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バンさんのちょこっと冒険者講義

 どうも、ワッカさんに有り得ない量の飯を食わされた未来の後輩。ノヴァです。ただいまワッカさんを除いた三人で外にいます。うっぷす……吐きそ…。

 ていうかワッカさんも俺と同じ量を食ってた。余裕で。確かにガタイはいいけど、別に凄い筋骨隆々って感じでもないのに……筋肉以外のどこに栄養が行っているんだ?


「もう夜ご飯はいいかもしれない…」


「お疲れ様。なんだかんだ食べれたわね。もう無理って何度も言っていた割には」


「残したら俺たち人間の血肉となってくれる食材と、料理を作ってくれた人に申し訳ないからな…。それに肉と野菜を汗水垂らして育てた農家さんにも」


 これも父さんの教えだ。

 俺たち人を生かしてくれる食材、そしてそれを作ってくれる人たちへの感謝を込めて、絶対に飯を残してはならないっていう。

 でももうあの量は食いたくないよ…。


「あはははは。災難だったね、ワッカにあんなに奢られて。……あれで訓練もしっかりやればな~…」


 バンさんが笑いながら言う。おのれ他人事だと思って……貴方の相方、いずれ人を殺すぞ?食わせ過ぎの罪で。

 ちなみにワッカさんはまだ飯屋で食ってる。化け物だ…。胃袋の中は異次元で出来てるんじゃないか?


 あと、なぜ普段はそんなに食わないのか聞いたら「俺持ちの時以外は遠慮するようにしてるんだ」とのことだった。

 その常識を人に奢る時にも心掛けてくれよ、と遠い目を向けたった(丸)


「それにしてもサソりん。本当に何も食べないよな?この三日間水しか飲んでるところ見ねぇ」


「それが蠍の蟲人の特性だからね。あと一週間は何もいらない」


「はえ~。冒険者向きで羨ましいことですわ」


「ふふん」


 羨ましがられて嬉しくなったドヤ顔サソりん。

 その時が来たら食べてる所を見てみたい。あのハサミの手でどうやって食べるのか気になる。


「ところで二人とも。冒険者になるにあたって、どれくらいの知識があるのかな?」


 バンさんが俺とサソりんに聞いてくる。

 冒険者としての知識か……まぁある程度って感じだな。


「父が元Bランク冒険者なんで、父からある程度教わっています。ポーションがない状態で怪我した時に使える薬草や、食べれる野草や果物なんかが主ですね。あとは戦闘の知識とそのコツとか」


「私は戦闘に関しては問題ないですが、冒険者のことはあまりわからないです」


 戦闘面に関してはほとんどがスキル持ちに勝つ為に編み出した我流だが、それでも父さんの教えが無かったら今みたいな強さは手に入らなかっただろう。

 ブラックゴブリンの猛攻に耐えれたのも、防具で受け止める癖を付けてくれた父さんのおかげだ。

 それに今はアダマンタイトの素材で作られたガントレットとレッグガードがある。ブラックゴブリンくらいの攻撃なら耐えられるだろう。


「へぇ!Bランク!ノヴァ君のお父さんは凄いんだね。Bランクって結構なベテランだよ」


「そうですね。環境には恵まれて良かったです」


 本当、産まれた環境だけは良かった…。


「でも父は引退してから長いですし、今の冒険者のマナーやルールはわからないですね」


「そうなんだ。でもそんなに気にする必要ないよ。目上の人にはもちろん礼儀正しくしなきゃだけど、基本的に冒険者は実力主義。変に気構える必要はない」


 ふむふむ。概ね父さんから聞いてた話と同じだな。とにかく強い者が立場が上ってことか。

 でもレベルで補えない知識面では、例え万年Fランクの人とかでも経歴長い人の方が上だろうな。

 レベル=強さじゃないって父さんも言ってたし。そこを肝に銘じながら他者とコミュニケーションを取っていかないと。


 サソりんを見てみると、少し興奮した様子で頷いていた。


「どれだけ強い人がいるのか楽しみ。……ちなみに強い人が訓練してるところを観察したりするのは大丈夫なんですか?」


「本人が嫌じゃなければ良いと思うよ。まぁ高ランクの冒険者ほど気難しい人が多いし、そうそう観察なんてさせてもらえないと思うけどね」


「はい!俺も質問!」


「お?なんだいノヴァ君」


 サソりんの質問と似てるけど、俺としてはぜひやってみたいことがある。

 それが……


「高ランクの冒険者に模擬戦をお願いすることって出来ますか?」


 これだ。俺は色んな冒険者の強さ、戦い方を見て学ぶだけじゃなく、実際に戦って相手の技を盗みたいのだ。

 スキルを持たない俺がより強くなるには、そうやって学ぶのが一番良いし、向いてると思うから。


 しかしバンさんは苦笑しながら言った。


「それは余計に難しいと思うよ。自分よりランクが下の人とやってくれる人なんてそうそういないよ。Cランクの人だってそれなりに忙しいし、貴重な時間を使ってまで模擬戦を受けてくれないと思う。ワッカみたいに後輩思いの人なら付き合ってくれると思うけど…」


 うーん。難しいかぁ…。

 なるべく早くレベルとランクを上げて、俺のことを知ってもらう必要がありそうだな。

 まぁレベルはともかく、ランクはそんなに早く上がんないと思うけど。ランクを上げるには、難しい依頼を熟さなきゃいけないだろうし。


「では、冒険者協会の規則などは?」


 うんうん唸る俺を横目に、サソりんがそんな質問をする。


「冒険者の規則については、冒険者協会から無料で配布される冒険者手帳に記載されてるよ。こんな風にね」


 バンさんが自分の冒険者手帳を見せてくれる。

 五十ページくらいあるか?結構事細かに書かれてるんだな。


「まぁさっきも言ったように、そこまでマナーやルールを気にし過ぎることはないよ。ていうか僕も規則についてはあまり詳しくないし。どうしても気になるようだったら、後でこれ貸してあげるよ」


「はい。ありがとうございます」


 当たり前だけど、冒険者っていうのも社会人の一種だもんな。ある程度規則はしっかりしてるわな。

 俺強いぜ?うぇーい!なんて馬鹿なこと言ってる奴が高ランクとか嫌だし…。マナーくらいは大切にしなきゃ。


「他に何かあるかな?」


「あ。じゃあはい。ポーションとかの回復アイテムは最低何本必要ですか?」


「ポーションかー。う~ん……これは完全に個人差があるからなー。回復魔法が使える人がパーティーにいれば数を減らしたり、僕たちみたいに回復手段がポーションしかない人は多めに持ち歩いてるよ」


「なるほど…」


 ある程度わかっていたけど、やっぱり父さんと同じ答えが帰って来たか。

 父さんも「それは人による」って言ってたし。

 どうやら父さんの知識と今の冒険者の知識に、そう違いはないようだ。


「他は?」


「……今のところ、もうないですね。サソりんは?」


「私もないです。あとは冒険者になってから考えるなり、誰かに教えてもらうなりします」


「そう?わかった。何かあればいつでも聞いてね。僕の答えられることだったら、なんでも教えるよ」


 ん?今なんでもって?

 ……じゃあ模擬戦でもお願いしようかな?


「おっとノヴァ君。急に戦いの目になってどうしたのかな?言っておくけど僕は君の剣を受け止められる気しないからね?盗賊だと力が弱いから、まともに接近戦の相手は出来ないんだよ…」


「ちっ。バレたか」


「急に口悪くなるじゃん…。君ってもしかして戦闘狂?……まぁ模擬戦の相手は僕には出来ないけど、ワッカに頼めば受けてくれると思うよ」


 あー。そういえばワッカさんなら受けてくれるだろうってさっき言ってたな。

 う~ん。でも盗賊がいざっていう時にどんな戦い方するのかも気になるんだよなぁ。


「バンさん。一手、一手だけお願い出来ませんか?どうか盗賊の戦い方をご指南願いたいです!」


「いやいやいやいやいや!?その歳でジョブにも就かずに《居合》出来てるんだから、むしろこっちが指南される側だとおもうよ?」


「お願いします!どうか、どうか一手ご指南をっ!」


「あわわわわ…。ワッカ!早くご飯食べ終えて~!?」


 その後、謎にバンさんの頭の上にサブクエストが現れた。

 内容は俺との模擬戦を回避したいというものだった。

 ……なんか凄く申し訳なくなったので、諦めたよ。だって…




【サブクエスト:模擬戦を回避したい!を受領】


【サブクエスト:模擬戦を回避したい!を達成】

【500の経験値を取得。次のレベルアップまで1655】




 こんなに良い経験値を提示されるほど嫌がられたら、そりゃ諦めもつくよ…。

 あーあ。戦いたかったな~…。


「ドンマイです。バンさん」


「うん。ありがと…。僕はヤバい後輩を持つことになりそうだなってつくづく恐怖してるよ…」


 う~ん。やり過ぎたか…。反省反省、戦闘狂の血を今一度抑えることを意識せねば…。


 ……ていうか、サブクエストって俺が発端で出る場合もあるんだな。

 流石に心が痛むので、自分の言動には十分注意しようと誓った。

とか言いつつ、バンも結構やる人です。ちょっと自信が足りないだけで。


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