作戦
「それで、結局その方とはその後どうなったので?」
「聞いてくれるかモーリーさん?何でもエミリー君の家働き手が自分1人しかいない上に子沢山の生まれで養っていくためにも居なくなるわけにはいかないってぬかすんだぜ?かー!ミケ君のステップアップの為にスカウトしたかったんだけどなー!」
「孤児院は?」
「当然オススメした。けど、なんか結構複雑そうだったから深くは聞いてねー」
「おやおや、そうすれば問題解決に貢献しスカウトしやすかったでしょうに」
モーリーさんオレのことなんだと思ってんの?
「んな事できるかよ!オレは『貴族』になりたくねーの!身分上はそうかもしんねーけど、だからといって言動まで合わせてどうするよ!そんな弱みに漬け込んでこっちに来させるんじゃ他の連中と変わんねーじゃん」
「仰る通りで」
「と言うかミケ君どうしたのよ?アイツここ最近見ないんだけど?」
「さて、行方は私も存じ上げては」
「ふーん……」
モーリーさんも知らないとなると俺が知った事じゃないな。しばらく待って帰ってこなかったら知ーらね。
「心配ではございませんので?」
「帰ってこなかったらその程度の人間だったって事だろ」
「ミジェロ殿がですか?」
「いや、おれが」
ミケ君は俺なんかよりもよく出来た人間だ。主人を変えたって事はそういう事だろ。そう思って窓を見ると……あれ?
「んお?あれミケ君じゃね?」
「おや?どうやら帰ってきましたね。しかもお連れの方も連れて。なにやら赤く染まっていますが」
「風呂焚いとけ。後で色々聞きたい事できた」
「畏まりました」
ったく、ミケなんて猫みたいな名前だからって言動も猫に寄せる必要ねぇってのに。というか大体こういうシーンって雨降るか最低でも曇り空の筈だろうが!なんでこんなうざい位に太陽さんさんなんだよ!空気読めや天気!
「んで、結果エミリー君も連れてきたと」
「……申し訳ありません」
なんだいなんだい?ミケ君にしちゃ切れ味が無いな?いつものスタンスで来いよ。
「なーに謝ってんの?」
「いえ、その……」
「おいおいおいおい!勝手に自己嫌悪すんなよ!面の皮分厚くいこうぜ!お前がそのテンションだとこっちがスベってる感じになるだろ!ミケ君のツッコミがあってようやく俺の世界観は構成されるんだ!!しっかりしてくれよ!!」
「で、ですけど……」
なんだと!伝家の宝刀『ミジェロです』が出ない!?……これは深刻だな。
「なんか問題でも起きたか?エミリー君連れて来て?」
「…………」
「……ホントらしくねーな?キャラ壊れるのには早いぜ?まだこの作品ファンいねーんだからお前のキャラ崩壊に付いて行けるヤツこれ書いてる暇人しかいねーんだからよ。さっさと本題はいれよ」
「ボスたちが来るんだよ」
「んあ?」
おや、エミリー君。随分と早い風呂上がりだな?うーむ、それでもどっちか分からない。中性型って此処まで分かんないもんだっけ?よく可愛ければなんでもオッケーっていうパターンあるけどあれって嘘だよね。だって男だとしたらうすら寒いもん。やっぱ男の娘のノリは二次元だからこそだな、うん。
「ボスたちって何か?裏組織的なあれですか?」
「そ、元々あの辺ってボスたちが仕切ってた町なんだけど、あんたがここに来るようになってから活動しずらくなってきてたんだよね。それで今までやってた闇商売とかがやりづらくなって、孤児院で細々と人身売買やってたんだけど……」
「孤児院……あ」
なるほど、それであそこ勧めた時渋い顔してたって訳か。
ん?でもおかしくね?
「じゃあなんでガキどもは孤児院に通ってんだ?そんな噂あんならもっと話は広がってる筈だろ?寧ろ親の方が……ってそうか、孤児院に送り付けるくらいだから訳アリが多いわな」
「そうだよ。それにあそこって孤児院を中心に町が回ってるんだ。アンタも気付かなかったかい?あそこ、子供がやけに多いんだよ?」
「まじで?気付かんかった」
俺あそこでしか勉強会しないからなー。他の町での差とか分かんねーし。そりゃ噂が広まんねーわけだよ。親全員が毒親ではないだろうが、無知で送った親は浮かばれねーな。気付いたとしても口封じにオハナシされるのがオチか。
「武力イズ権力……偉い人が言った言葉は正しいねぇ」
まさかこんな風に帰って来るとは。口は禍の元だな。
「ししょーは助けてくれたんだ!子供たちが孤児院に無理矢理連れていかれるのを止めてくれて!!」
「ふーん……やるねぇミケ君?さすが英雄って所だな?」
「まじめに聞いて下さい」
「はいはい。それで?」
さすがにこの場でのおふざけはちょっとキツイか……俺こういう空気苦手だから早く終わらせたいんだけど。
「あいつらをずっと探してたんだ。孤児院から逃げ出した子供たちを取り返すのに必死だったし……それで昨日一緒に逃げた子供たちを助けようと師匠が……」
「はー!やっぱツンデレだなーミケ君?お前完全にベジー●枠に入り込んだぜ?ネット上ではおもちゃだなやったぜ!」
「ふざけんなよお前!!!!!!」
やっばさすがにキレた。
「師匠は必死の覚悟でみんなを救ってくれたんだ!今後あいつらに目を付けられる危険も覚悟で救ってくれたんだ!それをお前が穢すな!お前が師匠の上司だろうと知るか!!これ以上師匠を侮辱するな!!」
わーお、ゾッコンだな。しかし、俺が想定してる以上に深刻っぽいな……よし、たかるか。
「悪かったって、その侘びと言っちゃなんだが、協力するよ」
「え?」
「王子?」
その言動に二人が唖然とする。おいおい、協力するって言ってんのにその反応はひどくね?
「その問題の解決は俺の出来る範囲で協力する。それでいいか?」
「お、お前なんかに何が出来んだよ!貴族の一員らしいけど、そんなもんであいつらが怯むかよ!」
「バーカ言ってんな。俺が出来る範囲でだ。無謀な事なんかするかよ。モーリーさん馬車用意して」
「畏まりました」
そう言いつつ俺はモーリーさんに馬車を用意させる。目的地はただ一つ。
「王子、まさかとは思いますけど……」
お、ミケ君は察しがついてるらしいね?さすがは俺の従者だ。
「ふふふ!そうだよミケ君!これよりエミリー君とその子供たちの救出作戦および、辺境の街アーヤムンの裏組織撲滅作戦を決行する!その第一段階として……まずはロザリエさんのところに行きます!そして援助を貰う為に媚びへつらいに行ってきます!」
「…………やっぱり」
フハハハハハ!こういう時こそ自分の身分を有効活用しないとなぁ?俺が出来る事なんざ王権振りかざしてアンチを闊歩する位しか出来ねぇんだよ!だったらその道のスペシャリストに話を聞きに行こうじゃあないか!ゆくぞミケ君!目的はロザリエ邸にありだ!!!
「あ、圧倒的にダサい……」
「おい、自称俺の弟子。もしも俺に付いてきたいならあのバカの言動に慣れなきゃ付いて行けねぇぞ。頑張れよ」
「え?!ひょっとして認めてくれるの!?」
「ついてこれたらな。早く来い」
おいおい早速コンビ感抜群だな?お前らいいコンビだよ。
なんかシリアスっぽいけど話全然進んでない