トラブる
「では、私はこれにて…」
「ああ。ありがとうよ。船長さん」
勇者とAは、金剛丸を見送った。
「これで、大丈夫ですね」
「ああ。船長さんを巻き込むわけにはいかねーからな。これで、帰路は断たれたわけだが」
「大丈夫ですよ。帰りは、僕の国の船が迎えに来てくれるはずですから」
「ん、そうだな…。よし!じゃあ、行くか!」
「魔王、討伐に!」
二人はとうとう、魔王の島に、足を踏み入れた。
…
……
………
「あ、あぶねえ!忘れてた!」
踏み入れたと思いきやダッシュで戻ってくる二人。
「も、ものすごい数のモンスターが居ましたね!」
「うむ!このままでは殺されてしまう!そのための、これだ!」
Aはふくろから変化のマントをとりだした!
「えーと、取説によると…一人ずつ被って、そのまま右回りに一回転、でモンスターに変身できる、と」
「じゃあ僕やってみます!えーと被って、一回転…」
「あ、バカそりゃ左回りだ」
「えっ」
勇者は女の子に変化した!
「あれっ!?」
「ゆ、勇者…」
「なんで僕の胸がこんな…?あ!ぼ、僕、お、女の子になっ…!?」
「ま、待て待て。えーと、ちょっと待て」
Aは動揺している!
「取説、取説の、えー」
「落ち着いてください!Aさん!」
「わ、わかってるよ!ちょ、そんなに近付くな!えーと、左に回ると、男は女に、女は…」
「あ、わかりました!もう一度左に回れば男に…」
「なっ!?バカ!違え!」
「うわっ!」
勇者はバニーガールに変化した!
「あれっ?」
「うわああああやめろおおおお!俺のトラウマがああああ」
「え?まだ女の子…?うわ、なんですこの格好!恥ずかしい!」
「うわわわわわ」
「寒いし、胸が…ちょっとこれきついですよ。下も食い込んで、痛…」
「お前!黙れ!ちょっと黙れ!」
結局。
「マントを被ってその場でジャンプすれば全て元通り、というわけですね」
「おう…」
乗り込む前に既に疲労困憊である。
「じゃあ、今度こそいきますね」
「うん…」
勇者はマントを被り、右に回った。
「…やった!」
勇者はモンスターに変化した!
「わーいわーい!ちょっとかっこいいですね!これ!」
勇者はモンスターになった自分の手足を動かしては、楽しそうに眺めている。
「ふうん。言葉はそのままなんだな」
「知能が高いモンスターは人間の言葉を使えるそうですからね。大丈夫でしょう」
「なるほど。じゃあ、俺も…」
Aはモンスターに変化した!
「お!いいですねーAさん!」
「ぐるるるる…」
「!?」
このあと三回やり直して、Aはどうにか言葉の通じるモンスターに変化した。