サブクエスト②
(なんだったんだ?あの変な声…)
頭の中に直接響いてきた謎の声に、ノヴァは自室で頭を抱えていた。
サブクエスト、依頼者、報酬などといった言葉が聞こえた。
声が言っていたことを思い出す。
(サブクエストとかいうのが薪代わりの枝集め。依頼者は父さん。報酬は……なんだったか?突然のことだったから何て言ってたか記憶が曖昧だ…)
と、そこでまた謎の声が頭の中に響いてきた。
【サブクエスト:薪代わりの枝集め】
・依頼者:ガイヤール
・依頼内容:薪代わりになる適当な枝を集める。
・経験値:50
・報酬:アイアンソード
・進行度:裏山に行って、薪の代わりになる枝を集めよう。
「……また聞こえたし、なんか増えてた…」
そういえば、と進行度はいつでも見れるとか言っていたと思い出す。
どうやらこのサブクエストも含めて、いつでも確認出来るようであった。
「“は”って言っておいて、他も確認出来てんじゃん。いやそんなことはどうでもいい…。マジでなんなんだよこの声…」
最初は自分の頭がおかしくなって幻聴が聞こえたのかと思ったが、どうやら少なくとも幻聴ではないらしい。
「……父さんの頭の上の矢印、それに報酬……ちょっと父さんに聞いてみるか」
ノヴァはこの声について調べられることがあることに気付き、居間にいるガイヤールの元に行く。
「おう、ノヴァ。準備は出来たみたいだな。この籠に入る分だけ枝を集めてきてくれ」
そう言いながらガイヤールが渡してきたのは、少し大きめの背負い籠だ。
ノヴァとしては、昨晩落ちてきた隕石らしき物を見に行きたかったが、籠一杯の枝を集めるとなると時間もかかる。隕石捜索は明日にした方が良さそうだと諦める。
「わかった。……えっと、父さん。変なこと聞いていい?」
「ん?なんだ?」
「父さんの頭の上にさ、矢印があるんだけど……それ何?」
ノヴァの言葉に首を傾げ、頭上をキョロキョロと見渡すガイヤール。
「そんなもん無いぞ。ノヴァ、お前本当に大丈夫か?体調が優れないようなら、薪の方も俺がやっておくぞ」
「いや、大丈夫。ちゃんと集めて来るよ」
だがガイヤールは、ノヴァの言う矢印が見えていないようだった。
広場で枝集めをお願いされる時からずっと、ガイヤールの頭上にはオレンジ色の矢印が浮かんでいる。
さらに『sub』という文字が矢印には書かれていた。
(なんとなくわかっていたけど、もしかして俺にしか見えていない?アイクたちも見えてなかったっぽいし)
どういう訳か、この『sub』と書かれたオレンジ色の矢印はノヴァにしか見えないようだ。
昨日までこんな物は見えていなかったノヴァは、矢印に得体の知れない不気味さを感じる。しかしどういうことか考えても現状ではわからない為、もう一つ気になっていたことを「変な奴だなぁ」と心配そうに見てくるガイヤールに聞くことにした。
「あとさ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど…」
「ん?なんだ」
「枝を集めるのが終わったら、もしかして何か報酬、例えば剣とかくれたり……する?」
ノヴァの言葉にギクリとするガイヤール。その様子を見て、図星だと判断したノヴァはさらに一言。
「アイアンソード」
「……な、何のことだろうな~…」
完全に図星であった。ガイヤールは噓をつくのが下手なようだ。
ガイヤールとしても、このことは誰にも言っていないはずなのになぜバレた?という気持ちでいっぱいだ。
(マジか…)
報酬にアイアンソードが貰えると確信を得たノヴァは、冷や汗をかきまくっている父に「行ってきまーす」とだけ言って裏山に向かった。
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裏山と言っても、すぐ近くにあっては魔物に襲われる可能性が高い。
なのでホムラ村から裏山へは、三キロ程離れている。
村から出発し、道中は何事もなく50分程で裏山前に着く。魔物が生息している為、しっかり装備は家で整えてきている。
ノヴァの武器はメインに鉄で出来た剣、スチールソード。サブに左腕に肘から指先まで覆うナックルガードと両足に膝から爪先まで覆うレッグガードだ。
どういう訳か、父はノヴァに鋼で出来た剣、アイアンソードをくれるみたいだ。
鉄よりも固くて頑丈、さらに切れ味も鋭い。Cランクの魔物までは、これ一本あれば十分戦える。
ノヴァのスチールソードもそろそろ買い替え時かなと考えていたので、このサブクエストなるものは渡りに船であった。
ナックルガードとレッグガードは特注品で、裏山の魔物を狩って得たお金で隣の町の鍛冶師に作ってもらった物だ。
軽くて頑丈で防具としても使えるが、ノヴァは主に攻撃に用いる。テツを蹴る時にこれを装備していたら、もうしばらくは目を覚ますことは無かったと思われる。
剣だけでは勝てないと、ノヴァが身に付けた独特の戦闘スタイルはかなりトリッキーな為、相手からしたら動きを読むことが困難だ。
スキル持ちでもないのに、一対四で試合に勝てているのはそのおかげであった。
ただ、他の皆も日々成長している。いつかまた勝てなくなる日が来るだろうなと、ノヴァは思っている。
(それでも、Bランク冒険者くらいにはなりたいよな)
結局、ノヴァが見つけたスキルの弱点は、いずれ克服出来るものである。
スキル持ちではないノヴァの成長限界は、他の皆よりも早く訪れるだろう。
それでもノヴァは、父ガイヤールのような冒険者になって活躍がしたかった。
少なくとも、Bランク冒険者まで上り詰めてやろうと。
ちなみに防具だが、革で作られたプレートアーマーのみである。完全に素早さを重視した装備だ。
「あとは下級ポーション3つ持って来てるから、よし…。さて、さっさと枝を集めるか」
ノヴァは薪の代わりとなる枝を集めるため、山の中へ足を踏み入れる。
それを一匹の魔物が、顔を醜く歪ませながら見つめていた。
ノヴァ以外のキャラの容姿について触れてない部分があったのでここで簡単に補足致します。大変申し訳ございません。
ガイヤールは角刈り頭。元冒険者だったので、筋骨隆々のマッチョです。身長は190くらい。
アイクは肩くらいまで伸ばした、濃いめの青い髪。体格はやや細め。身長は170過ぎ。
テツは短い茶髪で、身体はあまり大きくない。身長はノヴァと同じ160ほど。
アリスとエリスの身長は同じくらいで150ちょっとくらい。アリスが金髪でエリスが銀髪。髪はどちらも短く切りそろえている。
アリスは巨乳でエリスはあまり大きくない。
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