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side ガイヤール

「ノヴァッ!いたら返事を知ろ、ノヴァー!?」


 俺はガイヤール。ノヴァの父親だ。

 今日シープン狩りをする予定だった猟師が腰を痛めてしまった為、俺が代わりにシープン狩りに行った。

 本当は薪にする木を切りに行く予定だったが、薪の代わりになる枝を息子のノヴァに取りに行ってもらった。


 冒険者になると言うノヴァに、村を出る際にアイアンソードをプレゼントする予定だったが、冒険者の予行演習のような形でそれを枝集めの報酬とすることにした。

 なぜかノヴァはアイアンソードのことを知っていたが…。どこで俺がアイアンソードを用意していたことを知ったんだか。


 だが今はそんなことはどうでもいい!ノヴァが夜になっても帰って来ないのだ!

 俺が大量のシープンを狩って帰ったのが夕方に差し掛かる頃。その頃にはノヴァも枝を集め終わって帰ってるだろうと思ったのだが……まぁそれなりの量になるから魔物と戦いながらでは時間もかかるかと特に心配はしなかった。


 しかし日が完全に沈みかかった頃。全く裏山からノヴァが帰ってくる姿が確認出来ないことに不安を覚え、俺は自身の武器であるハンマーを手に裏山へと向かった。

 妻のマールからも、俺含め無事に帰ってくるよう涙を流しながら懇願された。俺はともかく、ノヴァは本当に命の危機に面している可能性が高い。

 裏山は魔物の数も少なく、強さも大したことないスライムとゴブリンくらいしかいないが、ノヴァはまだ成人したばかりだ。若さゆえの油断や慢心で、足元をすくわれたのかもしれない。


(しかしノヴァにそんな言葉が当てはまるのか?あいつはスキルを持っていない。油断するなんてこと……)


 山の中腹辺りでノヴァに渡した背負い籠を見つけてから、俺はさらに焦燥感に駆られて裏山の奥へ奥へと向かう。

 すると……


「ギャーーーーッ!?」


 頂上が近くなってきて、そんな声が聞こえた。これはゴブリンの鳴き声だ。

 鳴き声と言っていいのか甚だ疑問だが、この耳障りな声を出すのはゴブリンしかいない。

 俺は急いで頂上へと向かった。


(頼む……無事でいてくれ、ノヴァ!)


 俺は必死にノヴァの無事を祈る。

 そして頂上に着いた俺は、その惨状に目を疑った。

 そこには、大きなクレーターが出来ていたのだ。まるで隕石でも落ちたかのように。


 しかしすぐにそんなことはどうでも良くなった。

 ノヴァが三匹のゴブリンと対峙していたのが目に入ったからだ。しかしノヴァの身体はボロボロであった。肩で息をして、服もあちこち破れており、身体中が血まみれである。


「ノヴァッ!?」


 俺はすぐにノヴァの元へ駆け寄る。

 だが同時に、ゴブリンがこちらへと向かってきた。


「「「ギャッギャーッ!」」」


「俺に標的を変えたか。相変わらず馬鹿なようだ……なッ!?」


 俺がハンマーを構え、ゴブリンを迎え撃とうとした瞬間、信じられないことが起きた。

 突如先頭を走っていたゴブリンから首が落ち、血を吹き出しながら倒れて光の粒子となって消えた。


 そして残ったゴブリンの前に立っていたのは、なんとノヴァであった。


「おい。お前らの相手は俺だろうがよ?なに勝手に相手を変えてるんだ」


「ノヴァ?」


 なにか様子が変だ。ノヴァは戦闘狂のきらいがあったが、普段はもっと落ち着いた言動を取る。

 今のノヴァは、普段から考えられない程の気性の荒さを感じられた。


(いや、それよりもさっきのは一体なんだ!?突然目の前にノヴァが現れたように見えたが?)


「「ギャー!」」


 残ったゴブリンは、そんなノヴァに怯えて逃げ出した。


「3……2……」


 しかしノヴァは逃げるゴブリンを見ながら、急にカウントダウンを始める。

 なんだ?一体何をするつもりだ?


「1……一匹も逃がしゃしねぇよ。少ないけど、立派な経験値だから、なッ!」


 次の瞬間、ノヴァは目にも止まらぬ速さで駆け出した。

 気付いた時には二匹のゴブリンの前へと移動しており、一匹は首が斬り落とされ、一匹は心臓を貫かれて光の粒子となって消えた。


(なんだ今のは!?なんとなくでしかノヴァの動きを捕えられなかったぞ!?今のはスキルか?だがノヴァはスキルを持ってないはずじゃ……)


 頭が混乱する。数時間見ない間に、ノヴァに一体何があったんだ?


「父さん。ポーション持ってない?俺のポーション全部割れてダメになっちゃってて…」


 俺はノヴァの声にハッとなり駆け寄って、急いで持って来たポーションをノヴァに渡す。


「ありがとう……んぐっ、まっず…」


 ポーションを飲むノヴァをよく見ると、ノヴァの身体に付いている血はゴブリンの返り血のようだ。

 それでも身体がボロボロであることには変わりは無いが、俺が渡したのは上級ポーション。

 体力を1000回復するから、ノヴァのレベルであれば全回復するだろう。


「た、助かった~…」


 ドサッと仰向けに倒れるノヴァ。安心して気が抜けたのだろう。

 ポーションは体力は回復しても、疲労と精神までは回復してくれないからな。きっと立ってるのも辛いのだろう。


「ノヴァ。一体何があったんだ?」


 ノヴァにそう声をかけるが、ノヴァからの返事はなかった。


「ん?ノヴァ?」


「くー……くー……」


「……………」


 秒で眠ってしまった息子をどつきたくなった…。


「全く……俺と母さんを散々心配させておいて、吞気なものだ…」


 まぁこんな状態になるまで戦っていたのだ。恐らく休む間もなく、ずっと…。

 そう考えると、こうして疲れ果てて眠ってしまうのも無理はないのかもしれない。

 今はノヴァの無事を喜ぶことにしよう。


「周りに落ちている素材は、俺が集めておいてやるか」


 俺はノヴァが倒したゴブリンのドロップアイテムを集めて背負い籠に入れて手に持ち、寝ているノヴァを背負って山を下りた。


(一応この黒い棍棒も拾っておいたが、これはゴブリンが持っていたのか?)

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