スキル検証
矛盾点などあれば教えてください。修正します。
翌朝。俺は自室のベッドの上で目を覚ました。
昨日の黒いゴブリンを倒した後、残りのゴブリンが一斉に襲い掛かって来た時はマジで死ぬかと思った。
《瞬歩》による高速移動が無ければ危なかった。クールタイムが短くてマジ助かった。
斬っては距離を取って、斬っては距離を取っての繰り返しだったからな。ヒット&アウェイって大事…。
「お願い…。もう二度と、剣を握らないで…」
と、朝食の前に母さんには散々泣かれた。元々スキル持ちではない……今はもう“なかった”が正しいか。
そんな俺が冒険者になることに反対だった母さんに戦わないでと言われたが、俺はあんな危険な目にあっても冒険者になることをやめるつもりはなかった。
だってせっかくスキルを貰った?でいいのかな。
菊一文字則宗を抜いて急に使えるようになったこのスキルがあれば、俺は念願のSランク冒険者になれるはずだ。
なので母さんには悪いけど、何がなんでも村を出て冒険者になると言った。大泣きされたが、父さんの説得もあって最後には了承してくれた。
父さんと母さんには、昨日起こったことは【真の勇者の器】のこと以外は全部伝えた。なんか謎の声から聞いたことを考えると、凄く面倒な予感がするし…。
称号【真の勇者の器】
【神に勇者として認められた者に送られる称号】
【実は【勇者の器】は勇者と認められておらず、神からの審査途中であり【勇者の器】を持つ者は複数人存在する】
【その中で“絶対に諦めない心を持っている”者だけが神に選ばれ、この称号を得る】
【自分のステータスや次のレベルアップまでに必要な経験値がわかる】
【サブクエストが視界に表示されるようになり、それを達成すると経験値を得られるようになる】
【勇者だけが持つユニークスキルを進化させる】
絶対この事は言わねぇ…。いつ【勇者の器】になったのか知らねぇけど、俺が勇者とか何それ絶対嫌だ!三年前に村を訪れた勇者(仮)さんに全てお任せします!
私は優雅に冒険者ライフを堪能させていただきますわ!
俺から聞いたことを父さんは村長に伝えて、しばらくは裏山に行かないように村の皆にも伝えた。冒険者ギルドにゴブリン以外に異変が無いか調査を依頼するそうだ。
俺が明日に領都へ向かうので、俺が村を代表して依頼を出す形になった。冒険者登録する時に一緒に出そう。
俺が倒したブラックゴブリンは、父さんの話ではCランクの魔物らしく、本来ならレベル30はないと倒せない奴だったらしい。
「これを見た時はまさかと思ったが、ブラックゴブリンが発生していたとはな。ゴブリンたちのドロップアイテムは、当然だが討伐したノヴァが持って行くと良い。黒い棍棒は冒険者ギルドで換金すれば良い金になるし、ブラックゴブリンを倒したっつう実績も付く。実績があれば、その分良い依頼が回ってくるようになって食いっぱぐれることも無くなるぞ」
と言うので、有難く持って行くことにする。
領都で新しいナックルガードとレッグガードを作ってもらわないといけないし、丁度良かった。
隣町の鍛冶屋より良い店はあるだろうから、今から行く楽しみが増えた。
とまぁそんなこともありつつ、俺はアイクとテツ、それにアリスとエリスと一緒に広場にいた。
皆にはスキルを検証する為にいつものように試合を頼んだ。
遠巻きに父さんと母さん含め、村のほとんどの人が見ているが気にしないでおこう。
「ノヴァがスキルをゲットしたなんて信じられないわねぇ…」
「でも実際、Cランクの魔物を倒したんだろ?」
アリスとアイクがそんな会話をする。
さすが小さなホムラ村、話が広まるのが早い。俺はまだ「スキルが手に入ったから検証に付き合って」と言っただけなんだがな。
村の皆が見ているのはそういうことか…。
「さてと……皆、準備は良いか?」
「大丈夫だけど……ノヴァ君、剣持ってないけどぉ?」
「ああ。それも含めて俺のスキルだから、問題ない」
エリスに答えたあと、俺は【刀剣召喚】で菊一文字則宗を召喚する。
俺の手元が一瞬だけ光り、光が収まると同時に一振りの剣が、昨日は無かったはずの鞘に収まった状態で現れた。
鞘に関しては俺も驚いた。裏山のどこにもそれっぽい物は無かったぞ?シンプルな茶色の鞘だけど、凄い高級そうな光沢してるんですが…。
(こんな形の剣に合う鞘も無いし、抜き身のまま自室に置きっぱなしだったはずなんだけどな…。まぁ大体察しがつくけど、これも要検証だな)
「「えええええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」
「ちょちょちょ、ちょっと!今どこから出したの?その剣」
「光ったと思ったら、急にノヴァ君の手元に現れた感じがしたけどぉ…?」
男子二人とアリスはお手本のような驚き方をして、エリスも驚きながらも落ち着いて分析していた。
そうだろうそうだろう。俺も初めてこれやった時は内心結構ビックリしてたからな。黒いゴブリンとの戦いでのぶっつけ本番だったけど…。
「これが俺のスキル【刀剣召喚】だ。もう一つ一緒に手に入れたスキルもあるけど、それは試合中に見せるよ」
俺は剣を腰に吊るして違和感が無いことを確認したあと、素早く鞘から抜いた。
「……よしっ。さぁ、やろうぜっ!」
俺は瞳をキラキラさせながら構えると、皆もそれぞれの武器を構える。
と言っても、アリスとエリスはまだ杖を持っていないから、武器持ちはアイクとテツだけなんだが。
「本当に木剣じゃなくて良いんだな?」
「ああ。じゃないと意味が無いからな」
「……わかった。行くぜノヴァっ!」
「うおおおぉぉぉぉぉッ!」
そう言ってアイクは前に出てきて、テツがその後ろから雄叫びを上げながら続く。うるせぇ…。
アイクが全力で俺に剣を斬りかかってくる。
全然動く気配の無い俺にアイクは訝しげだが、構わず振り下ろす。
俺は寸前まで引き寄せて、後ろ5メートルを指定して《瞬歩》で移動した。
「「「えぇっ!?」」」
アイクたち四人だけでなく、村の皆して驚きの声を上げる。
俺の素早さ×2キロってどれくらい早いのかわからないが、少なくとも父さん以外は俺の動きが全く見えていないと思う。
「え?え……えぇ!?ちょ、僕いつの間にか気絶させられた後だったりしない?ノヴァがワープしたように見えたんだけど!?」
「安心しなさいテツ…。たぶん皆、あんたと同じように見えたわ」
「これは……全く油断できないね、お姉ちゃん」
「どうりで直前まで避ける素振りを見せなかった訳だ…。皆気を付けろ!今のでわかったと思うが、ノヴァは昨日の何倍も強いぞっ!」
「「「うん!」」」
普段やんわりとした雰囲気が崩れることのないエリスも含め、皆が気を引き締めて俺を見据える。
「うーん…。これ絶対《瞬歩》にただ引っ張られてるだけだよな~…」
そして俺は、スキルを分析しつつアイクたちとの試合に臨んだ。
バレンタインのお返しにバウムクーヘンを送ったら笑われた。
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