ドロップアイテムの取り分
暑い…。もう9月なのに…。
暑いとモチベ下がりますわ~…。
【ワーウルフ・幼体から2500の経験値を取得】
【ノヴァは10~11にレベルアップ。次のレベルまで1822】
体力:83/103→83/116
魔力:148/148→148/160
スタミナ:76/329→76/333
物理攻撃力:94→101
物理防御力:69→74
魔法攻撃力:47→50
魔法防御力:56→62
素早さ:73→81
【技《居合・首斬り舞》を習得】
【舞うように首を斬り飛ばす居合。腕にのみ《瞬歩》を行うことで発動する】
【距離にして最大10メートル分の回転をしながら斬り付けることが可能】
【《瞬歩》のスピードと回転量によって威力が変動する】
【回転攻撃を行った場合、三半規管が弱い者だとめっちゃ酔う】
【神託は下った。汝、刀剣【小夜左文字】に認められし武士なり。【神託スキル】《復讐の賛歌》を授ける】
【神託スキル】《復讐の賛歌》
【小夜左文字を装備時のみ使用可能】
【指定した相手を恨み、憎み、妬む者たちの怨念が塊となって襲い掛かる魔法攻撃。怨念の数が多ければ多いほど威力が増す。複数指定可能】
【使用者は怨念たちの感情を一身に受けることになり、精神が弱い者だと異常をきたし、心が崩壊する恐れがある】
【ユニークスキル【刀剣召喚】により、クールタイムなしで使用可能】
【消費MP44】
ワーウルフの首を斬り飛ばした時、様々な情報を謎の声がつらつらと述べていく。
いや情報量が多過ぎるし、なんか幼体っていう凄くツッコミたい声が聞こえたんですが…。しかも回転してる最中に聞こえて来たから整理が追いつかん。
うぅ……気持ち悪いぃ~…。俺は今何回転したんだ?とりあえず地面に背を付けて倒れてるのはわかるけど…。
「ノヴァ!大丈夫?」
「顔色悪いぞ。血を流し過ぎたか?流石に最高級ポーションじゃ血までは戻せないからな」
あぁ…。やっぱりあのポーションお高めな奴だったんだな…。あれ一個で金貨数十枚はするだろ。
そんなものを俺に使ってくれるなんて、申し訳ねぇな…。Dランクがどれくらい稼げるのかわからないけど、おいそれと買えるもんじゃないだろうな。
「心配していただかなくて大丈夫です…。目が回って気持ち悪いだけなんで」
「目を?さっきワーウルフの首を斬った技のせいか」
「はい。スキルを応用した技です。思い付きでしたけど、上手くいって良かったです」
《瞬歩》の移動ルートは一直線のみ。声の説明ではそうなってる。
だが《瞬歩》を発動する時は、身体全体が何かに引っ張られてるような感じだった。その引っ張られる箇所を指定……今回で言えば腕だけにすることは出来ないか。
ワーウルフに居合を放つ瞬間、そんな考えがパッと思い浮かんだのだ。
出来なかったら出来なかったで、どっちにしろワーウルフに向かって《瞬歩》は発動していただろうし、悪い結果には繋がらないと思ってぶっつけ本番で試してみた。
おかげで《居合・首斬り舞》を習得することが出来たしな。
「……ワーウルフは?」
声によってわかってはいたけど、それでもつい横を確認してしまう。
そこにはワーウルフのどこか禍々しく感じる鋭い爪が五本と、あの強靭な牙が二本残っていた。
「とっくにドロップアイテムを置いて消えたわよ」
「そうか…。まぁそうじゃなかったら、こうして落ち着いて話なんてしてないか」
「違ぇねぇ」
ワッカさんは笑いながらワーウルフのドロップアイテムを拾って、なにやらうんうんと唸り始めた。
俺も大分酔いが治まって来たので、身体を起こして辺りを見渡した。
ワーウルフの攻撃によって抉られた地面、サソりんの毒によってなんか汚染されてそうな毒沼周辺。
地面はともかく、毒沼の処理ってどうすればいいんだ?
「なぁ。あの毒沼の処理はどうすればいいんだ?」
「ああ、あれ?あれはあと三十分もすれば勝手に消えるわよ。毒系の蟲人は魔力で毒を作ってるから、時間が経てば魔力が分散して無くなるわ」
「へ~。つくづく便利だなー。ん?じゃあ溶けた地面は?」
「それは元に戻らない。土を埋める必要があるわ」
前言撤回。割と不便ですわ。
今回は平原だから良かったけど、街道や街中で使おうもんなら通行人や馬車の邪魔になってしまう。
「よし、決めた!取り分はこうだっ!」
ドロップアイテムを俺とサソりんの前に並べながらワッカさんが言う。さっき唸っていたのは取り分を決めていたのか。
「て、これは……」
俺とサソりんの前には爪が二本と牙が一本ずつ。ワッカさんは自分の前、爪を一本だけ置いて満足そうに頷いている。
サソりんが不審に思い、思わず言葉に出す。
「あの……これってどういうことですか?私たちの方が取り分が多い気が…」
「何がだ?俺は何も出来なかったんだから、これが当然だろう?」
「そうですかね?ワッカさんがいなかったら、ワーウルフを倒すことは出来なかったと思いますが…」
「ありがとな。でもよ……」
ワッカさんは毒沼の方を見つめながら続ける。
「サソりんの《ポイズンショット》のおかげで、ワーウルフはまともに近付くことも出来ず、寧ろ追い込まれる形になった。そして毒沼に落とすことで、奴の動きを鈍らせることに成功した。ここまではいいな?」
俺とサソりんは頷く。確かにサソりんの功績はデカい。
幼体といえどもやはりワーウルフ。その強さはブラックゴブリン以上だった。毒で弱らせなかったらこっちがやられていたはずだ。
「だが問題はその後。どういう原理か知らんが、アイツはスキルを使って俺たちを怯ませ、まともに戦わせなくさせた。スキルを使う魔物がいるなんて知らなかったぜ…。ノヴァはそういう耐性があるのか、効かなかったみたいだがな。そしてノヴァは臆することなく、一人でワーウルフに立ち向かったんだ。例え正気を保っていたとしても、俺じゃ絶対に出来なかった」
「だけど、俺たちを逃がそうとしてくれたじゃないですか?それって立ち向かおうとしてませんか」
「言葉が足りなかったな。俺だったらあんな勇猛果敢に、恐れもせずに立ち向かうことなんて出来ないってことだ。この違いは結構大切なんだぞ?お前はワーウルフに勝つって意志を持って戦った。だがもし俺だったら、お前らを逃がす為に時間を稼がなきゃって、まともに戦うことも出来なかったはずだ」
ワッカさんは悔しそうに俯き、拳を強く握る。
彼のそんな姿は、自分の不甲斐なさに打ち震えているように見えた。
「ほんっと、情けねぇってありゃしねぇ。お前らの先輩だっつうのによ…。だから、取り分はお前ら二人の方が多くて当然なんだ。俺が役立ったのは、最高級ポーションをノヴァに飲ましたってことだけだ」
そんなことないです、と言いたかった。
彼がワーウルフを空中へ誘導したり、一瞬でもタンクの役割を果たしてくれたおかげで、無事勝利に繋がったと俺は思ってる。
だけどワッカさんはそれで良しとしていない。だったらここは大人しく受け取っておいた方がいいのだろう。
それが彼の為になると思って。
「……わかりました。でもあまり自分を卑下しないでください。ワッカさんがいてくれたおかげで、俺たちが生きてるのも事実なんですし」
「おう。ありがとよ」
「私はイマイチ納得していないのだけれど……それ一本じゃ最高級ポーション代にもならないと思いますよ?」
「まぁまぁサソりん。本人が良いって言ってるんだからいいじゃん」
「そうだけど……ん?誰か来る?」
サソりんの感覚毛に何か引っ掛かったのか、彼女はランデムの方を見た。
俺も釣られて見ると、確かに誰かが馬に乗ってこちらに向かってきていた。しかも十数人規模。
「おーいっ!ワーウルフが出たって聞いたぞ!?加勢しにきた、どこにいる!」
どうやら援軍のようだ。もう遅いけど。
その後、事情を説明した俺たちはランデムへと引き返した。
そしてしばらくはランデム周辺の安全の確認が取れるまで、一週間ほどまたランデムに滞在することになった。
次回からまたサブクエスト回です。ここから主人公がもっと強くなりたいと頑張り始めます。
ちょっとずつでもブクマや高評価が貰えるとモチベが上がります。暑くても三日に一度くらいは投稿を頑張りたいです。
ハッキリ頑張ると言わない辺り、私って本当に暑いの嫌いなんだなって思います。




