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異装少女と終末セカイ紀行  作者: ひなとはな
不変魔王
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そうして、不変の魔王は目を覚ます。



「おおー!!そーかんですなぁ!!」


 そう言ってその、空の様に澄んだ、海の様に深い碧眼を輝かせるユキは、調理と言う名の何か別な超技術で巧みに食材を、冗談抜きに匂いだけでご飯三杯いけるような、見た目も、香りも抜群に良い品々を作り上げた。


 作った本人も食欲をそそられるようで、隣でくぅーっと可愛い腹の虫を鳴らしている。いや、かわいいかよっ!アイドルでもそんな可愛い音でないって!!


 いや、アイドルなんて会った事ないから知らんけどさ。


 因みに、今目の前に広がってる料理の連峰は三分の一が私の作ったものだ。この世界の食材に戸惑ったり、見慣れない調味料に悪戦苦闘したりしたが、かなり上出来なのではないかと思う。まあ、九割がデザートなんだけどね。だって、私にはユキのような魔法も、調理技術もないし……。比較的扱いやすかったのがデザート向きのモノばっかりだったんだもの!フルーツとか……ね?


 なんでここで魔法が出てくるのかというと、単純明快。料理に魔法を使ってたから。硬くて切れないから魔法で切る、繊維邪魔だから繊維だけ魔法を溶かす、超高温で焼きたいから魔法で焼く、エトセトラ、エトセトラ……。ワタシ、マホウ、ツカエン。てかさ、そんな下拵えが必要な食材って絶対食用じゃないでしょ!!




「ねねっ!あの黄色いプルプルしたの何?」


 そんなことを考えてると、ユキが私の袖を引き、プリンを指差して聞いてくる。この世界にはないのかな?


「あれはね、プリンって言うんだ。その上にかかってるのがカラメルソース。濃厚な甘さと、ほろ苦いソースの相性が抜群!是非食べてみてね」


「なんと……!あれは甘味なのか!通りで甘い良い匂いがすると思った!ユキあんな料理初めて見たよ!」


 なんてプリンをみて大はしゃぎするユキ。因みにこれは、料理中に聞いた話だが、この世界にはデザートという概念が無いらしい。なんでも食事は味わうものではなく、効率的に栄養を摂る手段だとか。


 つまりこの世界は地球に比べて圧倒的に進んだ文明を持っている。なのに……いや、だからこそ、明日をよりよくする為以外のことに興味が無いのではないか?だとすればユキの服がシンプルなのも納得できる。


 ビックシルエットの若草色が綺麗なパーカー型ワンピース、似合っていないわけではない。寧ろとてもよく似合っている。ユキの白い肌と白い髪が良く映え、ビックシルエットが可愛らしさを演出している。裾から見えるスラッと伸びた美しい肢体は最早芸術だ。が、それ以外の装飾は一切なし。機能性重視と言うか、効率廚と言うか。


 では何故ユキは料理などという一手間を知っていたのか。それはユキの昔の友人に「折角生き物の命を頂いてるんだ。美味しく食べるってのがせめてもの礼儀だろ?」と言われ、料理を学んだからだそう。となると、その友人はこの世界ではかなりの異端だったろうな。


「それにしてもシグレの世界ではあんな大きな甘味を食べていたの?糖分の過剰摂取じゃない?」


 そういってユキは私が作ったデザートたちを指差していく。


 大きな甘味。ふむふむ、それもそうだろう。何といっても全てが特大サイズだからね!プリンを知ってるヒトが見ても同じような反応をするだろう。だってさ、この世界には魔法があるんだよ?重力を操ったり、温度を急激に上げたり下げたりできる。なればこそ!!バケツプリンなんて比にならない、巨大プリンを創るのがプリン愛好家としての責務でしょう!!


 地球には存在しなかった超技術を駆使すれば、後は何度も試行してきた私の脳内シミュレーション通りに事を運ぶだけ。さすればオペレーション名「巨大プリンの世界侵略」が完遂できるって訳さ!!自重に耐えうる土台作りも、均等に撹拌させることも、熱を全体に通すことも、魔法があれば訳ないね!!


「大丈夫、普段はあんなに食べないよ。流石にあれを食べ続けたら糖尿病待ったなしだし……。まあ、ご馳走としては良いでしょ?」


 そう言うとユキは瞳をキラキラ、腕をぶんぶんしながら


「ご馳走なら最高ッ!!シグレ!早く食べよ!!」


 と急かされる。なので私はユキが座った椅子の反対側に腰を下ろす。


「それでは皆さん、手を合わせて下さいッ!」


 私が椅子に座ったのを確認して、ユキが声を上げる。私は言われるがまま、ユキに倣って手を合わせる。


「?」


「いただきます!」


「!!うん、いただきます」


 私はユキの掛け声に合わせて食事の合図をする。人と食べるご飯は美味しいなぁ。






 二人だけのいただきます。その日、最古の魔王の城に、何千年ぶりの明かりが灯った。


 ――長らく活動を確認されなかった最古の魔王は生きていた


 これはとある皇子が伝えた言葉だ。何故、活動を確認されなかったのか。それは偏に魔王の城を訪れて帰って来たものがここ数千年唯の一人もいない。ただそれだけの理由。


 そして同時に、魔王の城の食堂に、数千年ぶりの明かりが灯った。


 ふむ、何も可笑しなことはないと申すか。なればこのように伝えよう。


 「彼の魔王は数千年ぶりに食事を摂った」と。


 果たして、幾星霜の時を経て、一切の飲食を絶ち、それでも尚「変化をしない」という事が何を意味するのか。それはまた次の機会に記すとしよう。

お久しぶりです。ひなとはなと申します。


ここ最近忙しかったのですが、しばらく時間が出来たので、また、ユキとシグレの話の続きを書いていきたいと思います。


これからの展開をゆっくりとお待ちして頂けると幸いです。


それでは、また。

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