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王子の身内事情---弟の朝は馬で始まる---

 早朝

 太陽がまだ顔を出す前、愛馬の世話へと暗い敷地内を歩く人影が。


 愛馬の世話はマルイスにとって日課だった。

 そのため起床は誰よりも早く、馬を繋げている小屋へ向かうのだ。

 この日も、いつも通り水が入った桶を持ち、愛馬が待つ小屋へ入る。


「おはようアリシュタイン!」


 

 水桶を愛馬──アリシュタインの前に起き、濃茶色のたてがみをなでる。すると、主の姿が嬉しいのか、顔をマルイスの頬へ擦り寄せた。


「わ、わわ! くすぐったいって!」


 愛馬の元気な様子に安堵すると、馬を小屋から出し、ヒラリと慣れた様子で背に跨がり、手綱を握る。


 そして、


「ハイヤァ!」


 いななく馬を操り、一気に駆け出した。

 風を切るように薄暗い土道を颯爽と駆け抜けていく、この瞬間が、何よりも好きだった。

 全てが一瞬で、視界の後ろに消えていく。良いことも嫌なことも、全部風に流してしまうのだ。

 嬉しかった事──誰も聞いてくれなかったことを兄が受け止め、剣や馬を教えてくれたこと。

 アリシュタインに出会えたこと。

 悲しかった事──その兄が、目の前からいなくなってしまったこと。


 そんな全て、全て流れてしまえ。


 ひたすらに馬を走らせた。

 この時だけが現実から離れられる、安らぎの時間となっていた。


 戻ってくる頃には朝日が上がり、陽光が優しく大地を照らしていた。


「よしよし、また夕方な」


 馬を小屋に繋げ、新しい水と牧草をやると、マルイスは自室へと足を向けた。


 その途中、屋敷から煙があがっているのが見えた。


「あ、朝ご飯かな?」


 料理人が朝食の準備中なのだろう。香ばしい香りが鼻をついた。

 突如芽生えた空腹感を抱えながら、屋敷を目指して歩き出した。

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