ゆりんぐで
ハローご機嫌いかがうるわっしゅー?
この間はブックカフェを訪ねたけれど「ゆりりトラン」は、なにもお昼のお店だけじゃない。
「夜のお店」も、あるのよ。
「お先に失礼しまーす」
はぁ……。あのハゲ専務の無茶ぶりには、いつも困らせられるわね。
今日はスカッと一杯引っかけたいものだわ。
◆
「いらっしゃいませ。会員証の提示を」
「ええ」
「……確かに。ご指名は、いかがいたしますか?」
「そうね……。『ユウ』さんは空いてる?」
「かしこまりました。それでは、奥へどうぞ」
仕事で疲れた私が今晩やって来たのは、夜のネオン街の一等地に建つ高層ビルの四十階のワンフロア全てが店舗になっている、女性会員限定のキャバクラ『リング』。
受付を抜けてカーテンを越えると、キラキラした衣装に身を包んだキャバ嬢……オホン、女の子達が、私のような女の子に飢えたたくさんの客を接待していた。
「ふう……」
「……いらっしゃいませ。……久しぶり……だな」
私が真っ赤な革製のソファーに腰掛けてくつろいでいると、指名した女の子……ユウさんがお酒のグラスを持ってやってきた。
「そうね、一ヶ月ぶりくらいかしら。ごめんなさいね、ユウさん。最近、会議が多くて、こっちに来られなかったのよ」
「……そうだったのか」
「ユウさんは、元気にしてた? フウちゃんも」
「……私達は、相変わらずd……」
ユウさんがそう言いかけた時、ここから少し離れた席の方からガラスの割れる音が響いてきた。そしてその直後には、このお店のナンバーワンホステス「シーナ」ちゃんの声が。
『……あー、胸のところ結構汚れちまってるなー。これは汚れ落としていかねーと。ほら、こっち。…………フウは、スミコにかたづけ手伝ってもらえ』
そう言って、シーナちゃんは服の汚れてしまった客を奥の個室へと連れていった。……でも、私は見逃さなかったわよ。シーナちゃんがその客の服を拭いているときに、さりげなく耳元でなにかを囁いていたのは。たぶん「……この子とよりも、私ともっと楽しいコト、しませんか……?」とか言ったのだろうけど。……というか、前に私の相手をしてもらったときにもそんな風に誘われたし。あのときは恥ずかしくて断っちゃったけど。
「……ホントに、相変わらずみたいね」
「……悪い」
「ユウさんが謝る必要なんてないわ。あれも、フウちゃんの魅力なんだから。ドジっ子(?)メイドみたいなものよ」
……まあ、一応ここは風俗店だし、日常的に店員と客がアレやコレやもする。というか実際そのための部屋もある。……私は、その部屋に行ったことはないけれど。
いつか、私に勇気が出たら、行くことにしよう。