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VSワーウルフ②

 作戦は成功し、見事ワーウルフを毒沼に落とすことが出来た。だが……


「ノヴァ!」


 当然俺も毒沼に向かって落下することになる。しかしなんとサソりんが毒沼に入って来て、抱きとめてくれた。

 わおっ。お姫様抱っこ。女の子にお姫様抱っこされるとか恥ずかしいな…。ていうかやっぱ自分の毒は効かないんだ。


「もう。さっきの質問はこういうことだったのね。無茶をするわね貴方…。この毒に触れたら、痕が残っちゃうわよ?それに麻痺と激痛をもたらして、死に至らしめる猛毒よ。サソリの毒を舐めないでちょうだい」


 サソりんがぷんすか怒りながら言う。あんな無茶をすれば当然怒りもするか。


「悪い悪い。別にサソりんの毒を舐めてた訳じゃないよ。でも格上相手にはあれくらいしないと倒せないだろ?あのままじゃ全員やられていた。死ぬよりはマシだよ」


「もう……それっぽいこと言ってもダメ。毒を抜いても、後遺症が残らないとは限らないのよ?」


「悪かったって。説教はワーウルフを倒した後に聞くから、早く陸に上がってくれ。ワーウルフが毒沼から出て来る前に、もう一度体制を整えたい」


「え…?」


 俺の言葉にサソりんが動揺して、ワーウルフが落ちた場所を見つめる。

 すると同時に、ドバァ!と毒飛沫を上がった。


 サソりんは毒が俺に掛からないようにしながら、急いで陸まで運んでくれる。

 俺はすぐさまサソりんの腕から降りて菊一文字を構える。


「おいおい。マジかよ…!さっきのノヴァの攻撃は、明らかに致命傷もんだろッ!」


 俺とサソりんの前に出て、盾を構えながらワッカさんが悪態をつく。

 俺がやったのは、上からの攻撃によるゴリ押しで毒沼に叩き落としたということだけ。

 ワーウルフ自身には当たってないのだから、実質俺が与えたダメージなんて微量だろう。


 飛沫が納まると、そこにはドロドロとした毒の液体を垂らして立っているワーウルフがいた。


「グルルル……《グルァーーーーーーーーーー》ッ!!!!!」


 毒の苦しみに悶え、怒りの咆哮を放つワーウルフ。

 ビリビリと身体に衝撃が走り、空気まで揺れる程の恐ろしい咆哮。

 それに思わず足が竦みそうになるが、なんとか耐える。


 奴は毒によって、身体が思うように動かせなくなってるはず。三人で戦えばなんとか……


「……だ、駄目だ…」


「え?」


 そう思っていたのだが……ワッカさんの様子が変だ。

 どうしたんだ?急に弱気になった?


「お前たちは逃げろ…。今なら俺一人でも五分くらいは時間を稼げるはずだ。それまでに出来るだけ遠くへ逃げろ」


「何言ってるんですか!?ワーウルフは今、相当毒に苦しんでいます!俺たち三人で掛かれば、きっと……」


「……………逃げろ。じゃねぇと、全員死ぬ…!」


 何を言ってるんだ?ほとんどサソりんのおかげとはいえ、さっきはワーウルフが万全の状態でも戦えたんだ。

 今なら当初の予定通りに戦えば、油断しなければ勝てるはずだ。


「おいサソりん!お前からも何か言って……サソりん?」


「……………」


 サソりんを見ると、彼女も怯えたようにただその場に立ち尽くしていた。まるで蛇に睨まれた蛙のように。


「サソりん!お前までどうしちまったんだよ!?おいっ!」


「……………」


 何度も呼び掛けるが、サソりんは俺の声が届いていないのか、全く反応する気配がない。

 二人とも、最初はこんな様子は微塵も見せなかったのに、なんで急に…。


 そこまで考えてハッとする。俺はさっきのワーウルフの咆哮を思い返した。

 あの咆哮を受けた瞬間、足が竦みそうになった。あんな衝撃波みたいな咆哮を受ければビビりもするだろう。

 だからって、二人みたいに怯えるのは流石に異常だ。


「……さっきの咆哮はまさか―――スキルっ!?」


 魔物がスキルを使うのか!?そんな奴が存在するのかよっ!


「グルルルルルッ!」


 ワーウルフは姿勢を低くして、攻撃態勢になった。

 マズい!このままじゃ本当にやられる!?


「グルァーーーッ!?」


「ちっ!」


 俺はワッカさんの前に出て、ワーウルフの爪を受け止めた。今の彼では、まともにタンクを務められないと思ったから。


 ギリギリと音を発てながら踏ん張る。俺がなんとか受け止められるレベルまで毒に苦しんでるってことか…。

 てか毒の方が怖い!ワーウルフの身体の毒が掛かりそうっ!?


「お、お前……何をして…」


「下がっててください、ワッカさん…。俺がコイツを食い止めてる間に、正気に戻ってください…!」


「な、なに言って……」


 ワッカさんとサソりんは、自分が何かしらのデバフを受けていることに気付いていない。

 だけどきっと時間が経てばそれも消えるはずだ。人の恐怖を煽るスキルみたいだし、本人の意志次第かもしれないけど。


 それにコイツはどうも俺に執着している。サソりんだってコボルト殺してるっていうのに、理不尽だッ!

 だが今はそれがありがたい。コイツだって俺が前に出てくることは本望のはずだからな。


「さぁ犬っころ。ちょっと二人で散歩でもしようや……激しめのなッ!」

「グルルルルルッ!」


 俺はワーウルフのあばらに向かって、思い切り蹴りをかます。

 毒は怖いが、レッグガードを付けてるから多少は大丈夫だろ!


「ガァッ!?」


「それはさっきのワッカさんの分だ!」


 奴の力が緩んだところで、続けざまに今度は顎に向かって蹴り上げを行う。

 見事に顎にクリーンヒットし、菊一文字が自由になる。


 俺は切っ先をワーウルフに向けて、《瞬歩》を発動した。


「ガウゥーッ!」


 菊一文字は見事ワーウルフの身体を貫通し、そのまま10メートル先まで引き摺ってやる。

 すぐさま二回目の《瞬歩》を発動し、ワーウルフから距離を取る。


 するとワーウルフの爪が、俺がいた所の空を切っていた。


「危ねぇー。ブラックゴブリン戦の二の舞にならずに済んだぜ…」


 あの時は二回目の《瞬歩》だったから、すぐに躱すことが出来なかったってのもあるけど。


「ヴ、ヴ~…!《グルァーーーーーーーーーー》ッ!!!!!」


 ワーウルフは睨み付けてきて、さっきと同じ凄まじい咆哮を放った。

 ビリビリと空気を揺らし、身体に衝撃波が襲い掛かってくる。マジで足が竦みそうになる。


 ……なるほど。この竦みそうになる感覚が、デバフの正体か。


「ひっ!」

「ッ!?」


 そしてこの咆哮を再び受けたサソりんとワッカさんは、さらに怯えたような表情になる。

 やっぱりこれが原因だったか。


 なぜ俺にだけ効かないのかはわからないが、こんなの何回もやられたら二人はいつまで経ってもデバフを受けたままだな。

 デバフ切れは期待しない方がいいか…。


「ヴ~~~…!」


 自慢の咆哮が効かない俺に戸惑うワーウルフ。

 だがそれでも油断は出来ない。少しでも気を緩めれば、こっちがやられることには変わりない。


「ガァーーーッ!」


「ッ!?はやっ…!」


 ワーウルフは毒の苦しみに慣れてきたのか、さっきよりも速く接近して、爪を何度も振るってくる。

 俺はそれを躱し、菊一文字で応戦するが、やはり力量差があり過ぎる。少しでも菊一文字を握る力を緩めたら、手から弾かれそうだっ!


―――ん?弾かれる…?


「ガァーーーーーーッ!」


「あーもうッ!キャンキャン喚くな鬱陶しいッ!?そんなんでビビるほど、俺の精神は軟じゃないっての!」


 ぶっちゃけ強がりだ。めっちゃ怖い!一瞬でも隙を見せれば即死級の攻撃が襲ってくると思うと、気が気じゃない!あと時々飛び散ってくる毒も怖い!

 だけど怖いからって、奴に俺がビビる姿なんて見せてみろ。付け上がって更に攻撃が激しくなってもおかしくない。


 恐らく奴は俺のスキルを警戒している。だから大胆に攻めて来れないんだ。

 きっと今は決定的な隙を作ろうとしているんだ。ここで少しでも俺の恐怖の感情を表に出してはいけない。寧ろ心を強く保って強がりを見せろ!


―――俺はお前に勝つ!勝って経験値にしてやるッ!!!


 そういう想いを強く持ち、菊一文字を振るう。爪とぶつかる衝撃でビリビリと腕が震え、落っことしそうになってもとにかく振り続ける。

 互いが互いに、決定的な隙を与える為の攻防が続く。


「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」


「ガァーーーーーーーーーーッ!!!」


「ノヴァ…」


「噓だろ……あんな化け物と、互角にやり合ってる…」


 辺りには菊一文字とワーウルフの爪が激しくぶつかり合う音だけが鳴り響く。

 時間にして、一分経ったくらいかもしれない。だが俺にとっては、もっと長時間コイツと打ち合ってる感覚だ。


 しかしそんな打ち合いも、やがて終わりを迎える。とうとう腕に限界が来た俺は、ワーウルフによって菊一文字を弾き飛ばされてしまった。


「あっ!」

「ノヴァーッ!」


 二人の悲痛な声が耳に届く。ワーウルフはその隙を逃すまいと腕を大きく振り上げ、爪を振り下ろそうとしてくる。


 だがそれは、ワーウルフの大きな隙となった。


「菊一文字ーッ!」


 俺は《刀剣召喚》で菊一文字を手元に呼び戻し、即座に《瞬歩》を発動した。

 これは先ほど思い付いた戦法だ。菊一文字を弾き飛ばさせ、俺に隙が出来たと勘違いさせる。

 念には念を入れて、限界ギリギリまで耐え抜いたのが功を奏したか。作戦は無事に成功した。


 移動先は真上。俺が消えた所にワーウルフの腕が振るわれ、地面が大きな音を発てて抉られた。

 そして―――


「《天断》ッ!」


 《天断》を発動し、渾身の力を込めて斬り付けた。

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原○でティ○リを10連で引くってマジ?ニィ○ウとナ○ーダ引けるかな…。

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