側近とのつながり - side.K-
少年の両腕には精霊が宿っていた。
右に炎、左に氷の力だ。
先天的なのか後天的なのかは分からない。
ただはっきり能力が出始めたのは9歳のときであった。
火気がない場所でも火の粉を散らす事ができたし、
炎天下の中でも氷の結晶を生み出す事ができた。
少年は感覚だけで精霊の力を自在に操れたのだ。
少年は王族であった。
しかし、王家の人間ならこのような気味悪い力が身に付く筈がないと、離れに移された挙げ句に追放宣告を受け追い出された。
王宮という籠の中で育ち、世間知らずのままで追い出され、行く宛もなく、火傷と凍傷で爛れていく腕を隠しながら、少年はスラムのなかで生き続けた。
しかし、王族ならではのカリスマ性、為政者の素質が徐々に表れ始めた。
巧みな話術と引き込まれる風貌。
無法地帯のスラムの中ではそれだけで十分だった。
彼を筆頭に反王政集団が誕生した。
噂を聞きつけた同士達が集まり、その規模を増幅していった。
始めは目立つ行動はしなかった。
資金繰りや武器調達に時間を使い、虎視眈々と機会を図り続けた。
しかし、反王政集団の噂は王都中心部にも流れ、恐れを成し『国民連盟』と呼んだ。
少年が16歳となったとき、遂に行動を開始する。
隠れるような活動から一気に攻撃体制へと入る。これには王族も怯んだ。
少年も精霊の能力を使い、大地を焦土、凍土に変えながら戦った。
7年にも渡る準備期間に死角はなく、国民連盟の勝利目前に、王族側から一時休戦の宣言が流れた。態勢を立て直す為だと察したが、少年はそれに応じた。
束の間の休息。
そこへ、後の側近となる1人の少年が参入を果たす。
この出会いから4年の月日が流れ、少年は20歳という一つの節目を迎えた。