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サブクエスト:行方不明の猫の捜索 達成

北海道の除雪は全身筋肉痛不可避…。

・ワーウルフ。黒い毛並をした人狼とも呼ばれる魔物。魔力濃度が高い場所でコボルトが進化するCランクモンスター。

・コボルトよりも爪が長く鋭利。顎も強靭でただの鉄であれば噛み砕く。

・Bランクモンスターに勝るとも劣らない膂力、高い素早さで狩りを行う。Bランクに該当しないのは、知能がやや低い為。

・しかし執念深い性格をしている為、一度見た相手の姿や匂いは決して忘れない。

・基本は単独で狩りをしているが、コボルトの群れを率いている個体が稀に存在する。統率力が取れたコボルトと同時に相手することになる為、この時はBモンスターとして扱う。

・もしワーウルフを狩るのであれば、相応の実力と罠などを駆使して戦うことを推奨。やむを得ず正面から戦うのであれば、リーチの長い武器や魔法を駆使して近付かせないよう立ち回ること。

・上記の通り、Bランクモンスター並みの強さである為、他のCランクモンスターと同一視は絶対にしてはならない。


・パーティの推奨レベルと編成。

 40以上の戦士二人。魔法使い一人。僧侶は最低二人、可能であれば三人推奨。

 狡猾な狼の魔物である為、高い力と素早さをフルに活かして、僧侶を先に狙うこともあるからである。


・要注意点。

 パーティでワーウルフに遭遇し、勝てないと判断した場合は耐久力のある戦士を殿にして逃げることを推奨。

 全員で逃げては、パーティが全滅するだけである。無事に逃げられた残りのパーティメンバーは速やかに冒険者協会、または衛兵や町長に知らせること。

 仲間の命を優先して、全滅してしまっては元も子もない。他の冒険者や一般市民を守る意味でも、必ずこういった行動を取ること。

 ワーウルフが引き連れたコボルトの群れに手を出した場合も、同様の手段を取ること。


―――魔物辞典・二○二○版より抜粋。


 ランデムへと戻る道すがら、魔物辞典に書いてあったことを思い出していた。

 あの場にはワーウルフがいなかったお陰で、俺とサソりんさんは2人で無事にランデムへ戻ることが出来てる。


 運が良かったなぁ。もし本当にワーウルフがあの場にいたら、俺絶対死んでるよ。

 《瞬歩》があるとはいえ、あれは連続で二回までしか出来ない。それで決めきれる程、甘い相手ではないことは確かだ。

 ブラックゴブリンですら、《瞬歩》に反応出来てたんだからな。ワーウルフなら完全に読み切れてもおかしくない。


「それにしてもありがとうございます、サソりんさん。おかげで助かっちゃいました」


「別に気にしなくていい。あと、君とは同期になるんでしょ?呼び捨てとタメ口で構わないわ」


「え?でも明らかに俺より年上じゃあ…」


「いい。『立場に年齢など無意味』。これは蟲人の礼儀なのよ。だから同期となる私には、どうか対等の人間として扱って欲しいの」


「そう?じゃあお言葉に甘えて」


 サソりんとそんな会話をしながら、俺たちの後ろを付いてくる3匹の猫を見る。

 猫好きのあの人からは、ミャアちゃんだけの捜索を頼んだ。これは明らかに外で出来た家族だね。


 これどう説明したらいいんだろうね?いや、普通になんか家族連れで出て来たって言えばいいんだろうけど。ここに関しては俺には関係ないし。


「それにしても子猫は1匹か。猫ってもっと子沢山ないイメージだったな」


「確かにね……もしかしたら、さっきのコボルトの群れに襲われてっていう…」


「十分にあり得るけど、やめとこうぜその話は。すげぇ心痛くなるから…」


 サソりんはなかなか惨いことをおっしゃりますね…。


―――――――――――――――――――――――――――


「ミャアちゃん!もう心配したんだよ~!ていうか、いつの間にこんな可愛い奥さんと子どもなんて作ってたの?」


「ナーオ」


 ランデムに到着して、サソりんと一緒にすぐ衛兵の二人にワーウルフがいるかもという話をした。

 サソりんの感覚毛という、五感の役割を担う鋏などから生えてる毛が、あの遠吠えからワーウルフのものだと判断したらしい。


 姿を確認出来てないので確証は無いが、明らかにコボルトではないことは確かである。

 後で町長からお呼び出しがあるかもしれないという話を聞いて、猫好きの人にサブクエストの報告をしに来た。

 なぜか同じ場所で右往左往してて、探す気あるのかと疑問に思った。


「ありがとう!君たちのお陰でミャアちゃんは帰ってきたし、可愛い家族も増えたしで、僕は今幸せの絶頂にいるよ!」


 うわぁ。泣きながら言ってるよこの人…。

 しかも悩む素振りを見せることなく突然連れて来られた野良猫も飼うとか、どんだけ猫が好きなんだ。


「ぜひ君たちにはお礼をしたいんだけど、持ち合わせてる物だとお金以外に渡せる物がないんだよね…」


「私はいいですよ。偶然通りかかっただけですし」


 サソりんは尻尾をぷらぷらと揺らしながら答える。

 ……もしかして、犬みたいに尻尾で感情を表している?


「そうかい?まぁ無理強いはしないよ。それで君は?お金で良ければ、今すぐ手持ちの金貨10枚全部……」


「そんなには要らない!さすがにそれは貰い過ぎになりますから!……金貨は5枚で、あとは情報だけでいいですよ?」


「いやどっちしにしろ貰い過ぎじゃない?」


 金貨5枚もあれば、ミスリルソードを2本も買えるぞ?

 それだけあれば高品質のナックルガードとレッグガードを作ってもらえるだろう。


 サソりんからツッコミが入ったが、貰えるもんは貰っておくさ。


「もちろんいいとも!でも、情報って何が欲しいんだい?君が欲しい情報なんて、僕には無いと思うけど…」


「噂話程度でいいんです。最近、近くに何か空から……例えば隕石みたいなのが降って来た、とかそういう話はなかったですか?それがなくても、これと同じように湾曲した剣の噂とか」


 俺は菊一文字を抜きながらそう言う。

 町中で全身抜く訳にはいかないので、少しだけ刀身を見せる感じで。


「隕石?剣?そんな話は聞いたこと……あ!そういえば前に、サウスさんが新作の切れ味を試そうと出かけた帰りに、目の前に剣が降って来たとか言ってたような?それこそ、隕石みたいに」


「め、目の前に!?しかもサウスのおっちゃんの!?」


 俺のナックルガードとレッグガードを作ってくれた鍛冶師のおっちゃんだ。

 きっとそれもクレーターが出来る程の勢いで落ちて来たと思うんだけど、大丈夫だったんか?


「ああ、ケガについては問題ないみたいだよ。半分が頑丈なドワーフの血のおかげで、擦り傷程度で済んだって」


「ほ…。良かった…」


「目の前に隕石のように降って来るとか、普通は死ぬわよね?ドワーフって本当に頑丈なのね」


 そんな話を聞いて、約束通り金貨5枚を貰うと同時に、サブクエスト達成のアナウンスが聞こえてきた。


【サブクエストを達成】

【30の経験値を取得。次のレベルアップまで2155】

【金貨5枚を入手】


―――――――――――――――――――――――――――


 サブクエストが無事達成して、金貨5枚も手に入った。いきなり小金持ちだ。

 ちなみに金貨は銀貨100枚分。銀貨は銅貨100枚分という計算だ。

 金貨の上には白金貨がある。こちらは金貨100枚分だ。


「ホクホクですわ~」


「ペット探しの報酬が金貨5枚だなんて、あの人は金銭感覚が狂ってるタイプのお金持ちね」


 サソりんと一緒に町中を歩く。

 なぜまだ一緒に行動してるのかというと、サソりんはまだ宿を取ってないので今日俺が泊まる予定の宿屋に案内してるのだ。

 それに目的地がなんと同じく領都ということもあるので、ホノ爺に頼めば一緒に連れて行ってくれるはずだ。


 下手したらワーウルフの餌食になってたかもしれないので、そのお礼を兼ねている。


「着いた。この宿屋だよ」


「ありがとう。無事にチェックイン出来たら今日はもう休むのだけど、ノヴァはどうするの?」


「さっき話したサウスっていうおっちゃんの所に行ってくる。俺の防具を作ってくれた人でさ。もう一度作ってもらおうかなって」


 本当は領都の鍛冶師に作ってもらおうと思ったけど、よくよく考えたらあの人しか俺のナックルガードとレッグガードを作ってくれた人はいなかったんだし、同じ人に頼む方がいいよな。

 それにサウスのおっちゃんが拾った剣って奴が、【刀剣召喚】に関わる刀だった場合、譲ってくれないか頼まないと。


 菊一文字だけでかなりの力が得られたんだ。それがあれば、俺はもっと強くなれるはずだ。


「わかった。でもそれだったら、金貨10枚貰っておいた方が良かったんじゃない?きっと高品質の装備を作ってもらえただろうし」


「いや~。猫三匹も飼うってなったら、予想以上に金掛かるだろうしな~って」


 金貨10枚は非常に惜しいが、あの人のことを考えて5枚にした。

 10枚渡そうとしてくるくらいだし、金は余ってるんだろうけど、それでも金貨10枚は貰う気にはなれんわ。

 だって万が一生活が苦しくなったら、あの猫たちまで苦しい思いをするんだからな。余分に持っておいて越したことはないだろう。


「ふーん。結構優しいのね、君。普通は遠慮なく貰うものなのに」


「他人の幸せを考えるのも、一流冒険者には必須だって父さんから教えられてたからね。俺が相当苦しい生活を送ってない限りは、少しは遠慮しないとね」


「金貨5枚で遠慮?」


 そんな会話をしてからサソりんと一旦別れて、ホノ爺も戻ってきてないので俺はサウスのおっちゃんの所へと向かった。

 もちろんオレンジ色の矢印を探しながら。

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