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冒険の始まり

 《天断》の検証後、菊一文字則宗についても調べた。……これだと長いから菊一文字と呼ぶか。


 菊一文字はどうやら、俺以外が使っても全くその攻撃力、そして攻撃速度上昇効果は発揮しないようだ。

 試しにアイクに菊一文字で巻藁を斬ってもらったのだが……


 バシバシッ!バシバシッ!


「……アイク?刃が付いてない方でやってる訳じゃないよな?」


 全く巻藁が斬れる様子が無かった。ただ鉄の棒で叩いてるだけにしか見えない。


「見ればわかるだろ。これ全然斬れねぇぞ?本当にこれでブラックゴブリンを真っ二つにしたなのか?ただ頑丈なだけな気がするんだが…」


「ふむふむ。もしかして…」


 そして今度は俺が巻藁を斬り付けたら……


 シュパッ!


 という風を斬るような音がした後、遅れて巻藁が斜めにずり落ちていった。俺が使ってら何の問題も無いようだ。

 これは恐らく、菊一文字は【刀剣召喚】というスキルの一部の為、俺以外が使ってもただの鉄の棒でしかなくなると予想。

 パーティの誰かが武器を失っても、集めた刀剣を貸し与えるって事は出来なさそうだ。残念。冒険者をやる上では、パーティを組むこともあるだろうから貸せたら強かったんだがな…。


 まぁ流石にそこまで都合の良いスキルなんてある訳ないか。


 次に菊一文字が手元に無くても《瞬歩》が行えるか検証してみた。

 結果は駄目だった。ちゃんと装備していないと《瞬歩》、いや刀剣に宿っている【神託スキル】は発動しないと見て良さそうだ。

 菊一文字をぶん投げた先に移動出来たら不意を付きやすいんだけど……くそ、俺の思い付いた戦法が悉く不可能とは…。


 二回連続で《瞬歩》を使えば相手の後ろは取れるけど、出来れば一度で後ろを取って、二回目は温存しておきたい。

 なお、二回目の《瞬歩》は一秒以内じゃないと発動しない模様。


 あと召喚する時だが、俺が必要ないと感じたら鞘無しで召喚出来るらしい。

 召喚しっぱなしにしないで、いきなり出した方が敵の不意を突きやすくて良いかもしれない。


 ……でも帯剣してない冒険者って、周りから舐められて色々と絡まれそうだし、やっぱり常に出しておく方が良いか…。

 街中で揉め事起こすと、衛兵に捕まってしまうらしいからな。戦闘狂の血は抑えとかなければ。


―――――――――――――――――――――――――――


 そんな検証を終えた翌日、予定通り行商人のお爺さんが来た。白くて立派なお髭がよく似合う、のんびりとした人だ。名前はホノという。

 その護衛に冒険者が二人付いている。どちらもDランク冒険者だそうだ。


「ほっほっほ。あのノヴァ君がとうとう冒険者になるのか。こりゃ楽しみじゃな」


「今回はよろしく、ホノ爺」


 ホノ爺に軽く挨拶して、後ろを振り返る。

 父さんと母さん、それに最後まで俺との試合に付き合ってくれたアイクたちがいた。

 その後ろには村の人たちもおり、総出で送り出そうとしてくれていた。

 ホノ爺はしばらく村の奥様方と値切り勝負するから、その間に挨拶を済ませねば。


 うちの村ではいつもこんな感じだ。村を出る者がいれば総出で送り出すのが、いつの間にか恒例行事になっていたそうだ。


「寂しくなったら、いつでも帰って来るのよ?」


 母さんが俺の手を握りながら、涙目で言う。

 結局母さんは気持ち的にはずっと反対だったが、こうして送り出してくれるだけありがたい。次は笑って送り出せるように、帰って来た時には立派な冒険者になっとかないとな。


「ノヴァ!僕たちも次会う時には強くなってるからね!ねぇ皆っ!」


「当然よ。負けっぱなしじゃいらねないわ!結局一本もノヴァから取れてないからね。勝ち逃げは許さないわよ?」


 テツとアリスの負けず嫌いコンビが口々にそう言う。

 この四人はテツが成人したらパーティを組んで冒険者になるらしい。俺もその中に入れたかったらしいが、生憎テツが成人するまでなんて待っていられない。

 俺はあっちでソロ、もしくは気の合う仲間が出来たらパーティを組むことにする。今のところはソロの予定だが。


「アイク。皆を頼んだぞ?」


「おう。任せておけ。最年長として、しっかり引っ張って行くさ」


「エリスも頼むぞ。なんだかんだ言って、お前も結構しっかりしてるからな」


「うん!まっかせて!……あと、ノヴァ君。一つだけお願いがあるんだけど、良い?」


「ん?なんだ改まって」


 エリスが俺にお願いがあると言う。

 エリスは妙に畏まった態度近付いてきて、頬を赤く染めて耳元で囁くようにして言った。


「もし再会した時、私が見惚れちゃうくらいカッコ良くなってたら……私のハジメテ、あげるね♪」


「ッ!?」


 俺はエリスの発言に戸惑い、思わず後退る。

 するとエリスは、クスクスと悪い笑みを浮かべていた。

 ……………あ。これ揶揄われたな…。


「久し振りに動揺してくれたね、ノヴァ君?」


「……はぁ…。やっぱお前が一番怖いわ…」


「……………でも、噓じゃないからね?」


 俺は溜息を吐きながら、まだ揶揄うかとエリスを見るが妖麗に微笑んでるその表情は、いつもと違い真剣そのものだった。

 ……こいつ本当に13歳か?雰囲気が凄いエッチだぞ…。


「さっきからアンタら何話してるの?」


「高ランクの冒険者になったら、私とお姉ちゃんを娶ってねって言ったの♪」


「はぁ!?ちょ、だからそんなことを私まで巻き込むなっての!?ていうか貴族じゃあるまいし、そんなこと出来る訳ないでしょ!」


「? 結局何の話してたんだ?」


「聞かないでくれアイク…。俺たちにはまだ早い……はずだ…」


 そんな話をしていると、奥様方相手に商売していたホノ爺から声が掛かった。


「ノヴァ君。皆の買い物が終わったから、そろそろ行くぞ」


「ああ。わかったよ」


 どうやら値切り勝負は終わったようだ。とうとう村を出る時間になってしまった。

 エリスの話は……一旦保留にさせてもらおう。さすがに未成年を性の対象にするのはマズいって…。


「ノヴァ」


 父さんが前に出て来る。そういえば、ずっとオレンジ色の矢印が出たままだった…。いつか枝をいっぱい集めて帰ってこよう。

 父さん以外に矢印が出てる人がいないか確認したけど、いなかったぜ。残念。


 そんな父さんだが、一振りの剣とポーチのような革袋を渡してきた。


「え。これって、アイアンソード?」


「そうだ。依頼達成おめでとう、ノヴァ」


 父さんがそう言うと、頭上のオレンジ色の矢印が光の粒子となって消えた。すると……


【サブクエストを達成】

【50の経験値を取得。次のレベルアップまで91】

【アイアンソードを入手】

【アイテムポーチ《1000キロ》を入手】


 そんな声が頭に響く。

 は?いやちょっと待って!?


「俺、ちゃんと枝を集められてないよ!?貰っても良いの?しかもアイテムポーチまで…」


 アイテムポーチは、決められた重さまでならいくらでも収納できてしまう優れものだ。しかも1000キロ分とか、かなり容量が大きい。


 父さんは笑顔で頷いた。


「ああ。元々アイアンソードは渡すつもりだったんだ。その刀とかいうのがあるなら要らないかと思ったが、一応予備として持っとけ。それにブラックゴブリンを倒したんだ。俺のお下がりで悪いが、特別報酬としてアイテムポーチも付けた。中には例のゴブリン共の素材を入れてある」


「な、なんか悪い気がしてくるな…」


「なぁに気にするな。これでお前が立派な冒険者……そうだな、Aランクにでもなってくれたら嬉しい」


「Aランク…」


「ああ。今のお前なら、それも不可能じゃないはずだ。俺が遂に成しえなかったことを、お前がやってくれることを期待している」


 父さんからの激励を貰い、俺は無言で頷く。

 思えば、父さんには冒険者のノウハウを教えてもらいっぱなしだったな。いつかこの恩を返したい。

 母さんにも、これ以上心配をかけさせないように強くなって、その内精一杯の親孝行をしよう。


「おーい。ノヴァや」


「ごめーん!今行くっ!―――それじゃあ…」


「ああ。行って来い。お前の名前を、領都の連中に知らしめてやれ!」


「……うん!いってきますっ!」


「「「いってらっしゃーいっ!」」」


 こうして俺は村の皆に見送られながら、故郷を旅立った。

次に訪れる町から、あらすじ通りサブクエに集中するあまりサブクエが本編現象に入ります。

……まぁ最初なので、ノヴァはまだ冒険者になってもいないし、RPGっぽく二つか三つくらいの予定です。

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