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 異世界転生ものは大体が貴族制の世界を採用している。国民は階級分けがされ、上の者はより上に、下のモノはより下へと隔絶されていく超階級社会である。

 そしてこの世界におけるいくつかの共通点が存在する。

 それは『女性蔑視』と『奴隷制度』だ。

 読者も大体の異世界ネット小説、並びにラノベを読めばあると思うが、こういう貴族社会における女性の地位は圧倒的なまでに低い事が多い。

 女性は大体結婚で親族同士の友好関係を深める為の起点に使われるし、だからと言って嫁いだ先でもいい身分かと言われるとそうでもない。大体のラノベではそれを痛快に攻略していく所が違う訳だが……まぁ現に日本も百年前までは結婚は政略結婚が普通だったから珍しい話ではないし、明治か昭和だったか?あたりは選挙権が無かったっていうからそういった視点は長い目で見れば割と普通の事だ。

 そして、この女性蔑視というのはラノベづくりにおいて非常にやりやすい。


 何故なら彼女たちは常日頃からひどい仕打ちを受け、心の奥底で常に助けを求めていたのだから……そこへ現れる謎の男!!彼は周りの男性とは異なり自身を優しく受け止めてくれた……そこへ抱く情愛の念……しかしそれを遮るは政略結婚による家の圧力と貴族社会の闇……彼に諦めてもらう為にもあえて冷たく突き放すがそれでも彼は決してワタシを捨てなかった……どんどんと大きくなっていくこの気持ち……駄目だと分かっていても抑えられない衝動に、ついにワタシは彼と共に生きていく事を誓い家との絶縁を決意する。未練がましく詰め寄る元・夫をその彼は一蹴しワタシの真の人生は始まったのです……的な展開はベタだが王道だ。

 描写を変えればこんな感じの展開は探せば結構あると思う。そういう風に悟らせないのも著者の実力の内だ。


 閑話休題


 そして奴隷制度。

 これもよくある事だ。

 特に異世界ラノベだと亜人種が奴隷制の被害に遭う事が多い。

 具体例を挙げるとすると、エルフや獣人族とかがいい例だ。エロモノだとエルフとかえげつないし。大体〇楽堕ちとか〇畜堕ちに落ち着くし、序盤は必ずと言っていい程オーガやゴブリンとかに里を滅ぼされてる。んで飽きられたら回しに回され人間相手に奴隷落ち。黄金パターンですね兄貴。

 なんでドワーフとかは奴隷にならないんだろうか?不思議だ。

 やっぱり顔か?奴隷に堕ちてもなお顔が必要なのか!?

 話を戻そう……まずこの奴隷制度とはこの貴族社会とセットと考えてもいい。なぜなら貴族共は働かないから。その時点で働く人間は相対的に減って働く者たちの負担はその分重くなっていく。当然人間的扱いしていればその負担はカバーしきれないので、最終的には酷使に次ぐ酷使で奴隷が生まれるのだ。奴隷に堕ちたものは貴族の圧倒的権力の前に成す術もなく蹂躙されてすべてを奪われれて死んでいくのが常となる。

 そこへ颯爽と現れるサバサバの黒髪を靡かせ甘い黄金フェイスで女性の奴隷を魅了する謎の男(本日登場二回目)!!かつて絶対的権力と恐怖だった貴族たちをその圧倒的チートにより見るも無残な煤の姿に変え、その|勇姿《オレなんかやっちゃいました?》に奴隷たちは心酔するほかなかった!ここからかつて貴族たちに虐げられ、屈辱の限りを尽くされた奴隷たちと、その奴隷たちが崇める神(謎の男(主人公))の快進撃が今始まる!!みたいな、話を作りやすいという点、ヒロインと主人公が遭遇しやすい点、ヒロインが主人公に惚れる理由を作れる点、主人公が合法的に暴力(チート)を振るう事が出来る点、ヒロインのピンチを演出しやすい点等などから奴隷制は非常に(作者にとって)都合がいいのである。なので奴隷制は無くならないし、残り続ける訳だ。どの異世界でも。


「奴隷に対する熱が凄まじかったね。後一応言っとくけど、貴族の夫人略奪はオススメしないよ。ああいうのは歌劇で十分だ。現実だと頭痛の種にしかならない」

「それって実体験かアルファ?」

「……ノーコメントで通すよミジェロ君」

「ひゅー!ひゅー!さすがは女性キラー!!KILLゾーン広めだねぇ!」

「王子は茶化してないでさっさとその問題解いてください……約束通り暇つぶしには付き合ってあげたんですから」


 ちぇー、なんだよみんなノリ悪りーな。ん?てかもうそんな時間たってんの!!?はっや!く、せっかく勝ち取った休憩時間がこんな下らねー事で!やるなアルファ!


「俺に話の主導権を譲る事で自分は一切話すことなく最小限の労力で俺の休憩時間を奪うとは……さすがアルファ君だ!今回はしてやられたぜ!!」

「そんな真面目な顔できるんなら真面目に解きな。ほら、あと少しだよ」

「にしたってよー、しんどいぜこれ」

「王子は一度理解したら早いから絶対解けるよ」

「そうですよ王子。わざわざ時間割いてくれてんですからそれくらいできる様になって下さいよ、それに……」

「それに?」


 なんだよミケ君?もったいぶらずに言えよ?


「かの魔法陣学の天才が指導して基本問題すら解けなかったなんて事実が発覚すればさすがにロザリエ様も見限ると思いますよ?」


 なんだ……と……?!そ、それはいかん!アルファ君!悪いがもっかい教えてくれ!!


「お、やる気になってくれた?それじゃどの辺まで理解できてる?」


 とりあえずシーザー式を用いた陣成くらいかな?ただ使う文字に関してはてんで分からん。


「まぁ、日常的に使う言語にプラスで魔導文字と古代呪語に神字だからね。覚える字だけでも100字くらいはあるし、初心者からしてみれば当然と言えば当然かな」

「そーなんだよ、覚えの部分が多すぎんだろ!そりゃこれまで発展してこなかった訳だよ!だって最初の段階でうっとおし過ぎるもん!!絶対に発展させる気ねーよ!」


 最初にやる事になったのが文字の暗記とかふざけ倒してるだろ。この年になって文字の読み書きに意識割くとか……ペン字の資格取ろうとしてんじゃねーんだぞ!ABCの書き写しとか昨今小学生でもやるか怪しいぞ!時代はオンラインなんだよ!!


「……王子、一つ教えておくと、実はこの4つって共通点あるって知ってた?」

「ん?共通点?」


 なんだよアルファ君?共通?文字である事とか、筆記体って意味?


「そうじゃない。この4つって元々原点はおんなじなんだよ」

「……ほう?」


 面白い事話してくれそうじゃないのアルファ君?続けたまえ。

 

「語源としてはこの4つ……正確に言えば古代呪語と僕達が使ってる言語は元々は神字が由来なんだよ。そして魔導文字は古代呪語からインスピレーションを得て作られた、言葉としては最近のまだ1000年も経ってない言語なんだ」

「へー、そりゃなんだ」

「自分も初めて聞きますね」


 お、ミケ君も食い付いて来たな?こういう自分の知らない領域の話は驚きがあって面白いからな―。


「それでなんだけど、原点が同じ、あるいは派生元が同じと考えれば自ずと似通った点は出てくるものなんだ。例えば……これ」

「ん?」


 そこにはいくつかの似た字体の記号があった。似ていて非常に分かりずらい。


「これが何だってんだよ?」

「まぁ最後まで聞いてってば。この僕たちの言語の元となる神字は字体だけじゃなくて意味も一緒なんだ。この神字は本来の意味として『始まり・創造・原点』という意味を持ってる。そしてその意味は現代でも通じるんだ……つまり」

「俺らの使ってる言語のこの文字に込められた意味も一緒って事か?」


 俺の回答にアルファ君は満足げにほほ笑む。かー、笑いも様になんな。


「そういう事♪ だから陣を作る際には構成文字にこの字を当てる場合が多いんだ。実体魔法の場合はこれ始まると考えていい。それじゃあ逆に消却魔法の場合は何から始まると思う?」

「んー……ベターにこれからか?」


 そう言って俺は4種類の字体を書き写す。それはすべて覚える際に最後に来る文字だった。なんか前まで苦手意識あったことが急に簡単に思えてきたなー?前世でも英語の受動態とか過去完了形とか中学時代チンプンカンプンだったのに高校受験で勉強し直したら急に簡単に分かるようになった感覚に近い。そういう経験ない?


「正解。この言葉の意味は察しがついてると思うけど『終わり・破壊・終点』の意味がある。つまり魔法陣の文字は全てこういった文字に込められた意味を読み解いていくと自ずと分かってくるのさ。それが分かれば」


 アルファ君は即座に魔法陣を構築する。すると色とりどりの光と共に水やら炎やらなんやらが飛び出して最後には煙のように消えていった。


「こんなことも可能さ。基礎だけでね」

「お見事」


 見せ方上手いなー。良い生徒が居ればアルファ君も今頃大出世だったろうに、こんな貴族の交流の場に放り込まれちゃってまー。大変だねー。


「あはは、いい生徒ならもう十分足りてるから。それじゃあ、早速問題解いていこうか?」


 あら、嬉しい事言ってくれるじゃない?やる気出てきた。

 よーし、さっきよりかは分かる気がしてきたぜ!どんな問題だろうとどんと来いや!


「そういうシンプルな性格、時々羨ましいです。呆れることの方が圧倒的に多いですけど」


 うっせーぞミケ君!今ちょっといいとこなんだからよ!!






 結局解くのにはアルファ君のサポートなしでは解けずじまいだった。陣成文法クッソむずいんだけど!!

REIJOU

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