王子の身内事情---弟は可愛い系---
青年は言う、非常に可憐な笑顔で。
輝く銀髪に愛嬌のある大きな蒼い瞳、しかし、身長は高く、ひ弱な印象は受けない。
「久々だなマルイス。みんな元気か?」
「みんな息災です。お兄様もお元気そうで!」
「従者の1人くらい連れて来なかったのか? ガルツァーはどうした?」
「あいつには内緒です。ここへはお忍びで来ているので……」
あいつら仲いいなー、てか兄弟いたんだなー知らんかった。髪の毛が眩しいなー、どんだけ神々しい兄弟だよ。というかさっき名前ちがくなかったか? なんだっけ? は……ハブラシ? ちゃうな、は……は……
「ところでハヴィラルお兄様──」
「それだー!!」
発せられた大声に2人が振り返る。
「ええっと、お取り込み中すいません? なんかさっきから聞いたことない名前が……?」
「おお、アルゼリータは偽名。本名はハヴィラル・ノーザだ。こいつはマルイス。オレの弟だ。」
驚くロゼイルと対照的に、アルゼリータは冷静に話す。
「へえー、全然似てないな~。髪も目つきも違う」
「母親が違うんだ。オレは正妻からだが、こいつは妾の子だ。髪の色は母親の遺伝だな」
アルゼリータが説明すると、マルイスがロゼイルの前に出る。
「はじめまして。マルイス・ノーザと申します。これからよろしくお願いします!」
「あっはい、ロゼイル・シラルガンです。こちらこそ、よろしくお願いします」
丁寧な挨拶に丁寧に返すが、普段の態度のせいか、どこかぎこちなかった。
「お兄様、ロゼイル様、まずは何をしましょうか?」
「サマはいらないよ王子! まずは部屋案内だな!」
「はい!」
「おいちょっと待てお前ら」
和気あいあいと歩き出す2人を引き止める。
「なんだよー、よろしくって言ったんだから」
「マルイス。ここに何しに来た?」
兄に問われると、マルイスは表情を固くした。
いつもはしない表情に目を見張っていると、マルイスが口を開いた。
「家出してきました。もう、あそこには戻りません」