【7】
ブックマーク、評価ありがとうございます。
書く気が、めっちゃ湧いてきます!!
引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです(*'ω'*)
その体表を覆う鱗は鋼のように固く。
しなやかな四肢を一度動かせば影を置き去りにし。
魔素を操り自らの意思で魔法を行使する。
気高く、勇猛にして優艶。
人と伴に生きる事を選んだ竜種『地竜』。これこそがオカド村の特産品であり、この村が幾重にも渡る襲撃に膝を折ることが無かった理由の一つでもある。
あの話し合いの後、「やる事がある」と村を出たノアとリュカを除いたエマ一行は、ライリーが地竜を育てている村の農場地区の一画まで来ていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」と奇声を発し、一頭の真っ赤な地竜を乗りこなそうとキアラがその背にしがみ付いている。
それを遠目に眺めているハンスとサクラのもとにシルヴァが近付いていった。
「ハンス様、サクラ様、この度はわたくしの我儘にお付き合い下さり、ありがとうございました」
「なに、ちょいとやり過ぎて怪我させちまったお返しに一緒に話を聞いただけだ。後の事はその場の流れ。お前の思惑通りに事が運んだようだが、そっちはお前自身の手柄だろうよ」
あの集会場に村外から来た9人が加わっていたのは、何もライリーがいたからだけではない。「冒険者として戦い慣れており、森を越えられる程の強者であればその意見を聞かない手は無い」と、シルヴァが村長達に推したからでもあった。
偵察から帰ってきたシルヴァは、村長の下へ行く前にハンスにその目で見てきたものを伝えた。サクラも一緒にその場にいたが、それは偶々だ。
そして、今後の方針を決める場に参加してほしいと頼み込む。
自身がどうしたいのかを伝えず、ただそれだけを願い、彼らはそれを受け入れた。
今のシルヴァの様子を見るに、彼女が至ってほしいと願った方針に着地出来たようである。
「いえ、そうは言われましても、わたくしは感謝をお伝えせずにはいられません」
「すまないね、シルヴァ。こいつはどうも女性に素直になれない所があるのだ。今のはハンスなりの最上級の“どういたしまして”だ」
「おい、サクラ」
ぎろりと睨むハンスの視線を受け流し、ふふふと笑うサクラ。その笑いはシルヴァにも伝染していった。
「ふぎゃん」
何度目だろうか、キアラが地竜の背から振り落とされた。
それを見て、唯一仏頂面をしていたハンスも笑い出す。
「おいおい、もうあまり時間もねぇんだぞ、キアラ。大丈夫かー?」
「だーいーじょーぶー」
大きな声でやり取りする二人と、近くで大声を出されたことにその顔を歪めて不機嫌度を増した赤い地竜。
キアラが地竜に乗れるようになるのにはもう少し時間が掛かるかもしれない。
その様子を眺めながら、厩舎の方から鞍付けを終えた二頭の地竜を引き連れ、ライリーが出てきた。
そこで待っていたトムとオスカーはさっと地竜の背に跨り、キアラに見せつけるようにして彼女の横を駆け抜けていく。
「ぐぬぬ」
遠くにいてその声は聞こえないはずなのに、耳元ではっきりと実姉の悔しがる声を聞いた気がしたエマ。どうしても可笑しくなってきてしまい、ついつい笑ってしまう。
隣で一緒に微笑みを浮かべていたライリーは、急に思い出したかのようにエマに呼びかけた。
「エマ殿」
「何かな、ライリー。あ、明日は大変だろうけど、ライリーなら大丈夫よ」
「…エマ殿には感謝してもしきれません。学校でもそうでした。私が困っていると、いつもエマ殿が助けに来てくれます。それなのに私は何もお返しが出来ていない」
「なに?そんな事を気にしていたの?難しく考えなくても、ライリーみたいな子と友達でいられるだけで私は嬉しくなるし、今もそんな幸せな気持ちを貰っているのよ」
エマの言葉を聞いて、陶器のように白く滑らかなライリーの頬に朱が差した。
少しの間あわあわもじもじとしていた彼女だが、暫くして落ち着くと、ため息とともに胸の内を語り出す。
「エマ殿だけではありません。やはり、師匠たちは凄いです。今回の戦いも、私には見えていないものだらけでありました」
「見えていないもの…か。私思うのだけど、そうなるようにするのがテミスの天秤達の狙いじゃなかったのかなって」
「そうなるように、ですか?」
「視野を狭くするというか、考えを放棄させるというのかな」
「考えを、放棄…」
「攻め込んでくるタイミングだとか、降伏勧告のタイミングもそうね。怪我人が多いのに死者が伝令の1人しか出ていないのもおかしな点よ。そうなるように戦わないと、こんな状況には陥らないんじゃないかな」
「天秤は、私どもを疲弊させるために今まで動いてきていたと?」
「そんな気がしているだけだけどね。ハンスさん達だって、ライリーのように最初からオカド村で持久戦に加わっていたら、疲れに負けて降伏に流れていたかもしれないわ。状況からしたら、それでも戦おうと言ったライリーは凄いと思う」
「いえ、私は、そんな」と、またあわあわしだすライリー。だか、今回は立ち直るまでそう時間は掛からなかった。
「そんな所まで考えが及ぶとは、流石はオレンジェット先生に認められたエマ殿であります。やはり、私は…」
「もう、そうやってすぐライリーは自分を低く見るんだから。竜人族は誇り高い一族だっていうのはやっぱり嘘なんじゃないかしら」
「私のこれを個性だと言ってくれたのはエマ殿でありますが」
「…そんな事も言った気がするけど、それはそれ、これはこれ、昔は昔、今は今、よ」
「都合のいい解釈ですね」
「…言うじゃない、ライリー」
エマはライリーの尾骶骨の部分に手を伸ばし、くすぐった。
最大の弱点であるここを攻められて無事でいられる程ライリーは強くない。
「あひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃ」
「うりうりうりうり」
数分後、ぐったりしているライリーとすっきりしているエマの元に地竜に乗ったオリバーが近付いて言った。
「俺ぁ、風と友達になったぁ」
次回、戦闘回




