。俺たちは一刻も早く魔王を倒すのだ。仲間のために!」
大広間に入った。天井にはライオードが沢山、張り付いている。それに照らされて、四方の壁には、真っ赤に染まっている。オルスは立ち止まった。
恐怖に染まりながらも、各々の武器を構え、巨大な魔物に立ち向かっている。
一軒家よりも大きい体格。前に向く、牙のような鋭い二本の角。
「前後の攻撃はするな。足の攻撃で潰される! 隙を見つけろ。むやみに動くな」
隊長の指示が飛ぶ。
「弓兵、攻撃」
何十本もの矢が、牛に向かって飛んでいく。だが、かすり傷しか負えない。
牛の側面から、数人の兵士が斬りつけようとした。牛は素早く体を回転させ、兵士達を後ろ足で蹴り飛ばす。壁まで飛ばされた兵士は、そのまま倒れ、動かない。
「オルス、行くぞ!」
勇者が怒鳴った。隊長の後ろを通った。
「俺たちが何とか倒してみせる。魔王は頼んだ」
四人は二階に上がっていった。そこに魔王はいなかった。
さて、出てきました巨大な敵Part2。
この敵にはベースがあります。ギルガメシュ叙事詩。そこに登場する「グラカンナ」
なぜギルガメッシュ叙事詩かと言うと、「仲間と戦う物語」なんですね。
一度は敵として戦い、互いに認め合う。そして新たな敵が登場。今度は二人で戦う事に。
現代の物語でも通用しますよね。これ、紀元前に書かれたんです。すごいですよね。
あらすじだけでも、読んでください。三十台~四十台の人は必ず「あーっ!!」と思いますよ。
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