プロローグ
本作は『ミコミがあるわね! ~黄銅貨5枚の謎~』(https://ncode.syosetu.com/n6423fc/)の重大なネタバレを含んでいます。もし本作をお読みになる際は、ぜひ、そちらからお読みいただけるよう、お願いいたします。
作者より
12月14日(金)
今日は御衣子さんに良いことを聞いた。僕が目下抱えている問題――ある意味、原稿の締め切りよりも厄介な問題を解消するアイデアかもしれない。
「日記を書いたらどうでしょう」
夜、コンビニで、彼女はそう助言してくれたのだ。それはいい。帰ったら早速始めよう。探偵の物語を書き記すワトソン役の僕には、おあつらえ向きの方法ではないか。
その時は、そう思っただけだった。
こうして今、僕は大学ノートにこの文章を書いている。書きながら、いまさらにして当たり前のような疑問が湧いてきた。御衣子さんのあの言葉。やけに唐突ではなかったか。
僕が何も言わないうちに、彼女はあの言葉を発したのだ。
ちょっと信じられないような勘の鋭さだけど、彼女が唐突に真理を突くことを口走るのは珍しくない。我らが名探偵はそういう人だ。それにいくら僕が考えたところで、彼女のように答えを導き出すことができるとも思えない。
明日の出張に備えて、早く寝ることにする。