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奥義

この作者一体何がしたいんだろう

「こうであってる?」

「正解。やっと身に付いて来たね」

「まぁなー!どんなもんよ!これでようやく俺の最終奥義『パイロ・トリニティ・アブソリューション』も新たな領域へ――」

「ああ、その夢まだ諦めてなかったんだ……」

「あたぼうよ!!」


 全くアルファ君は何を当たり前のことを。超火力砲台は男のロマンだと言っただろ?それを機械じゃなく人間が撃てるんだ。試したいと思うだろ?


「今んところ改良案としては鳥の数増やすか鳥を竜に変更するかの二択なんだが、専門家としてどうよ?やっぱ鳥の数増やすのって限界ある?」

「……聞きたいんだけどさ、王子」

「んだよ?」


 急にシリアス顔になりやがって。ここの作者シリアス苦手なんだからどうせ長続きしないぞ?


「王子はどうしてこの魔法を完成させたいんだい?」

「どうして?」

「そう、この魔法は言ってしまえば兵器だ。一度使えばそれだけで戦況は簡単にひっくり返るほどのね」

「あれそうなの?確か第三級魔法だったとか……」

「確かにその元は第三級魔法だけど、威力だけ見ればあれはそうだね……結構大雑把な換算だけど、第八級魔法くらいには匹敵するかな?」

「第八……それって結構凄い事?」


 まさかの新しい魔法を作っちまうとは……かー!これだから主人公って辛いわー!意図せずして偉業を成しえてしまうからそのすごさが伝わらねーなんてそんな役職だよ主人公は!かー!これで俺も晴れて『|O・N・Y・M《オレなんかやっちゃいました?》』が出来る訳だ!やったね!


「結構では無いけど、そこそこすごい事かな。それこそ第八級や最上位である第十級の魔法を構築出来たら話は別だけど、王子の魔法は第八級の威力に到達するまでは時間が掛かり過ぎるからそうだねー……階級定義から逆算すると、第一級魔法ぐらいが妥当かな?」

「おいおいランク下がってんじゃねーか。『パイロトリニティアブソリューション』は元々第三級魔法だぞ?何でランクダウンしてんの」

「其処じゃなくて、バフの方だよ。火力上げる為に構築した魔法あるでしょ?あれ」

「ああ、なんか打ち出す時に出てくる良く分かんない魔法陣の事か」


 あれ|パイロトリニティアブソリューション《あの奥義》の固定エフェクトかなんかかと思ってた。


「あれ一応意味あるんだよ?」

「まじで?」


 そうだったんだ。なんか撃つ時カッコイイくらいにしか思ってなかったからな。


「まず3つの魔法陣があっただろう?あれはそれぞれ重要な意味があるんだよ」

「ほうほう」


 読者が飽きそうな説明回になりそうだなこりゃ。


「まず一つ目の魔法陣は使用者自身の魔力の蓄積」

「蓄積?」


 そんなモバイルバッテリーみたいな事できんの?


「王子の魔力の総量は言ってしまえば平凡。何だったら君の親族の中では最低レベルと言っていい」

「そりゃそうだな。幼いころすんげー親族に嫌味言われてた記憶あるわ」

「だけど、だからと言って上級魔法が撃てない訳じゃない。それを解決するために作ったのが、この魔法だ」

「魔法撃つために魔法創るってコスパ悪くね?」

「効率ガン無視の君が言う?」

「俺は刹那を生きてんだよ。過去は振り返らねぇ主義だ」

「記憶も刹那じゃ世話ないよ。ま、とにかく、この魔力の蓄積が出来た事で時間は掛かっても本来できない魔法が出来る様になる筈なんだよ」


 なるほどなー、分からんけど分かったぞ。

 要はちょっとずつ魔力を別の容器に移し替えてるって感じか?買い物してお釣り出てきたら端数は貯金に回す的な?


「二つ目はその溜め込んだ魔力を用いたバフ魔法の錬成式。これが一番面倒臭かったかな?」

「ただのバフ魔法と何が違うんですかい?」

「これはバフ魔法じゃなくてバフ魔法を作る為の魔法だよ」

「?????」


 バフ魔法を作る為の魔法?んじゃそりゃ。要するにあれか?この変態一文字を書くために鉛筆作る工場作ったとかそういうオチ?なんかコスパいいんだか悪いんだか分かんないんだけど?


「まぁ作るのには苦労したけど、今後の事を考えるとかなりコスパはいいよ。これで今までの苦労は報われたからね」

「ほーん?そのレベル?」

「一応クライアント君なんだけどな」

「クライアントってあれガキの頃の約束みたいなもんだろうが?正直言うとオレ最初にあれ作ってきた時ちょっと引いたからな?」

「君ってホントクズだよね」


 いまさら何を。


「んで?結局これが俺の奥義の火力上昇に役立ってると」

「そ、この魔法陣にはいくつかのバフ魔法を記憶させてあるんだけど、それを順番通りにループさせて魔法陣を構築させているんだよ。今も君の魔力を使って魔法陣を組み込んでいる最中の筈だ」

「まじで?オート機能搭載とはやるな」


 結構凄い事やってんだなコイツ?そりゃガキの頃の約束から何年も経過して忘れた頃に持ってくるわけだ。幼馴染ヒロインもびっくりの約束の持ってき方だよ。


「まさか最初これを作る時にはここまで面倒な事になるとは思わなかったよ。おかげで僕は年不相応の知識が身に着いたけど」

「そりゃよかったな。俺は年相応の夢を数年越しに叶えることが出来たわけだ」


 俺は耳を穿りながら話半分にアルファ君の話を聞く。


「アハハハ……変わんないねホント、それで最後は核となる魔法自体に込める魔力を流し込むためのサブタンクみたいな感じだよ」

「ん?最初となんか違いがあんのかよ?」

「最後のストッパーみたいなものかな」

「ストッパー?」


 訳が分からん。サブタンクでストッパー?戦略シミュレーションゲームかなんか?


「第一の魔法陣で核の魔法の威力の底上げを行い、そして第二の魔法陣で底上げされた核に磨きをかける。だけど、それも許容限界はある。溜め込み続けた魔法はやがて魔法陣の中では抑えきれずに暴発する可能性があるからそれを防ぐために、この第三魔法陣で定期的に魔法のエネルギーを外部に流すんだ」

「ふーん……やっぱそう都合よく無限に火力上昇は出来ないもんか」

「出来たら苦労しないよ」


 よく異世界ラノベだとそういう問題は起きずにステータス上がりっぱなしで数の暴力により敵を殲滅するんだがな?ま、そういうのはRPG風異世界限定か。ここは『ステータス』なんて存在しないし、『スキル』なんて概念なんて以ての外なノベルゲー風異世界な訳だし……いや、だからこそ、その辺ガバくてよくね?

 

「んで、その魔方陣で核の魔法を射出すると?」

「そういう事。かみ砕くと第一魔法陣が『火薬』第二魔法陣が『銃口』第三魔法陣が『引き金』もしくは『撃鉄』みたいなものだと考えればいいよ」

「ほうほう、拳銃にしちゃ随分高火力だな」

「高火力で済めばマシさ……さて、これで君の奥義の仕組みは分かったかな?」

「おう分かった分かった。んで、なんでこんな話してたんだっけ?」

「僕がなんで王子はこの魔法をさらに向上させたいのかを聞いてたら王子が話を逸らしたんだよ」


 あー、そういえばそんな話だったな。


「なんで向上させてるか……ねー…………別段特に理由はねぇぞ?」

「え?」

「だって、元は出来るとも思ってなかったからなこの魔法。それが今じゃお前のお陰で再現出来つつあるんだ。夢が広がるだろ」

「夢……」

「おうよ……どうせあと数年したら自分の思うようには動けなくなるんだし、だったら今のうちに好きに動こうぜ」


 今の時代には、立場には不適切な言葉だ。国の顔が取れる行動なんて高が知れてるし、そこに自由意志が介入出来るのは極わずかだ。親父を見ればそれは良く分かる。上級階級とかが染みついてるこの時代にそんな事を言ってしまえば俺は終わるが、所詮俺は根っからの平民。王族なんぞは似合ってない。


「よくおくびもなくそんな事が言えるね」

「俺の性格的に王族は合ってねぇ。このままいけばどうせ俺の失墜を願ってる派閥みてーなのが出てくんだろ」

「じゃあどうして、王子は今の立場を捨てないんだい?その方が楽だろうに」

「お前バカか?んな事で切る訳ねーじゃん?」

「え?」


 俺の返しにアルファ君は驚いた表情を見せる。なーに驚いてんだか。


「オレが居なくなったらミケ君居場所無くなるだろ。それにモーリーさん達も一応一族で雇ってる立場だから早々に雲隠れできねーし何より…………ロザリエさんに会えなくなる」


 そう、我が愛しのロザリエさんに会えない。これが俺を貴族にしがみつく唯一にして絶対的に重要な要項だ。ぶっちゃけロザリエさんと縁切られたらもうすぐに貴族辞めるし。


「……………………そうだったね。君はそういう人だ」

「何しんみりしてんだよ」

「なんでも。それじゃあせめて授業中はちゃんと内容を聞いてほしいかな」

「うぐ…………あれは解くのに必死だったんだよ。なんか出来そうでさ!」

「そういう反応は教える側としては嬉しいね」

「解く側としちゃメンドクサイことこの上ねーよ」

「だったら少しでも知識を付けな」


 んにゃろう上手く言い返したつもりか?大して上手くねーよ馬鹿が。


「んじゃ俺よりもある知識でこの奥義の改良案を考えろ」

「そうだねー、僕としては魔法の火力を底上げする方向よりも過剰な魔力を上手く使う方向での改良が望ましいと思うんだけど…………」


 あ、教師から友人に変わりやがったコイツ。しかし言ってる内容はこっちのモードの方が分かりづらいんだよな。






「で、その構築字を一時的に変換する為に新たに第10層の陣を作って……」



   「そこから火力を効率よく上げるには古代呪語よりも神字の方がいいけどそうなると古代呪語の方が初期の火力では優勢なんだよなー」



            「やっぱり外に排出する魔力を何とか出来れば効率よくなりそうなんだけどなー、そのためには魔法陣の許容字数を向上させないといけないからまずはその問題を解決すべきかなー?」「まてよ?ここでこの陣をこっちの陣と入れ替えると……魔力変換量3倍!これは大きな発見だ!記録しておかないと……だけど、一種類の魔力しか変換できないのはネックだな。複数種類出来れば実用的なんだけど」


                      「王子!もう一回試してみていいかな!?今度は火属性から水属性への大幅な変更なんだけど、これなら水そのものの性質を利用した運用方法も可能になるかも……」






「そりゃこの世界観に女は付いて行けんわ」

「王子ー?何してるのー?早くしてくれよ」

「あいよー……ったく、あのハツラツ顔を魔法関連抜きで見せりゃイチコロだろうに、難儀な奴」


 そう言いつつ俺はアルファ君の世界に入り込む準備を進める。こいつ相手に企画書出したんだからこれ位は付き合わねーとな。

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