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突然の挨拶

 アヤは帰宅すると陽子が鼻歌を口ずさみながら料理をしているのを見た。アヤは、顔をしかめてキッチンの横を通るときに陽子と顔が合わないように気にして二階にいく階段を駆け上がってドアを開けて鍵を閉めた。

 今夜学校の友達との食事を約束していた。いつも食事を奢ったり奢られたりしている気のしれた仲間で、陽子が来てから親しくなったが男子もいれば女子もいる広くて浅い付き合いだ。今夜も、陽子がいるから仕方がなく着替えることにした。髪の毛をアップにして、メイクを簡単にしてキャラメル色の服を着て出かけようと階段を下りるとカレーの匂いがした。


「アーヤー、今日も遊びに行くの? 帰ってこなくても良いからねー」


 という言葉を聞いて、フンとそっぽを向いて玄関のドアを開けると、目の前に人がいる事に気がついてびっくりした。


「アヤさん? アヤさんだよね。僕、雅洋。結婚式にアヤさん来なかったから分からないかな、僕、陽子姉さんの弟の雅洋といいます。よろしく」


 といった言葉を聞いて、アヤは驚いた。陽子とはまるきり違うイメージの男性だったから。


「え、アヤだけれど、よろしくと言うか、何しに来たの? 引っ越しに来るのはまだだよね?」


 アヤは、混乱して言った。


「ちょっと、事情が……。想定外な事があって、その……。」

「雅洋じゃないの。どうしたの? こんな時間に?」

「姉さん」

「中に入って。アヤは、友達と遊びに行くんだろ、さっさと行けば」


 と言って雅洋の事を中に入れてドアを閉めようとした。


「待って、私も話聞く!」


 誘いを1回や2回断っても文句を言わない友人だから、アヤは友達の1人に今夜は遊べないことを話して、陽子と陽子の弟の話を聞こうとしていたが、陽子は邪魔者扱いで、不機嫌そうにアヤを見る目に陽子の事を殺したいと思った。


「姉さん、これ姉さんの好きなパンプキンパイとチョコレート」


 と言って陽子に渡した。雅洋を椅子に座らせると、


「嬉しい。このチョコレート高いのよね。雅洋ありがとう。パンプキンパイ食べましょう、今、お茶入れるね。ミルクティーで良いかしら」

「姉さん、ありがとう」


 と言って、雅洋の隣に座ろうとしたアヤに、すばやく、


「アヤは、こっち」


 と言って、アヤをソファの方に座らせた。そして、陽子は、


「今夜は、泊まって行ってくれるんでしょう」

「最終の電車で帰ろうと思ったのだけれど、泊まっていってもいいの?」


 というので、アヤは、絶対に泊まる気でこの時間に来たんだなと心の中で思った。

 陽子は、パンプキンパイを半分に切るって紅茶と一緒に雅洋の前に置いた。陽子はアヤの顔を見ずに、


「アヤにはないからね」

「良いですわよ。私はダイエットしているから、気にしなくて結構です」


 と言い返した。


「アヤさん、僕の分食べて良いですからね」

 

 雅洋が言うと、


「別に私に気を使わなくて良いから。でも、陽子にはすごーく気を使って欲しいけれど」


 と言うと、陽子が、


「陽子と呼びすてするな! あんたの分は夕食作っていないからね。今からでも友達の所に行きなさいよ!」

「姉さん、アヤさんにそんな言い方をしなくても……。姉さん、アヤさんと仲良くしていないんだね」

「そうよ、あんたの姉は意地悪で嫌な女よ」

「アヤ、雅洋に気安く話しかけないでよ。バカ!」


 アヤが、夕食を自分で作ろうとキッチンの冷蔵庫を開けて、生姜焼き用の肉を取り出すのを見た陽子は、


「それは、駄目! 明日、使うから」


 と言って、陽子は肉をアヤから取り返すと冷蔵庫の中に入れてドアを閉めた。


「何で貴方が決めるの? どうして? 何の権限があって貴方が決めるの?」


 アヤは怒鳴った。陽子は、言い聞かせるように、


「アヤはもう高校生でしょう! 自分でバイトして自分で買いなさい。そして、買ってきたものにイニシャルでも書いて入れておきなさい」


 そ言うと、陽子はにんまりと笑った。


「ここはもう貴方だけの家じゃないのよ」


 と陽子が言うとアヤは悔し涙が出たのを素早く拭った。

 その時、玄関からガチャりと言う音が聞こえて、


「ただいまー」


 と言う宏の声が聞こえた。

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