【10】
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ライリー達が戦いの場に赴いてから3日。
戦える者の多くが村を出た今の状況を不安に感じなかった村民はいなかっただろう。
「もし、伏兵が他にもいて、今襲われたら」「もし、彼らが敗れてしまったら」「もし、撃退に成功してもまた襲われたら」皆が何かしらの不安をその胸に抱いていた。
どこか俯きがちな彼らの鼻に、どこからかなんとも形容しがたい美味そうな匂いが漂ってくる。
カンカンカン!!!!
うちならされる甲高い木の音に昼の時間になったのだと知り、皆の足は自然と集会所の方に向いた。
「ほら、みんなしっかり食べな!!」
「そこ!!!無くならないからちゃんと並ぶんだよ!!」
恰幅の良いおばちゃん連中がその場に集まった者達に声を掛ける。その声は力強く、明るい。
それぞれが自分の家から持参した木皿に温かな汁物がよそわれていった。
湯気が立ち上り、野菜と肉がゴロゴロと入ったそれは、食べる前から美味いと分かるものだ。
皆、待ちきれないとよそわれた先から汁物をすすり、一様にほうと息を吐く。
そうやって立ち止まった者達に「ほら、邪魔だからあっち行きな」と、おばちゃん連中が注意するまでが1セットの流れであった。
おおよその村人連中を捌き切り、一段落着いたおばちゃんの1人が集会所裏に仮設された竈の方へ向かって行く。
その手には木皿が2つ。
自分の分と、そこで村の為に働いているもう一人の分だ。
「エマちゃん、一休みしてうちらもご飯にしようさね」
「あっ、もう終わりましたか。いつもご協力ありがとうございます」
「アッハッハッハ、何言ってるんだい。お礼を言うのはこっちの方さ。エマちゃんの作る料理が美味いからって、みんなニッコニコだよ。うちらも作り方を教えて貰ったしね。至れり尽くせりだよ」
そう言っておばちゃんは手に持った木皿をエマに差し出す。
それを受け取ったエマとおばちゃんは、建物の陰に腰を落ち着かせて食事を始めた。
「本当に皆さんには助けてもらってばかりで」
「なに?まだそんなこと言ってるのかい。気にしぃなんだね、エマちゃんは」
「いえ、私一人では十分な量を用意出来ませんでしたし、配る事さえままならなかったかと。いつも、私は支えて貰ってばかりです」
「何を言い出すんだろうね、この子は。はぁ、コレが若さってものかねぇ。いいねぇ」
「は?え?」
言われていることが分からず素っ頓狂な声を上げてしまうエマ。
「思い悩んだり、なんだかんだ言っても曲がらず真っすぐな所とか、羨ましいと思うよ」
「えぇ?なんですか、それ?」
「ほら、お礼を言うのはこっちだって言ってるのに、それでも感謝を伝えようとしてくる。自分の行動を貫こうとしている。我儘にも自分を押し付けようとしてくる。それが若さってもんさ」
「あ、え、我儘、でしたか…」
「おばちゃん、そういう我儘は好きさ」
あっはっはっと笑うおばちゃんにつられてエマも笑顔になる。なんで笑うのか、そうはっきりとは分からないが、おばちゃんの笑顔は心の中にすっと入ってきて温かくなるような、そんな気持ちにさせる。
「エマちゃん、あたしはね、戦ってるのさ。帰って来た息子を辛気臭く迎えてどうするんだい?戦ってるヤツがいるんだ。あたし達の為に。エマちゃんを助けるのだってね、あたし達の戦いなのさ」
むんと力こぶを作るおばちゃん。
それを見て、エマは声を出して笑う。
「負けていられませんね」
「そうさ、負けてたまるかってんだ」
おばちゃんとエマは拳を作り、がっと力強く打ち付け合った。
「おぉーい!!ライリー達が戻ってきたぞー!!」
大声を上げ村中を走る男の声。
それを聞いて二人はにやりと微笑み合い、ドガガガと音がしそうな勢いで汁物を掻っ込む。
ぶはぁと腹から声を出し、腰を上げた二人は村の跳ね橋に向けて歩いていくのだった。
地図を作っているので、次回ぐらいに載せられたらなと思います。