ダイニングルーム
だいたい三分ぐらいの声劇用の台本です。
二次創作要素がなかったのでこちらにも投稿します。
姉「部屋の電気くらいつけたら?」
妹「お父さんとお母さん、もういないんだよね……」
姉「そうだね」
妹「私とお姉ちゃんの二人だけになっちゃったね……」
姉「そうだね」
妹「なんかさ」
姉「うん」
妹「この机、四人だと狭かったけどさ。なんかもう、無駄に広くなっちゃった」
姉「そうだね」
妹「もうさ、ご飯をこぼして、怒られることもなくなっちゃったね。怒る人、居なくなっちゃった」
姉「そうだね。……あのさ、抱きしめてもいい?」
妹「なに急に。やめてよ気持ち悪い。そんな急に……もう、ひっつかないでよ」
姉「あんたも大きくなったね。あんたが生まれて、私がお姉ちゃんになったとき、初めてあんたを抱いたとき。すぐに壊れてしまいそうで、でも自分がこの子のお姉ちゃんになるんだっていう気持ちもあって、すごくどきどきしたなあって。思い出しちゃった」
妹「なにそれ。あんまりさ、昔の思い出話とか、そういうのやめてよ。思い出しちゃう……じゃない」
姉「あんたさ、お父さんとお母さんが死んでから、お葬式の間とかも。一度も泣いてなかったよね」
妹「実感がないんだよ。だって、普通に話してたじゃん。普通にけんかしてたじゃん。普通に……笑ってたじゃん」
姉「そっか」
妹「お姉ちゃんこそさ。泣いてないじゃん。私、お姉ちゃんが泣いてるの見てないよ」
姉「妹が泣いてないのに、わんわん泣くお姉ちゃんなんて、頼れないじゃない?」
妹「別に、そんなこと関係ないと思うけど」
姉「私はね、一人の時に泣いてたよ」
妹「なんでそんなこそこそしてるの」
姉「だって。これからあんたと二人で生きていくんだもの。おねえちゃんがしゃんとしてなきゃ、あんただって不安になるでしょ」
妹「別に今更。お姉ちゃん元から結構抜けてたじゃん。そのくらいで変わんないよ」
姉「そうなのかも知れないね。これは私の気持ちの問題、なのかな。覚悟っていうとちょっとかっこつけちゃってるかな」
妹「そ……。お姉ちゃんさ、なんだかんだで優しすぎるとこあるから、あんまり思い詰めないでよね」
姉「早速心配されちゃった。そういうあんたこそ、考えすぎるところがあるんだから、気をつけなよ」
妹「ん……。わかった。……あのさ」
姉「なに?」
妹「こうやって抱きつかれてるとさ、人間って温かいんだなって」
姉「そうね。私は生きていて、今あんたの側にいるからね」
妹「お姉ちゃんはさ、居なくならないよね?」
姉「当然。おばあちゃんになるまであんたを離さないよ」
妹「はは……そっか。……あ、やべ」
姉「どうしたの?」
妹「なんかさ、なんだろ。なんていうか、急に胸の奥が温かくなっちゃってさ。ちょっと、涙でてきちゃった」
姉「そう」
妹「ごめん。もうちょっとこのままで良いかな。泣き顔見られたくないや」
姉「うん。いいよ」