強くなる為に④ コボルト狩りの作戦
【サブクエスト:コボルトの素材収集】
・依頼者:コウメイ
・依頼内容:コボルトの爪50本、牙30本、毛皮5枚を収集。(入手出来た数だけでも可)
・経験値:1000
・報酬1:金貨10枚(納品した数に応じて変動する)
報酬2:コウメイ商店の会員証
コウメイさんに以上のことを依頼された冒険者志望の男。どうもノヴァです。
俺の隣を歩いている美人な亜人さん、サソりんと一緒にやすらぎの森へ向かってる最中だ。
「やっぱりノヴァに頼んで正解だったわ。私だったら銀貨10枚で受けてたわ」
「そう褒めるなって。親が良かったんだ。違和感を感じた依頼の報酬は、“それが本当に適切かどうか疑え”。父さんからそう教えられたんだ」
まぁさっきは謎の声によるサブクエスト発生報告が無かったからってのもあったが。
「お父さんって確か……」
「ああ。元Bランク冒険者のベテランだ」
やすらぎの森まで少し時間があるので、父さんから教えてもらった初心者にありがちなミスや依頼の罠などをサソりんに話す。
初心者によくあるミスというのは、スライムやゴブリンなどの弱い魔物の討伐依頼を受ける時だ。
多くの人が弱い魔物くらいには殺されないようにと、それなりにレベル上げをしている。その狩りの対象になるのはスライムとゴブリンがほとんどだ。
そのせいか、スライム相手には少ないみたいだが、油断してゴブリンに殺される新米冒険者が後を絶たないのだ。
しかもその新米冒険者が女性だったら悲惨だ。殺されずに誘拐されて、苗床にされるのだ。さらには繫殖力が増すなんて話もある。
一応ゴブリンにもメスは存在するのだが、やはりゴブリンも選り好みするんだな。容姿が整ってる人間を襲いたいらしい。
まぁうちのホムラ村ではそういった事件は一切なかったがな。必ずレベルが高くて、ある程度戦闘慣れしている人が一緒にレベル上げしに行くから。
俺の場合は言わずもがな、父さんだった。
「うぇ…。私も下手を打ったら、そうなるのかしら?人間より劣った容姿はしてるけど…」
「なんだと!?」
「うわっ。なに?」
ゴブリンによる主な被害まで説明すると、サソりんが信じられないことを言ったので過剰に反応してしまった。
だがそれもそのはず。なぜなら彼女は、自分は人間の女の子より可愛くないと思ってるのだ。
「サソりん貴様、まさか自分が可愛いことに気付いていない系女子か?」
「何それ…」
「読んで字のごとくだ。サソりん。お前は十分容姿が整っているぞ。ていうか下手な人間の女より可愛い!」
「か、可愛い?私が?」
褒められるのが好きなサソりん。可愛いと言われてまんざらでもない顔になる。
「そうとも!サソりんは可愛いぞ。自信を持っていい。今日の帰り道にでも、ランデムの女性たちと自分を見比べてみろ。“あ。あの人よりは私可愛いかも…”と思えること間違いなしだ!」
「それは相手に凄く失礼じゃない?」
俺は可愛い女の子にはちゃんと自信を持っていてほしいエゴイストな男なのだ。
アリスなんかは巨乳な自分がコンプレックスで、去年なんか少し塞ぎ込んでいた。
そこで俺は双子の妹のエリスがいる横で「俺は巨乳も貧乳も大好きだーーー!」と大声で言い放ってやったのさ。
まぁその後は手痛いビンタを頂いた訳だが、まぁ多少は自信が付いてくれたと思う。暗い表情を見せることも少なくなって、今じゃもう明るいツンデレ女子だ。
しかしこれはある程度親しい間柄だから出来た荒療治だから、職場の女性とかに言っちゃダメだぜ?首が飛ぶ。10歳の子どもでも知ってることだ。
そんな訳で、自分に自信が無い女の子にはちゃんと自信を持ってほしいのだ。その方が可愛いからね!
「いいんだよ。人間の女なんてそういう腹黒い奴でいっぱいなんだから。俺の友達みたいに裏表ない奴の方が珍しい」
「えー…」
「その点、サソりんは相手のことを考えてるし、優しくて良い子じゃないか。故郷じゃ告白とかされなかったのか?」
「告白……されたことないわ」
なんと見る目のない奴らなんだ、蟲人のオス共は!?
この人間よりも大きなくりっとした複眼!スベスベしてそうな素肌!手入れの行き届いた色つやがあるハサミと尻尾!
俺はまだサソりんのことを碌に知らないし、関係も浅いが、もし俺が蟲人だったらこんな可愛い女の子を放っておくことなんてしないね!
「ああ…。いつかサソりんに、見る目のある良い男が現れますように…」
「……ふふっ。貴方ってやっぱり変な人ね」
「そうか?素直な感想を言ってるだけなんだがな?」
「そうか……少なくとも貴方から見た私は、可愛いのね。……ふふんっ」
あ。ドヤりんになった。
やっぱりサソりんは褒められるのが好きなんだな。可愛い。可愛い女の子は最高だぜ。
「あ。森が見えてきた」
ちょうど話の区切りがついたところで、やすらぎの森が見えてきた。
いよいよレベル上げか。ここらで15までレベルを上げたいところだね。
「そうだ。コイツも召喚しておくか」
俺は菊一文字とは別に、小夜左文字を召喚した。小夜左文字のスキルも検証してみないといけないしな。
一瞬だけ光って鞘に収まった状態で現れた、一振りの短刀。それを菊一文字とは反対の右腰に付けるが……なぜだろう?気に食わない。
「それ、確かワーウルフを倒した時に光った……」
「ああ。小夜左文字って言うんだ。俺のスキルに関することだから詳しく話せないんだけど、ワーウルフを倒したことを切っ掛けに、俺のことを認めてくれたんだ」
「剣が人を認める?……まるで物語の伝説の剣ね」
「俺もそう思う(笑)」
なぜあの時認めてくれたのか謎だが、思い返せばあのワーウルフには返り血のような物が付いていた。
俺たちが襲われる前に、誰かが被害に遭ってしまったんだろう。一体誰の仇を取ったのか不明だが、遺族が復讐を望んでいて、その人の代わりに復讐を達成したってことで納得することにした。
さて、小夜左文字のスキル。《復讐の賛歌》は、使ったら実際どんな感じのスキルなのかね。
凄い物騒な説明だったが、普段使い出来ると良いんだがな…。
【小夜左文字】
・攻撃力+10 ・魔法攻撃力+20
・【神託スキル】《復讐の賛歌》
【この刀で母親を殺された男は、母親を殺した犯人をさらにこの刀で殺した逸話がある】
【他にも多く復讐の為に使われた逸話が存在している、復讐を象徴しているかのような刀剣】
【―――なぜか復讐したい相手に使って欲しそうに感じる、怪しい光沢を放っている】
【接近戦には向かないが、小ぶりなので暗殺に使いやすい】
【【神託スキル】《復讐の賛歌》が使えるようになる】
【―――早く復讐したそうだ】
うん、小夜左文字の説明も所々凄く物騒っ!
菊一文字が如何に良い子かわかるよ。意思があるのか知らんけど!
「とりあえず最初のコボルトに新しいスキルを使ってみたいから、念の為サソりんは下がっててくれ」
「そう。わかったわ」
二振り目の刀剣にして、いきなり問題児を抱え込んだ気持ちになりながら、俺とサソりんはやすらぎの森に入った。
「ノヴァ、気を付けてね。この間より気配を多く感じる。あまり深入りしない方がいいかも」
「ああ。なんつうか、空気も少し張り詰めてる感じがするよな?」
一体どれほどのコボルトが発生しているのか……幼体とはいえ、ワーウルフの影響はそこまで大きいのか。
―――つまり経験値と素材がうっはうっは!?
「他の奴らに先を越される前に、粗方狩り尽くしたいな」
子どものようにキラキラと目を輝かせながらそんなことを言うと、サソりんが少し引いた様子で白い目を向けて来る。
「え?私の話聞いてた?深入りはしない方が……」
「もちろん下手に深入りなんかしないさ。囲まれると面倒だからな。だからサソりんの感覚毛で、比較的気配が薄いところから攻めていくんだ。もしコボルトの仲間が大勢駆け付けて来そうになったら一旦引けばいい。引く時は……そうだな、サソりんの毒を使おう。サソりんの毒の臭いは、鼻が利くコボルトには有効だろう。森に悪影響を与えない程度に毒を撒くだけで良い。それだけで奴らは俺たちを追って来れないはずだ」
俺が考えた、ちょっとしたヒットアンドアウェイ作戦を提示すると、サソりんはしばらく考える素振りしてから答えた。
「確かにコボルト相手には良い作戦かもしれないけど、それでも大丈夫とは思えないわ。コボルトの群れの連携はそれなりに厄介だし、事前に回り込んで来る可能性もある」
「う~ん。そっかぁ……じゃあある程度狩って満足するしかないのかねぇ…」
せっかくの経験値稼ぎ日和だってのに、なんか寂しいな~…。
それにコウメイさんのサブクエストの報酬も、毛皮がドロップしなかったとしても爪と牙をいっぱい納品すれば上乗せが期待出来るだろうし。
う~ん。なんか良い方法は無いかなぁ?
なんとか出来ないものかと悩んでいると、サソりんが口を開く。
「そうね。ノヴァの作戦を聞いて、一つだけ良さそうな作戦を思い付いたわ」
「お!なになに?もしかして経験値と素材をガッポリ稼げる?稼げちゃう!?」
期待を込めた眼差しを向けると、サソりんはクスクスと笑いながら頷いた。
「(可愛いわね)。ええ、上手く行けばだけどね。コボルトは魔物と言えど、習性事態は普通の獣と変わらない。だったらそれを利用しちゃいましょう」
「おお!それでそれで?どんな作戦なんだ!」
その後、サソりんが考えた作戦を聞いた俺は「すげぇなサソりん!天才か!?」と思わず彼女を褒めちぎった。
するとどうなる?ドヤりんになる。可愛い!
この通り主人公は可愛い女の子を見るのが大好きなオープンスケベです。
尚、初恋はまだ。




