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継母

 2003年、今日も太刀川家では幸せな日々を送っている。

 宏はかわいい娘のアヤに甘く、厳しい態度で接しているが本当に優しい父親だった。陽子という継母が来るまでは。父親の宏が勝手に結婚してしまったことにアヤは怒りを感じていた。アヤは高校2年で17歳。結婚した継母の陽子は23歳で年があまり離れていないと言う事で、嫉妬心が強く敵視していた。

 アヤはスラリとした体型で痩せ型だ。手足も細く長いが身長が150センチと低かった。そして胸がないことを気にしていた。顔は亡くなった母親に似て可愛らしい顔をしていた。

 陽子の身長175センチで出るところは出て引き締まったウエストに胸が大きいということがアヤには羨ましく感じた。セクシーな低い声に大人びた顔がアヤとは違っていた。

 父親の宏は、45歳で銀行員をしている。趣味で子供の頃から格闘技をしていたこともあり今でも週末はジムに通って体を鍛えている。

 陽子はスナックで働いていて父親が仕事帰りによく寄っていたスナックで陽子を好きになった宏は陽子にしぶとくプレゼント攻撃とプロポーズを繰り返してやっと、承諾してもらったことを父親の宏がアヤに話したことがあった。アヤは結婚することに反対だった。だから、結婚式のときにも出席しなかった。

 アヤは、継母の陽子と暮らしているうちに言葉使いが荒くなった。

 陽子と父親の宏が結婚する前まではアヤが生活のすべてをしていた。金銭も管理していたのはアヤだった。家計簿をつけながら料理をして買い物を毎日学校の帰りにしていたが、今は父親の稼いできた金は陽子が握るようになった。

 若い陽子が親子ほど歳が離れている宏と結婚したことをアヤは不思議に思った。結婚するなんて信じられない。


「決まっているじゃないの。逞しくて渋いからよ。それに硬い職業ですもの銀行員は。後はどのくらい愛してくれたかよね、宏さん」


 と、にんまり朝ごはんを食べている宏に笑顔で聞いた。


「そりゃ、愛しているよ。料理も上手だし。世界一愛しているよ」


 と結婚して3ヶ月の2人は、ラブラブぶりをアヤに見せつける。アヤは嫉妬して、


「パパ! パパは私のパパなの! 私とパパは17年間も二人きりで幸せに暮らしてきたのに。私を抱えて大変だったんでしょ。ママが私を産んだために死んじゃったんだから。アヤに対する愛情のほうが深いに決まっているじゃない! パパ、世界一愛しているのは娘の私よね」


 と、嫉妬の炎がメラメラ燃えている。陽子と目があうと火花が散った。


「宏さん、仕事に遅れるわよ。こんな小生意気な小娘ほっといて早くしないと遅刻よ」


 と言われ、宏は時計を見て慌ててカバンを持ち家をでるときに、行ってらっしゃいのチュウをした。


「行ってらっしゃい。お仕事頑張ってね」


 と、手をぶんぶん振って、宏がいなくなると途端に陽子の態度が変わる。


「アヤ、学校に行くつもりある? わざと遅刻してるんでしょう。分かってんのよ。もう馬鹿なんだから、せめて早く行けっての。だいたい、17歳にもなって成長止まってんじゃないの。それだけ食べても、ペチャパイなんだから」


 と言いたい放題言われた挙げ句、ケラケラとせせ笑われた。むかっときたアヤは、


「あんたなんて、追い出してやるから!」


 と悔しくて怒鳴った。


「ああ、そうだ。今日は、カルボナーラ食べたい。それに、サラダとかぼちゃのスープ食べたい。宏さんが言っていたわよ、アヤはりょーりが得意だって自慢していた。今夜作るのよ、わかった」


 と言ってニヤニヤしている。


「なんで私があんたの言うことを聞かなければいけないのよ。あたしはメイドじゃないんだって。絶対にわたしは、あんたのために作らないからね」

「アヤが邪魔なのよ。早く出ていきなさいよ! あたしは宏さんと結婚したの。あんたの食事や、洗濯物なんてやりたくないのよ」


 と陽子は、アヤの母親になるつもりは全くない。


「な、な、何を言っているのよ、割り込んできたのはあんたでしょう」

「私は、宏さんにどうしても結婚してほしいと言われて結婚したのよ」


 アヤは、いつまで言っても仲良くなれないと判断し、さっさと学校に行くことにした。


「あら、学校に行く気あったの。掃除してもらおうと思ったのに」


 と言われた瞬間、


「今まで私がやってきたけれど、結婚して妻になったのだから少しはお前がやれ」


 と、つい口が悪くなってしまう。宏が陽子と結婚してからアヤの言葉使いは悪くなっていく一方。


「母親にむかってその口の聞き方はなに?」


 と、あくまで折れない態度に、ものすごーく頭にきた。


「あのね、あんたは私に愛情のかけらも何もない赤の他人でしょう、どうやって仲良くしろって? 口の聞き方だってあんたと話していると悪くなりますよ」


 ときっぱり言った。


「ママの言うこと聞きなさい。そして、専業主婦の手伝いをしなさい。娘になったのだからそれぐらいしなさい」


(おもしろがって言っているように聞こえるし、私の母親は私が産まれたときに死んでしまった可愛そうなママ一人だけだから。こんな傲慢な女絶対にママなんて呼ばないから。それに、ママなんて本当は呼ばれたくないだろう。本当に面白がって言っているだけだ)


 まだ、パジャマ姿のアヤに、


「学校行くなら、さっさと着替えて行きなさいよ」


 と、陽子がアヤを邪魔に思い怒鳴る。アヤは、陽子との戦いに我を忘れて口喧嘩をしていたことに気がついた。憎まれ口を言い合う二人は敵対心がますます強くなった。

 アヤは、二階の自分の部屋に入り、イライラしながら制服に着替え、学校にむかった。

 その後に起きたことは、アヤにも宏にも想像がつかないことだった。

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