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荒々しい女性

サソりんのステータスも公開

 どうもいきなりノヴァです。いつものことながら。


 ランデムに滞在してから二週間が経った。そう、二週間だ。

 思ったよりも町周辺の安全確認と確保に時間が掛かったようだ。領都から呼んだ冒険者の力もあって、今日ようやく領都に向けて出発出来るようになった。

 ワッカさんとバンさんも喜んでる。


「かーっ!やっと領都に向けて出発出来るぜ!ようやくマイホームに帰れる」


「え。領都にはワッカさんの実家があるんですか?」


「ああ。そうじゃないよ。拠点にしてる街とかを、冒険者はマイホームっていう比喩表現を使ってるだけ。実際は僕もワッカも、誰も知らないような田舎の出身者だよ」


 ワッカさんの喜びようを説明してくれるバンさん。

 マイホームねぇ。確かに拠点にしてる場所が自分の帰る場所なんだから、その表現は間違ってない……のか?


「はぁ…。もう少しだけレベル上げしたかったわね…」


 サソりんがやすらぎの森方面へ顔を向けながら、愁いを帯びた顔で言う。

 なんか俺と一緒に毎日のように、コボルトと時々ゴブリンを狩っていたせいか若干戦闘狂気質になった気がする。

 それともただ単に強さに飢えてるだけかしら?強くなりたいと思うのは当然のことだし。


 俺とサソりんはこの二週間で相当の数のコボルトを倒しまくった。

 おかげで俺のレベルは18、サソりんのレベルは20まで上がっていた。

 あと貴重な食事シーンも見れた。パン一個とサラダ、そしてちょっとのお肉だけだった。これでしばらく何も食わなくて良いとか便利過ぎる…。




ノヴァ


Lv.18


体力:209/209

魔力:268/268

スタミナ:388/388


物理攻撃力:156+80

物理防御力:111+50

魔法攻撃力:124+10

魔法防御力:101+15

素早さ:194




サソりん


Lv.20


体力:239/239

魔力:204/204

スタミナ:264/264(ノヴァに付き合ってたら凄い上がったわ byサソりん)


物理攻撃力:274

物理防御力:255

魔法攻撃力:37

魔法防御力:74

素早さ:142




 サソりんは身体そのものが武器な為、攻撃力が素で高い上に、防御力もある。

 その代わり魔法適正がほとんどない。魔法攻撃なんて絶対受けちゃダメやん。


 だから本人は、魔法防御力が上がる防具かアクセサリーが欲しがっている。

 しかし魔法関連の装備は結構貴重だからな。ホノ爺も残念ながら取り扱っていない。

 まぁそれでも十分強いがな?本当に羨ましいねぇ、その身体…。


 ああ、あと黒い猫耳少女が宿に金貨50枚の報酬を届けてくれた。

 それでサブクエストは達成され、1000の経験値も取得した。かなり美味しいですありがとうございした。


「ほっほっほ。それじゃあ行こうかの。改めて、道中の護衛を頼むぞ」


「「了解!」」


「今度こそは、しっかり護衛してみせますぜ!」


 ホノ爺の言葉に、気合を入れて答える先輩冒険者の二人。

 この間はワーウルフっていう普通ならいないはずの魔物が現れたが、二人はEランクモンスターくらい特に手間取ることなく倒せるレベルだ。

 安心して俺とサソりんは馬車の中でのんびり出来る。


――――――――――――――――――――――――


 しかし人というのは当たり前になってしまった習慣がなかなか抜けない生き物だ。

 子どもであれば大人のマネ。老人であれば散歩と言ったように。


 俺にもそういうのがある。いや、正確には出来てしまったことに気付いてしまった。


「……ノヴァ。疲れないの?そんな無意味に警戒して」


「それが不思議と疲れないんだな~。これが」


 ワーウルフのことがあってか、俺はさっきから魔物の襲撃を警戒している。うん、しまくっている。

 思えばやすらぎの森でも、サソりんの感覚毛に負けず劣らずの気配察知能力を発揮していた気がする。

 索敵スキルの《気配察知》の存在意義が無くなってないか?これ。


 でも《気配察知》ありだったらもっと敏感に反応するかもな。スキル補助なしでこれなんだから。


「そんなに警戒しなくても、ワーウルフみたいな化け物にはそうそう会わないわよ。あれは異例よ、異例」


「それはわかってるんだけどなぁ。もう癖みたいなもんだよこれは。ワーウルフもだけど、やすらぎの森でもコボルトが大量にいたせいでずっと気を配ってたからかな?」


「ノヴァは私より先に気付くことも時々あったものね。でも少しくらい肩の力抜いたら?気付かないだけで、そういうのは結構疲れが溜まるから」


「これでも全力で脱力してるんだが……確かに知らないうちに疲れが溜まっちゃいそうだ…。あ!そういえば…」


 俺はアイテムポーチにズボっと手を突っ込んで、長方形の小さな箱を取り出した。

 そこからさらに計54枚のカードを取り出す。


「それは?」


「ランデムで買った。なんか去年から流行ってるトランプっていう、数人でやるテーブルゲームらしい。ちゃんと息抜きする為に、ちょいと手伝っておくれよ。サソりん」


「いいけど……ルールはわかるの?」


「説明書があるから大丈夫。えっと。ババ抜きは……カードを何枚も持たなきゃいけないゲームらしいけど、持てるか?」


「切っちゃいそうね」


 ですよね~。サソりんの手、ハサミだし。


「じゃあこの神経衰弱ってゲームをやろう。裏返したカードをめくるだけだから、サソりんが指定したカードも俺がめくればいいし」


「ふ~ん。それじゃあそれで」


 ということで俺とサソりんは、同じ数字のカードを引いていく神経衰弱で、息抜きプラス時間潰しをすることにした。


―――――――――――――――――――――――――


 サソりんとのトランプは神経衰弱だけでなく、戦争というゲームもやった。

 物騒な名前だが、これがなかなか楽しい。

 冒険者には運も必要なのだが、これはその運を確かめるのに良いゲームだ。


 山札から一枚ずつ引いて、カードの数字が大きい方が勝利というのもの。

 なお『A』というのは数字にすると1に分類されるが、戦争では一番強い数字の扱いだ。


 その戦争なのだが……


「はい、また私の勝ち」


「かーッ!また負けたー!?サソりんの運強過ぎだろぉ!」


 神経衰弱は記憶力勝負なところがあるからまだいい勝負が出来ていたが、戦争はサソりんが全勝中だ。

 ワーウルフに勝てたのって、実は彼女のおかげ説。いや説じゃなくて実際そうか…。サソりんの毒が無かったら絶対死んでた。

 てかこれに関しては運じゃなくてサソりんの実力か。失礼ぶっこきました。すんません。


「くぅー!こうなったら別のゲームで勝負だ!」


「いいわよ。次はどんなのにする?」


 そうして特に魔物に襲われることもなく、俺とサソりんはトランプで遊び倒した。


 だが、ホノ爺が「そろそろ休憩しようかの~」と言ったその時だった。

 俺とサソりんの顔に、緊張の色が走った。

 やっぱ俺、魔物の気配にかなり敏感になってるわ…。この先からその気配をびんびんに感じたよ。


 えっと……Fランク並の魔物が十数体に、なんか強そうな気配が一つあるな。

 う~ん?この強そうな気配、魔物じゃないな。人か?それにしてはちょっと変わった気配だな。


「あれは…!誰かが魔物と戦っていますっ!」


 それからすぐに、外からバンさんの声が聞こえた。

 やっぱ人が襲われてるのか。


「ほっほっほ。そうかい。じゃあ少し急ごうかの。もしかしたら助けがいるかもしれん」


 ホノ爺がそう言うと、馬車の速度が上がった。


 俺も外に顔を出して前方を確認する。

 まだ少し遠くて見えにくいが、どこかの民族衣装っぽい服装をしている。気のせいか、耳が長く尖ってるように見える人が十数体の犬っぽい魔物に囲まれている。

 見えてるのは後ろ姿だけだが、恐らく女性だ。なんか似合わないくらいデカい盾を構えてるんだけど。


 段々と近付いていくと、女性がこちらに気付いて振り向いた。当然犬の魔物たちも、こちらに警戒を露にする。

 いや、犬と言うより狼か?


 もうほぼ目の前なので、女性の姿もよくわかる。緑を基調とした民族衣装っぽい服はかなりの薄着で、お腹周りと腕、そして脚が大胆にも露出していた。

 全体的に線は細いが、人並み程度には出るところはしっかり出てる。しかもへそ出しだ……いいねっ。


 鋭いくらいに切れ長の目。透き通ったような綺麗で白い肌をした、綺麗なお姉さんって感じ。

 髪は短髪で、これまた綺麗な白い髪、毛先は薄く透き通った緑色だ。


 身長は俺より10センチくらい高そう。つまり170センチくらい。

 彼女の左手には身の丈より大きい、いや長い?長槍。

 右腕には遠くからでも見えていた、縦に長いひし形の盾。彼女の身長の半分くらいの大きさだ。


 そして気のせいではなかった。しっかり耳が長いし、尖ってる。耳で物を刺せそうなくらい尖ってる。


「そこのお嬢さん!助太刀は必要かいっ?」


 ワッカさんが耳長の女性にそう声を掛ける。

 しかし女性は、ワッカさんに対して睨むようにして言葉を返した。


「……必要ない。私だけで十分だ。あまり時間は掛けないから、そこで見ていろ」


「お、おう…。そうか?」


 うわ怖っ。すげぇ気が強そうだなぁ。

 しかしあの人。気だけじゃなく、しっかり実力もあるな。戦ってるところを見てないのに、こうして前にすると首筋にあの槍を当てられてる気分になる。


「ワクワク、ワクワク…!」


「ノヴァ。初対面の人の強さに興奮し過ぎ」


 隣のサソりんにそう言われるが、強い人の戦いは見るだけでも楽しいし、学べるものが大きい。

 今からあの狼の魔物相手にどんな戦い方をするのか、楽しみで仕方ない。


 ちなみになぜワッカさんがわざわざ助けが必要か聞いたかというと、冒険者には“人の獲物を横取りしてはいけない”という暗黙のルールが存在するからだ。

 向こうから助けを求めたり、危なそうだったらその限りではないが、基本的には横やりはマナー違反となっている。


「どうした!さっきからそうやって様子見ばかりして。さっさと掛かって来ないか。さっきのグレーウルフと同じ場所に送ってやる…」


 そう言う女性の足元を見てみると、牙が数本落ちていた。

 どうやら彼女に襲い掛かった仲間が何も出来ずにやられたもんだから、警戒して様子見状態だったようだ。


 彼女の声に反して、グレーウルフという魔物は一向に動く気配が無い。

 しかし自分たちより強い相手にそうするとどうなるか。答えは明白だ。


「来ないか。ならば……こっちから行くまでだ!」


 当然こうなる。


「《一閃突き》ッ!」


 女性がドンッ!と素早く駆け出すと同時に、一体のグレーウルフが槍を口から串刺しにされ、光の粒子となって消える。

 見てるこっちの喉と尻が痛くなる光景だ…。つうかあんな重そうな得物を両手に持ってるのに、全く重心がぶれてない。

 細い見た目とは裏腹に、戦闘スタイルはかなり力強いみたいだ。


「「「バウゥッ!」」」


 力強い突きを放って後ろがガラ空きになった女性に、五体のグレーウルフが襲い掛かる。


「ぬうぅん!」


 しかし女性は慌てることなく、そのまま後ろに振り返りながら横薙ぎに槍を振るい、グレーウルフたちを真っ二つにした。

 さらにそれだけでは終わらず、そこから高くジャンプして―――


「《シールド・バッシュ》ッ!」


 また一体、今度は右腕の盾で頭を潰された。

 あ、荒々しい~…。なんて豪快な戦い方なんだ。


 しかし、なるほど……俺は盾を使う予定は無かったが、あそこまで大きくて立派な盾だと、立派な武器として使えるんだな。

 これは買う余地ありだな。


「ふんっ!」


 えー!今度は槍を縦に振り下ろした!?

 しかもお決まりのように真っ二つ!刃が触れてない部分まで斬れるとか、どんな性能してんだあの槍!

 それとも単純にあの人の腕が良いのか?


 あ!今度は盾で首を折った!?


「すっげぇ!サソりんあの人すっげぇ!」


「ええ。確かに凄いわね。あの細い身体のどこにあんな力が…」


 俺は無邪気に飛び跳ねながら、終始興奮しっぱなしだった。

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