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VSワーウルフ①

地球防○軍のやり過ぎで指が痛い…。

ウィング○イバー専なので、押して離して押して離しての繰り返し系の武器が辛いですわ~。

 ワーウルフ。

 コボルトの進化個体。魔物の進化についてはまだまだ謎が多く、魔力濃度の高い地域でのみ起こる現象と言われている。

 この辺りの地域は魔力濃度など高くなく、ワーウルフなどの強力な魔物が発生することはまずない。


 ……そのはずなのに…。


「サソりんの言った通り、マジでワーウルフがいたんだな…」


 しかも真っ先に俺を狙ってきたあたり、恐らくやすらぎの森で戦ったコボルトたちのリーダーだろう。

 一度見た相手の姿と匂いは決して忘れない執念深い性格をしている。魔物辞典には書いてあった。

 姿はともかく、たぶん俺の匂いを記憶していた可能性は十分にあるだろう。


 ミャアちゃんを散々追い掛けた後だから、その時の汗の匂いが森に残っていた……とかありそう…。


「グルルルルル…!」


 うん。明らか憎しみや恨みが籠った目で睨んで来てるし、あの群れのリーダーだわこりゃ…。

 犬や狼って仲間意識強いイメージあるからな。仲間殺されたら、そら仇を取りに来るよね?


「グゥッ!」


 菊一文字を構えて睨み合いを続けていると、ワーウルフは姿勢を低くしだす。


 来るっ!


「《飛翔剣》!」

「《ポイズンショット》!」


 ワーウルフが突っ込んで来るかと思われたその瞬間、俺の後ろから斬撃と紫色の毒々しい弾が飛んできた。

 それらはワーウルフに襲い掛かるが、ワーウルフはそれを素早く躱す。

 ワーウルフが避けたことで地面に当たった斬撃は深く抉る様に斬り付け、毒々しい弾は地面を溶かした。


 ……やっぱアイツ速いな。軽く避けただけなんだろうけど、それだけでも俺なんかより素早いのがよくわかる。

 父さんよりも素早さ高いんじゃないか?


「ノヴァ!大丈夫!?」


「派手にぶっ飛ばされたから、どこか怪我でもしてるかと思ったが……割と平気そうか?」


 サソりんとワッカさんが隣に来て、俺を心配してくれる。

 さっきの斬撃はワッカさんので、明らか毒っぽい弾がサソりんのスキルだったんだろう。

 てかサソりんの毒ヤバすぎね?あんなの頭に被ったら脳まで溶かして一気に体力全損じゃん。敵に回したくないタイプだ…。


「はい、ありがとうございます。俺は大丈夫です。バンさんとホノ爺は―――」


 馬車の方を見てみると、二人が来た道を戻ってる姿が目に入った。


「ああ。二人にはランデムに戻ってもらって、後続の商人や冒険者に注意喚起しつつ、応援を呼びに行ってもらった。本当はまだ冒険者でもない二人も一緒に帰したかったんだが……残念ながら、こんな化け物相手に俺一人じゃ一分も持たない…。情けない話だが、二人に協力してほしい。バンは盗賊だから、こういう奴との戦闘は不向きだしな」


 ワッカさんは苦虫を嚙み潰したような悔しい表情で言う。

 そりゃそうだろう。魔物辞典に載っていたワーウルフの強さは、Bランク相当と表記されている。

 Dランク冒険者のワッカさんだけで持ち堪えることなんて不可能だろう。


 そこで無理に盗賊のバンさんではなく、ジョブにはまだ就いていない上にレベルは低い。だが少なくともバンさんより正面からの戦闘に向いている俺とサソりんに協力を頼むというのは、良い判断だと思う。

 ホノ爺はきっと論外だろう。冒険者のワッカさんたちからしたら護衛対象だし、そんなこと頼める訳ない。それにホノ爺もいい年だ。ワーウルフを追い払うだけでも相当身体に負担を掛けてしまうだろう。

 だったらここは、分不相応でも俺とサソりんが一緒に戦うのが妥当だ。俺とサソりんは元々護衛対象じゃないし。


「……聞いても意味ないとは思いますけど、ワッカさんのレベルは?」


「27だ。ワーウルフどころか、それ以外のCランクモンスターにすらサシでやり合えるかも怪しいレベルだ」


 レベル27。ブラックゴブリンくらいになら、上手く立ち回れば勝てそうだな。

 思ったより高くて安心した。


 それだったらなんとか戦略は練られるな。


「予想してたよりお強くて安心しました。じゃあ、盾役は頼めますか?」


「おいおい。即興パーティな上に俺の方が先輩なのに、お前が指示役か?……まぁ。元より盾役(そのつもり)だったから、別にいいけどよ」


「ありがとうございます」


 俺の言葉に左手の盾を構えながら了承してくれるワッカさん。


 正直ワッカさんは冒険者としての知識はあっても、戦略を練られるタイプじゃないと思っている。短い付き合いだけど、彼は結構わかりやすい性格してるからな。たぶん正面からぶつかる直情タイプだ。

 きっとバンさんの指示で色々と動いて来たんだろう。指示受け慣れしてるっぽいし。


「ノヴァ。私は?」


「サソりんは俺とほとんど同じ役目だ。ワッカさんがワーウルフの攻撃を受け止めてくれてる間、その隙を突くんだ。主に毒。それでさらに隙を作れたら儲けもんだ」


 サソりんの毒はさっきのを見た通りかなり協力だ。

 ワーウルフはきっとそれを一番警戒する。そこで俺が《瞬歩》や《天断》を使って叩く。

 倒すことは出来なくとも、ダメージを負わせることは出来んだろ。


「わかったわ。正直あんな素早い相手を捉えれる気がしないけど、やるだけやってみるわ」


「ああ。頼んだ」


「二人とも。どうやら奴は、もう作戦会議をさせる気は無いみたいだぜ?」


 ワッカさんの言葉で、俺は改めて気を引き締める。

 ワーウルフの強さがわからない以上、奴の動きには細心の注意を払わなければならない。じゃないと一瞬で殺されるだろう。


「グルルルルルッ…!」


 さっきと同じように姿勢を低くするワーウルフ。

 そして次の瞬間―――俺のもうすぐ目の前まで迫っていた。


「はっやッ…!?」


「こんのッ!」


 俺は咄嗟に菊一文字で受け止めようと構えるが、間にワッカさんが入って爪を盾で受け止めてくれる。が―――


―――バキッ!


「……ぐぶぅッ…!?」


 受け止めたと思ったら、ワッカさんはワーウルフに大きく蹴り飛ばされていた。


「ぐわぁーーーッ!?」


「ワッカさん!?」


「ノヴァ!危ない!?」


 ワーウルフはそのまま長く鋭く伸びた爪を俺に振り下ろしてくる。


 マズい。俺じゃコイツの攻撃は受けきれな―――


「《テイルウィップ》!」


 だがそこにサソりんが尻尾を鞭のようにしならせて、ワーウルフに攻撃を仕掛ける。

 しかし当然、ワーウルフはそれを後ろに飛ぶことで躱す。


「逃がさない。《ポイズンショット》!」


 サソりんはさらに追い打ちを掛けるように、次々と毒の弾を尻尾の先から射出していく。

 ワーウルフはやはり毒を警戒しているらしく、大きく後ろに下がったり、横に飛んだりして躱している。躱された毒は、地面を溶かしていく。

 さらにはサソりんに近付こうとしても、毒が飛んで来て思うように接近出来ずに四苦八苦している様子だ。若干苛立ちの表情を浮かべている。


「いいぞサソりん!そのままワーウルフを抑えてくれ!」


「わかった!」


 ワッカさんが早々に蹴飛ばされたことで陣形が崩れたと思ったが、少なくともワッカさんが戻ってくるまでの時間は稼げるだろう。


 俺も、俺の出来ることをする。奴の動きを見て、その動きに慣れるんだ。攻撃を当てる為に。

 ワーウルフは得意の素早さで躱し続けているが、それは別に目で追えない程ではない。


(目を慣らせろ。奴の動きを捉えるんだ。いくらアイツが俺たちより数段上だからって、攻撃を当てる隙は必ずある。それに恐らく、奴は油断しているはずだ。コイツらは取るに足らない相手、ただの獲物だと)


 警戒しているのはサソりんの毒だけで、それ以外は目もくれてない。だからそこに勝機はある。

 だけど小さな隙ではダメだ。大きな、それも奴が逃げ場を失う程の隙を作らないと。そしてそこに―――《天断》を叩き込む!


「くっ!ダメ……当たらない。このままじゃ、私の魔力が付きちゃう!?」


「なにっ……ちっ。そうだよな…。魔力の問題があった」


 だが、それまでにサソりんが持ちそうにない。

 既に三十発は《ポイズンショット》を打ってる。これだけ連発してるということは、消費魔力が少ないスキルなんだろうけど、それでも限度がある。


 何か……何か良い手はないか…!?


「―――――ん?……これは…!」


 サソりんの負担を減らし、かつワーウルフを追い込む方法はないか、ふと地面に目を向けた時だった。

 サソりんの毒が当たった地面が、沼のようになっていたのが目に入った。正に毒沼だ。


―――そうだ!


 俺はさっそく思い付いた戦法を使おうと、サソりんに指示を出す。


「サソりん。お前って相手に打ち込んだ毒を抜くことって出来る?」


「え?で、出来るけど……こんな時に急になに?」


「じゃあ、あの毒は溶解液みたいだけど、あれって一瞬で皮膚を溶かしたりする?」


「……時間が経過した今なら、そんなすぐにはしないと思うけど……もしかして、捨て身で突っ込む気じゃないでしょうね?」


 ふむふむ、なるほど。《ポイズンショット》は発射されてすぐに浴びると思い切り溶かすけど、時間が経つと溶解液の効力が弱まると。

 確かに最初は地面を溶かす速度は早かったけど、すぐに溶けなくなったもんな。今でもちょっとずつ溶かしてるんだろうけど。


「そうか……よしサソりん!そのまま毒で奴を囲って閉じ込められるか?」


「え?……あ。なるほど。了解、やってみるっ!」


 サソりんはワーウルフへの《ポイズンショット》の撃ち方を変える。

 ただ無作為に当てようとするのではなく、ワーウルフを特定の位置に誘導するように《ポイズンショット》を放つ。


 いいぞ……俺の目も、段々ワーウルフの動きに慣れてきたな。それに―――


「すまん!大丈夫かっ……いっつつ…!?」


 ワッカさんが蹴られた場所、あばらを抑えながら戻って来てくれた。

 恐らく骨をやられたんだろう。万能ポーションっていう最高級のポーションじゃなきゃ、HPは回復出来ても骨折までは治らないからな。

 骨折状態だと、防御力にマイナス補正が掛かってしまうが……上手く行けば攻撃を受ける必要はなくなる。


「ワッカさん。俺が合図したら、あの《飛翔剣》ってスキルをもう一度撃ってくれますか?出来るだけ魔力を込めた、大きい奴を」


「えっ?ああ。それくらいなんてことないが…。当たるとは思えねぇぞ?」


「当てなくて良いんです。ただ、奴の身動きさえ封じられれば……」


 俺はサソりんとワーウルフの状況を見る。

 サソりんは段々苦しそうな表情になっていくが、ワーウルフも段々動ける範囲が狭まってきた。


 やがて―――


「グ?グルル…!?―――ヴ~ッ!」


「はぁ……はぁ……はぁ……。どうよ?これでもう動けないでしょ?」


 戸惑い、自分が嵌められたことに気付いたワーウルフは威嚇しながらサソりんを睨み付ける。

 ワーウルフの周りは、サソりんの《ポイズンショット》によって完全な毒沼と化していた。

 ……毒の臭いキッツ!?でも―――


(これで……行けるッ!)


「今です!」


「おうっ!くらいやがれワーウルフ!《飛翔剣》ーッ!」


 ワーウルフに向かって、先ほどとは比べ物にならないくらいドデカい斬撃が放たれる。

 周りが毒沼地獄なワーウルフは、空中へ大きくジャンプすることで躱した。


 だがそれでいい。いくらお前でも、空中じゃ身動きは取れないだろッ!


「《瞬歩》!」


 俺は10メートル先の空中へ飛ぶ。ワーウルフの上を取る為に若干斜め上に飛んだが、まぁ問題ないだろう。

 ワーウルフを見てみると、奴は大層驚いた顔で俺を見上げていた。


「毒沼に落っこちな―――《天断》ッ!」


 《天断》を発動し、一気に急降下する。

 しかしワーウルフはただそれを受けることはなく、自慢の爪で応戦してきた。


「グルルァーーーッ!」


 菊一文字とワーウルフの爪がぶつかり合い、激しく火花が散る。流石はワーウルフと言ったところだろうか。

 ブラックゴブリンだって《瞬歩》に引き摺られたのに対し、コイツは空中だというのに《瞬歩》より速度も威力も高い《天断》に押し込まれることもなく、寧ろ押し返そう拮抗していやがる。


「本当に強いな、お前…。願わくば……もっと俺が強くなってから戦いたかったよ。うおおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」


 だが拮抗したのはほんの数秒程度。俺は渾身の力を込めて、ワーウルフを毒沼に向かって弾き飛ばした。


「グルァーーーッ!?」


 そのままワーウルフは毒沼に落ちて行き、毒の水飛沫が上がった。

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