王子の身内事情---弟、帰還する②---
一方、その頃
「なあ、あんた……」
ロゼイルに呼び止められたガルツァーは、一瞬目を見張った。
どちらも同じ紫眼。しかし、髪の色が違う。
「髪は隠せても、目は変えられないものだ」
そう言い残すと、漆黒の馬の背に跨がる。
「王子、そろそろ」
「うん」
マルイスはもう一度、兄へと向き直る。
「どうか、お元気で」
「おう、達者でな」
別れを交わし、2人は一気に駆け出した。
残った2人も、背中が見えなくなるまで見届け続けた。
「ああ、楽しみにしているぞ……」
思わず口から漏れ出す。けれど、待ち遠しかった。いつか、弟と戦う日が来ることを。
すがすがしい表情のアルゼリータとは反対に、ロゼイルは曇った表情を残したままだった。
荒野を走る2頭の馬。
一定の速度で、濃茶色の馬の後を漆黒の馬が追いかける形で走っている。
「そうだ。ガルツァー、あなたと同じロゼがいましたよ」
「ええ、私も見ました。髪を誤魔化した私とは違い、彼は見事はピンク色を晒していました」
ガルツァー・ロゼ・シラルガン
今は黒髪だが、前はもっと違う髪色だった。
突然、マルイスが馬の速度をあげた。
「ちょっと! 王子!」
「来るな!」
声を張り上げる。しかし、その声は潤みを帯びている。察したガルツァーはゆっくり馬の速度を落とし、はぐれない程度に距離を取った。
背後の足音が遠ざかった事を感じ、そして──
「うあああああっ! あああああーーー!」
マルイスが大声で泣き始めた。
『いやちょっと、王子!』
距離取った意味ないじゃないですか!
好きだった兄の前では泣きたくなかったのだろう。我慢していたものが一気に溢れ出ていた。
でも──
『成長しましたね、王子 』
ずっと寄り添っていたかったものに自らの意志で別れを告げたのだ。この成長にガルツァーは心底喜んだ。
ずっとお仕えして、見ていたい。この素直で、可愛らしく勇ましい、王子の成長を。
王子の泣き声を聞きながら、胸の奥でひっそりと誓い、願った。
いつか王子の涙が、幸せな未来へと繋がっていけるようにと。
マルイス編終了です
作者一番のお気に入りでした王子…。
物語はまだまだ続きます!
これからも愛読よろしくお願いします(*^_^*)




