ワッカさんはフードファイター?
区切りよくする為、短いです
衛兵さんの事情聴取から解放された。どうもノヴァです。
すっかり昼を回ってしまったな。腹が減って仕方がない。
「それでサソりん。俺の剣技、何かしら参考になったかな?」
「そうね。私はこの手の都合上、剣を扱うことは出来ないけれど、あの時のノヴァの集中力と殺気は参考になるわ」
「殺気?そんなもん出した覚えはないが」
俺はあの時、元から強盗の手からナイフを弾くつもりだった。
ただ菊一文字の切れ味が良すぎて、綺麗に斬り飛ばしちゃったのは予想外だったけど。
刀剣っていうのは皆こうなんか?
サソりんは俺の言葉に対して顎にハサミを当てながら、考える素振りを見せる。
「……つまり無意識だったってこと?ということは、ノヴァは常に相手を殺す気で対峙するタイプ。穏やかで優しい人が多い種族って話だけど、こういう人もいるのね」
「おーいサソりん。考え事してるとこ悪いけど、まず飯にしねぇか?燃費の悪い人間様はもうご飯の時間なんだ」
彼女から見た俺は強いらしい。蟲人の本能で、ついついそんな人物を観察したり考察したくなる気持ちは、同じ戦闘狂として気持ちはわかる。
だけど腹が減れば戦いよりも食い気が勝つ。だから飯食わしてくんろ。
「わかったわ。ごめんなさい、つい癖で」
「じゃ、どっかの屋台か店で飯でも……」
そうしてどこで飯を食べようかと悩なんでいると、不意に見知った人物から声が掛かる。
「あれ?ノヴァ君にサソりんさん。君たちもお昼?」
「ん?あ。バンさん。それにワッカさんも」
「おっす!聞いたぜ?強盗を捕まえたんだってな」
声を掛けてきたのは、ホノ爺の護衛で雇われているバンさんとワッカさんだった。
もう強盗事件の噂が広まってるのか?早くね。
「どこでその話を?いくらなんでも情報が早過ぎないですか」
「やっぱりノヴァか。ここに来る途中に講談師がいてな。『さきほど自分はこの目でハッキリ見たのです!強盗の持つ鋭利な刃物を、変わった剣で真っ二つに斬り裂いた少年を!』ってな」
「講談師は剣の特徴も語っていてね。その特徴から、ノヴァ君の持つ刀と合致していたんだよ」
なるほど納得。何かしらの伝説や、本当にあった出来事を人に語って聞かせることが仕事の講談師。
いくらナイフといえども、それをあんな綺麗に斬ったらネタにせずはいられないか…。
「で、実際のところどうなんだ?講談師ってのはよく脚色とかするからよ。俺としては期待半分、疑い半分ってとこなんだが…」
「ええ。ノヴァは強盗が持っていたナイフを斬りましたよ」
ワッカさんの疑問に、その場に一緒にいたサソりんが答えてくれる。
それを聞いた彼は、まるで自分の事のように歓喜の声を上げた。
「おー!すっげぇじゃねぇかノヴァ!お前みたいな奴が後輩になるなんて、俺は嬉しいぜ~」
歓喜のあまり肩を組んでくる程である。ちょっと首締まってて痛いです…。
「ちょちょちょ、ワッカさん?なんでワッカさんがそんなに喜んで…」
「なぁ?飯まだなら、一緒に行かねぇか。未来の先輩が奢ってやる」
「えぇ?いいですよ、そんな。悪いですし」
「遠慮すんなって。ほら行こうぜ!」
ワッカさんは聞く耳を持たず、無理矢理俺の腕を引っぱっていく。
いや力強ッ!?Dランク冒険者の平均レベルって、確か20~25だっけ?流石にレベル10以上も差があると、全く抵抗出来ないんですね!?
「あはは…。ごめんねノヴァ君。ワッカはウザイくらいに後輩好きの世話焼きなんだ。大人しく奢られてあげて。サソりんさんも、お腹が空いた時にお金が無かった時は、ワッカに頼るといいよ。喜んで奢ってくれるから」
「……ああいう人って、とにかく量を食わせるイメージなんですけど…」
「えっと……あははは…」
「遠慮しておきますね。私、人間の普通の食事でも多く感じますし」
この後、俺はワッカさんにたくさん奢られた(丸)
腹きちぃ~…。ワッカさんみたいな戦士は、毎回テーブルいっぱいの料理を食って身体を作らなきゃいけないのか?
……だったらフードファイターの方が向いてるよ…。
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