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悪役令嬢ぴるぴる6

 父の書斎に呼ばれたリリウムの運命やいかに。



 ただいま、リリウムin父の書斎。

 マホガニーの書斎机に、ゲンドウポーズの父。

 ガラス張りの窓からそこに太陽の光が降り注ぎ、逆光が父の表情をさらに隠す。

 恐怖です。

 恐怖がここにあります。

 ぴるぴるが止まりません。

 助けてエド君。

 リリウムはここだよ。

 部屋に入り、扉から一メートル以内を私の陣地としました。

 ここにいればいつでも退避できる。

 だから頑張れリリウム。

「リリウム」

 低い、硬い声に、背筋が凍りそうだよ。

「・・・ぁぃ」

「・・・・・・・・・」

 なんですか。

 なんですか。

 なんなんですか。

 真綿で首を絞められている。

 いま!

 リリウムは!

 真綿で!

 ぎゅぎゅっと!

 ぎゅぎゅぎゅっと!!

 首を絞められている!

 エドくーん!

 うぅ。

 視界が滲む。

「リリウム」

「・・・・・ぃ」

 もはや返事すら紡げん。

 舌がね、ぴるぴるしちゃってよう動かんのです。

 修理人お願いします。

「リリウム、もう少しこちらに来なさい」

「・・・・・ぇ」

 なぜに。

 とは思いつつも、逆らうわけにはいきません。

 歩を進め、一センチほど父に近づいた。

「---リリウム、もう少しこちらに来なさい」

 なんと、さらに!?

 絶対防御(エド君)を奪われた身だというのに、殺生なことを仰る。

 しかしすごすごと従うしかない・・・。

 父との間には書斎机プラス一メートル分の空間しかない。

 私の死亡フラグが着々と掲げられようとしている、のか?

「リリウム」

 ああ、間近で聞くこの声。

 声だけならば、私の至福のとき真っ盛りなのに。

 元は兄の声を担当する声優さんなのだけれど、派生して父の声も兼任しているのだ。

 兄の声をちょっと大人っぽくした声。

 前世の私のベストワン声優さんである。

 それをこんな間近で聞けるとは、喜んでよいのか嘆けばよいのか。

 初期の頃は悩んだこともあったっけ・・・ふう。

「リリウム」

 そうそう。

 こんな感じに生き別れていた妹の名前を呼ぶんだよね。

 はー。

 前世の私の名前もついでに呼んでくれないかな。

 エド君の声はエド君の声で、今の私にとってはベストワンだけど、純粋に声だけで選ぶとなると。

「リリウム」

 ・・・父は現実逃避する私を見逃してはくれないらしい。

 でも現実逃避のおかげでちょっとぴるぴるが治まったかも。

「はい」

 !?

 あれ、もしかして、まともに返事できたの初めてじゃないの?

 すごい!

 快挙!

 祝! 初お返事!!

 エドくーん、聞いててくれた?

 思わずにっこり満面で振り返り・・・。

 当然ながら、背後には空間、そしてその向こうに扉と壁、本棚しかない。

「リリウム」

 更なる父からの呼びかけに、満面の笑みはささっと引いていきました。

「・・・はい」

 すごい、すごい私。

 誰か褒めて。

 エド君、褒めて。

 続けてお返事できたよ。

 でーきーたーよー。

「学園はどうだ」

 その言葉に高揚していた気持ちは一気に凍った。

 さっきから、テンションが上がるたびに突き落とされる。

 これが父の技なんだろうか。

 ねえ、エド君。

 そして父からの問いに、どう答えればいいのか。

 どうだ、って。

 何が何をどうってこと?

 何を探られているの?

 は。

 さっきエド君が言ってたとおりに、ただ単に聞いてるだけ?

 じゃあ、私もさらっと答えればいいの?

 いやいやいや、でもそれって罠かも?

 さらっと答えたら、ヒロイン虐めをとぼけていると思われて、断罪への一歩を後押しするかも。

 ここはちゃんと弁明するべき?

 私は何もしてませんて?

 でも本当に何もしてないけれど、何かしてると思ってる相手に何もしてませんとか聞かれもしないのに言ったら、逆に怪しいよね!?

 どうしよう。

 正解が分からない。

 お腹の前で組んだ手に、ぎゅっと力がこもる。

「・・・学園は、楽しいか」

 父が補足するように質問を付け足した。

 楽しいか。

 楽しくもつまらなくもないよ。

 どこにいてもエド君一色に生活に変わりはないからね。

 これ、どんな裏がある質問?

 分からないよ・・・?

「エディがいてくれるので、楽しいです」

 必殺、エド君の名前を隠れ蓑作戦。

 なんかもう、何を探ろうとしているのかよく分からないので、エド君の名前をだしておけばきっと大丈夫。

 そんな心から生まれました。

「王太子殿下は、良くしてくれるか」

 ひっ。

 でも、負けない。

「・・・エディがいるので、大丈夫です」

 王太子殿下には迷惑かけてませんよ。

 近づいてきそうになったら、なるべく逃げていますよ。

 話しかけられても、会話は少なく、早々に切り上げて、をモットーにしてます。

「エドワードか」

 声が。

 声が。

 冷やっとしましたよね。

 温度が下がりましたよね。

 エド君になにか文句でも?

 ひー。

 言いたいけど言えない。

 ごめんね、エド君。

 意気地のない主で・・・。

 な、涙で視界が滲む。

 ぴるぴるが蘇る。

 あかん。

 敵地で動揺してもうた。

「リリウム」

「・・・ぁぃ」

「エドワードをセバスチャンに付けると言ったら、どうするかね」


 それは、リリウムから絶対防御を取り上げるということですか?


 どっぱーん。

 リリウムが崩壊しました。


 


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