第二十六話
「すぐに知らせろ!」
テッドはマイクで仲間に知らせている。
「魔法部隊、すぐにゲンカークを!」
魔法部隊が、ガイコツ騎士たちの前に立ちふさがった。そして呪文を唱える。
「出でよ 兵士たち!」
地面からすっと現れたのが、透明な姿をした、兵士達だった。左手にある盾を前に出し、防御態勢を敷く。
「走れ! 数名はここに残るんだ」
オルスは再び駆け出した。他の仲間達も、追従する。狭い螺旋階段を、何度もこけそうになりながらも、一気に下に降りていく。
城下街に出ると、その場に置かれているグラブと盾があった。それを拾う。辺りを見回すと、魔物の姿はほとんど見られなかった。だが、倒れている味方の数も多かった。体のどこかに、矢が刺さっている。斬り倒され、その場に呻いている者もいる。衛生兵が負傷した兵を担ぎ、城下街から出て行く。それを何度も繰り返していた。
前線に向かって走る。対面から、魔法部隊が、退いていく。
「間に合ったか?」
「もうすぐで、ゲンカークの兵士達がやられる」
「用意!」
オルスの後ろから、隊長の号令。みな、すぐに攻撃態勢を整えた。一番前には、オルス達の軽装兵。その後ろには、重装兵が、体制を整えた。
ゲンカークの最後の一人が、白い霧を残して消えた。馬に乗ったガイコツ騎士、およそ五〇体が列を整え、こちらに向いた。馬が嘶き駆けてくる。だが、プラッカー王国の兵士達は、まだ動かない。
「ウォーターフォール!」
魔法使い達が一斉に唱えた。ガイコツ騎士の真上から、大量の水が落ちてくる。馬たちはバランスを崩す。乗っていたガイコツ騎士は落馬。すぐに立ち上がろうとした。
そこへ、オルス達は棍棒で、頭部めがけて振り下ろす。骨が砕け散る。やわらかい地面の感触が、棍棒から手に伝わってきた。
視界の隅から、ランスの先が見えた。寸前で避ける。もう一度、オルスに向かって、ランスを突き刺してきた。ガイコツ騎士の頭部が砕け散る。仲間が倒してくれた。
「ここからは、ゴリ押しだ!」
オルスも他の兵士たちも、冷静に相手の出方を見極める事ができた。ガイコツ騎士は、次々と頭を砕かれていく。
周りに味方の兵士しかいなくなった時、遠くから勝ち鬨が聞こえた。その瞬間、オルスは深いため息をついた。
「これから、太陽が真上にくるまで、休憩だ。この後、魔王城に攻め入る!」
各部隊は、何もない民家や教会、集会場で体を休めた。補給部隊が、新品の武具と食料を届けに来た。少量の食べ物を口にしたオルスは、集会場の隅で、休憩をとった。
「この前の仇は、とれたみたいだな」
横に座ったのが、テッドだった。
「最初に倒した時は、緊張したよ。後は、冷静でいられたけど。お前、ここにいていいのか? 魔法部隊も、なにか作戦をしているんだろ?」
「すでにやっているよ。でも、厄介なことになっている。魔王城に入る門は、一つしかない。その門は木製でできているんだが、壊せない」
「さっき開いたんだけど、すぐに閉じた。中は全然見えなかったよ」
二人は、民家から出ると、魔王城を眺めた。
斥候部隊が、中の様子を探ろうとしている。その時、魔王城の扉の向こう側から、大きな音がした。扉が震えている。
「オルス、武器を」
魔王城に関して、「中世ヨーロッパの城塞」を参考にさせてもらいました。
中世の城攻めって、なかなか面白いですね。穴を掘ったり、上から石を落としたり。
RPGの城って、いつでも門が開いていますよね。
子供の頃、「それだけ、余裕があるのだろう」と、勝手に解釈をしていました。
ただ、一体の魔王だけは、とても悲しい気持ちにされました。
それは……次回に書きましょう。
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