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サブクエスト⑤《天断》

※ランク形式のステータス表記は読み返してみて面白くないなと思ったので、よくある数字に変えました。修正済みですが、何か間違いがあれば教えて頂けると幸いです。物語が大きく変わることはないと思います。

※第三者視点は自分に向かないみたいなので、ここからノヴァの一人称視点で書いていきます。


右往左往して、大変申し訳ございません。

【神託は下った。汝、【真の勇者の器】を持つに相応しき者なり】

【汝に、ユニークスキル【刀剣召喚】を授ける】

【汝、刀剣【菊一文字則宗】に認められし武士なり。【神託スキル】《瞬歩》を授ける】


「……………は?」


 俺は謎の声が言っていることに頭が追い付かないでいた。

 そりゃそうだ。変わった形の剣を抜くと、いきなり【真の勇者の器】だのスキルを授けるだのと言われたんだ。

 今までスキルなんて取得出来なかった俺に、急にそんなこと言われて落ち着いていられる訳がない。


 こんな声が聞こえた理由は、俺が抜いたこの剣が原因だろう。

 いつの間にか剣の光は治まり、煌びやかな剣身だけが露になっていた。


 この剣も含めて、気になることが山ほどある。


「……だけど、それを考えるのは後だ。まずは……」


 俺はずっとクレーターを覗いている黒いゴブリンを見る。

 さっきの光でやられていた目は回復したのか、こちらを睨みつけている。


「あいつを倒さないとな。だけどスキルを貰ったからって、肝心の使い方が全くわからないぞ?おい変な声!さすがに俺はまだ死にたくないんだ。スキルの使い方くらい教えてくれやしませんかね!?」


ユニークスキル【刀剣召喚】

【数多の刀剣を召喚するスキル】

【手から離れた刀剣は何度でも召喚して呼び戻せる】

【刀剣は二振りまで召喚可能】

【刀剣の神託スキルを、魔力消費またはクールタイムなしで使用可能にする】

【現在所持している刀剣:1】


【神託スキル】《瞬歩》

【菊一文字則宗を装備時のみ使用可能】

【10メートルの範囲を、指定した位置まで素早く移動する】

【移動速度は所有者の素早さ×2キロ】

【移動ルートは一直線のみ】

【移動中に攻撃可能】

【ユニークスキル【刀剣召喚】の効果により、魔力消費なしで使用可能】

【二回まで連続使用が可能】

【一回使うごとにクールタイム5秒追加】


 あまり期待しないで聞くと、意外にも答えが帰ってきた。

 本当に俺にスキルが使えるのか正直疑わしいけど、今はそんなことを言っている場合ではない。

 左足のレッグガードも砕けて、今の俺にはこの細めの剣しかない。


(なぜか自分でもわからない内に抜いちまったけど、細っこい見た目によらず頼りになりそうだ。これが業物って奴か?)


「行くぜゴブリン。ぶっつけ本番だが、散々おもちゃにしてくれたお返しをしてやるよ!《瞬歩》!」


 俺はゴブリンまで一気に距離を詰める為に《瞬歩》を発動する。

 すると次の瞬間、俺の身体は何かに引っ張られるようにして前に進み、クレーターの中心から一瞬でゴブリンの目の前まで移動していた。


「え?」

「グギャッ!?」


 お互い驚きで顔を染めるが、俺は無意識に剣を袈裟斬りに振り下ろしていた。

 その剣速は、スチールソードを振っていた時よりも速かった。


 ゴブリンは慌てて後ろへ回避行動を取るが、切っ先がゴブリンの身体を掠めた。


「ギギッ!」


 ゴブリンは掠めたとはいえ、斬られた痛みで顔を歪ませた。


(確か二回まで連続使用出来るとか言ってたな)


 あまりの速さに俺自身、動揺を隠せないが、ここでダメージを与えなければこんなチャンスは二度と来ない!


「《瞬歩》ーッ!」


 剣の先端を突き出し、二回目の《瞬歩》を発動して10メートル先までの範囲を指定する。

 そしてスキルが発動してまた身体が引っ張られたかのような感覚を覚えたのと同時に、俺の身体はゴブリンにぶつかり、剣は深くゴブリンの腹を貫ぬいていた。


「ギャーーーーーッ!?」


「ぐはっ!」


 ゴブリンは何が起こっているのかわからない様子だが、痛み悶え苦しみながら俺を殴り飛ばした。

 かなり効いたが、剣をゴブリンの腹に刺したまま後ろに飛んでいくらかダメージは抑えた。


 棍棒は俺に刺された時に落としていたようだ。10メートルの距離を半ば体当たりで引きずられたようなものだからな。素手も結構痛いけど、棍棒で殴られるより遥かにマシだ。


「いっつつ…。でもやっぱ、防具を砕くくらいの腕力があるだけに、かなり体力を持ってかれるな…」


 なんとか立ち上がるが、意識がかなり朦朧としてきている。父さん曰く、この状態まで陥ってしまうと、残り体力は僅かなんだそうだ。

 もうさっきの拳すら受けられねぇって訳だ。


「へ、へへ…。上等」


 俺はニヤリと笑う。死ぬのは嫌だ。でもやっぱり、俺は戦うのが好きなようで、恐怖よりも愉しさが勝っていた。所謂、戦闘狂って奴か。


「死ぬのが嫌な戦闘狂ってなかなか変わってんな~…。戦闘狂って、死の恐怖が無いイメージだし」


 俺はそう呟きながらまた空を見上げる。だいぶ日が沈んできたな。

 そろそろ父さんもシープン狩りも終えて、家で心配している頃だろう。母さんも心配で不安な顔をしているに違いない。さっさと終わらせて、帰るとしよう。


 枝は集めきれてないけど、まぁ半分以上集まったし、明日明後日くらいはもつだろう。


(空……空か…)


「「「グギャーーーッ!!!」」」


 複数のゴブリンの声が聞こえてきた。どうやら最初に襲ってきた奴らがすぐそこまで来ているようだ。思ったより遅かったな。

 ……果たして、この黒いゴブリンを倒したら、残りの通常のゴブリンを倒せるほどの余裕はあるだろうか?


「ギャッギャ!?ギャーッ!」


 黒いゴブリンが声がした方に必死に呼び掛ける。

 どうやら自分だけではやばいと悟り、好機とばかりに数で押し切ろうとするつもりのようだ。

 だけど奴らが来る前に、俺はこの黒いゴブリンを倒しきるつもりだ。そうしなきゃ、もう本当に俺に生き残る術はない。


 ゴブリンは腹に刺さった剣を抜いて苦悶の表情を浮かべるが、すぐに俺にその剣を向けてニヤリと醜い笑みを浮かべる。


「俺の武器を奪い取ったつもりか?だが残念。考えなしに剣を手放した訳じゃないぞ」


 俺はあの剣―――菊一文字則宗に対し、戻ってこいと念じる。

 すると剣は光の粒子となって消え、同時に俺の手元が光り、ゴブリンが持っていた剣が俺の手元に現れた。

 【刀剣召喚】の効果に、離れた刀剣を呼び戻せるっていうのがあったが、本当に手元に戻ってくるんだな…。これは大きなアドバンテージだ。


 武器を奪われても、思わず手放してしまっても、何度でも手元に戻せるっていうのは戦闘の幅が大きく広がる証拠だ。もう既にいくつか新しい戦法が思い浮かんだぞ、ぐふふ…。


 ゴブリンは目の前で起きた出来事に思わずポカンとしていたが、俺が剣を構えるとゴブリンも素手のまま構えた。距離は10メートル範囲内ではある。奴は棍棒は持っていないが、普通のゴブリンより強いし、次も同じやり方で攻撃が当たるとは限らない。

 《瞬歩》は予想以上に速くて、確かに強力なスキルだと思う。しかし、だからと言って過信し過ぎるのは良くない。


 ゴブリンからは、次はさっきみたいなことはさせないという強い意志を感じる。

 あいつは初見で《瞬歩》に反応してたんだ。使った俺でさえ、あのスピードに置いてかれてるというのに。


(こいつなら、次はさっきより早く対応出来てもおかしくない。俺本来の戦い方で、次の一撃で確実に仕留める…!)


 俺は先ほど浮かんだ戦法の一つを使って、倒すことを決める。《瞬歩》のクールタイムとかいう、『再度発動出来るようになるまでの時間』はとっくに過ぎているから、いつでも発動可能だ。

 ぶっつけ本番だが、行けるはずだ。《瞬歩》には移動する場所の指定は無かったんだ。やってやる!


 俺は《瞬歩》は使わずに、ゴブリンに向かって全力で駆け出す。

 俺が愚直に突っ込んでくることにやや驚きの表情を浮かべるが、ゴブリンは油断せずに俺を見据える。そんなゴブリンに、俺は剣を横投げするようにして投擲した。


「ギャァッ!?」


 「はぁッ!?」とでも言うかのように驚いたゴブリンが身を低くして回避したと同時に、俺は剣を手元に召喚して体勢の崩れたゴブリンに一気に迫った。既に俺は、剣を振り下ろせる状態だ。

 ゴブリンはハッとなり、拳を握り締めてすぐ目の前まで迫ってきている俺に飛びかかってくる。


 変に避けようものなら先ほどの二の舞になると思い、あえて俺の懐に飛び込んで、その拳を叩き込んでやろうという算段なのだろう。


(飛び込んでくるとは思わなかったが、概ね想定通りだッ!)


 俺は《瞬歩》を使ってゴブリンの視界から消える。ゴブリンは消えた俺を探して辺りを見渡すが、残念ながら俺は地上にはいない。


 じゃあどこにいるのか―――空中だ。

 俺は今、ゴブリンの頭上から10メートルの所から自然落下を始めるところであった。


(そしてここで、《瞬歩》が使えたら?)


 あの《瞬歩》の速度に、そこから生じる落下速度が合わさったら……それは確実に、あの黒いゴブリンを仕留められる、必殺の一撃になりうるはずだ。


(俺自身も危ないかもだが、恐らく俺にはダメージは行かないはずだ。これでダメージが俺まで入るなら、さっきゴブリンを刺した時に、同時に俺の体力もかなり減ったはずだ)


 だけど実際には、体力が減った感覚は一切なかった。

 このことから、スキル発動者にはダメージが入らない仕組みなのだろうと推測出来る。


 だったらやるしかない。どちらにしろ、これで決めなければ俺には本当に後がないんだから。


(この一撃で―――仕留めるッ!)


 俺は剣を縦に振り下ろすと同時に、二回目の《瞬歩》を発動する。

 次の瞬間、俺の視界はゴブリンを見下ろす空中から地面だけとなり、身体に痛みが走った。


 痛みに顔を歪めるが、すぐに顔を上げて確認する。目の前には、黒いゴブリンが空を見上げたまま口を開けていたのが見えた。

 そして一陣の風が上から吹いてきて、それに遅れるようにして黒いゴブリンの身体は真っ二つに割れ、光の粒子となって消えていく。それと同時に、頭の中に声が響いた。


【ブラックゴブリンから1000の経験値を取得】

【ノヴァは8~9にレベルアップ。次のレベルアップまで185】


【技《天断》を取得】

【上空から直滑降に《瞬歩》を行うことで発動する】

【《瞬歩》に落下速度が合わさり、威力が飛躍的に上がる】

【《瞬歩》のスピードと高さによって威力が変動する】

【この技の使用時、反動でダメージを受ける】

※主人公以外が《天断》よりヤバいのを出すので、チートではないです。


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