王子の身内事情---弟、帰還する①---
「おはようございます。お兄様!」
「ああ、おはよう」
マルイスがリビングに着くと、既にアルゼリータが席に着いており、テーブルには朝食が並べられている。
「おっはよーさん! 今日は早く目が覚めた!」
いつもは寝坊するロゼイルも、今日はリビングに顔を出した。
「珍しいな。槍でも降らせる気か?」
「オレだってたまにはちゃんと起きますー! では、いっただっきまーす!」
手を合わせ、ナイフフォークを手に食べ始める。
「目っ玉焼きーには何かっける?」
「塩!」
「マヨネーズ!」
「……蜂蜜」
「ぶぁー! アルスの味覚破綻!」
出されている目玉焼きに、思い思いの調味料をかける。
「なんだよマヨネーズと蜂蜜って! ソルトナンバーワン! シンプルイズベストだろ!」
「マヨネーズは元々卵で出来てるんですよ! 合わないわけないじゃないですか!」
「破綻はしてねぇ。」
目玉焼きの味付け議論をしていると、リビングにノック音が響いた。
「失礼致します。アルゼリータ様、来客でございます。王子の……従者とかで──」
「だとよ。マルイス、お迎えだ。帰る時間だ。」
「はい……、そのようですね」
「従者殿をお連れ──」
「王子! 何してたんですか! さあ、早く帰りますよ! スティエラ様もグランシア様もイザベル様も、みんな心配しています!」
兵士の言葉を遮り、黒髪紫眼の長身男性がマルイスの前に出た。
「ガルツァー、心配、かけた?」
「死ぬほどしました! まさかと思ってきたら……。」
ガルツァーが周囲を見渡すと、アルゼリータと目が合い、はっとする。そして、深々と頭を下げた。
「お久しぶりでございますハヴィラル殿下。この度は我が主がご迷惑を……」
「少し頭を冷やせガルツァー。お前はよくやっているよ。もう少し楽にやってもいい」
「は、ありがとうございます」
落ち着いたのか、冷静にマルイスを促す。
「お迎えにあがりました、駄々こねてる時間は終わりですよ王子。」
「……わかったよ。」
席から立ち上がり、自室へ向かう。
「んじゃ、お見送りでもするか」
「へーい」
アルゼリータとロゼイルも立ち上がり外へ向かった。
自室から戻ってきたマルイスは、荷物をガルツァーが引いてきた愛馬に括り付ける。
「そうだ。ひとつ伝えないと。お兄様、僕は本当にお父様から伝言を預かっているのです。『すぐに国民連盟を解散させ投降するなら、再び王族として迎え入れる』と……。お兄様、戻っては……来ないのですか?」
答えは分かっている。けれど、どうしても期待をしてしまう。マルイスは兄の答えを待った。
「オレはもう戻らない。父上に伝えとけ、今度会う時は王族の敵、アルゼリータだと。もちろん、お前とも敵同士だ。だから、もうここには来るな」
明らかな拒絶。マルイスはこみ上げてくる何かをこらえ、誤魔化すように馬に乗り、声を張り上げた。
「──分かりました。ならば、次相まみえるときは、敵として剣を交わしましょう! アルゼリータ!」
マルイスは声高らかに敵対宣言を発した。
後編に続きます




