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新たな仲間

サナユキの村を出たふたりは、ルート内の町である、ジキドの町へと向かった。

「Aさんも旅をすることになったわけですから、やっぱり装備を整えないと」

「それを教えたのは俺だけどな」

そう。

Aの現在の装備は


てぬぐい

クワ

ぬののふく


だけだった。

これはカザの村に居た時から普段着として身につけていたもので、ステータスにはさして影響がない。

そのため、せっかく戦えることが判明したのだから、戦闘に役立つ武器、防具を揃えたほうが得であろう、ということになったのだった。

「さあAさん!どんどん試着してくださいね」

「おう」

「気に入ったものを買い揃えましょう!お金の心配はいらないですからね!」

勇者はずっしりと重たい財布を掲げた。

あのブローチが結構良い値で売れたのである。

「これなんかどうですか?あ、こっちもかっこいい!」

勇者は店に並べてある商品を片っ端から持ってきてはAに装備させようとした。

が。

「こいつはお客さんには装備できないねえ」

「こいつはお客さんには装備できないねえ」

「こいつはお客さんには装備できないねえ」

店主はこれしか言わなかった。

店にある武器、防具。そのどれも、Aには装備できなかったのだ。


二人はトボトボと店をあとにした。

「ひとつも…装備できませんでしたね…」

「…」

「なぜでしょう」

「…農夫だからさ」

なぜか戦闘に参加できるAだが、どうやら勇者やその一味用に作られた装備品は身に着けられないようだ。

「あ、じゃあこれならどうですかねえ?」

勇者が思い出したように鞄から取り出したものは、なべのふた、だった。

「僕が最初に身につけていた盾です。どうですか?」

「…」

Aはなべのふたをそうびした!

守備力が1上がった!

「わあ!似合いますよAさん!」

「…」

Aは複雑な顔をしている!

「あ、あとこれも…モンスターが持ってたものですが。何か役に立つかもしれません」

勇者はAにおまもりを渡した。

「ん?いいのか?」

「ええ。なんの効果があるのかはわからないんですが…」

Aはおまもりをそうびした!



薬草などのアイテムを買い足し、二人は町を出た。

「よし…。夜までには、山を越えられそうだな」

二人は、次の町へ向かう山道を歩いていた。

「よかった…じゃあ、今夜は山麓に野営地を構えますか?」

「ああ…途中で何か狩っていこうぜ。獣が居たら教えてくれ」

「了解です!」



「…うわ。うめえなこれ」

Aが夕飯のシチューを頬張りながら言った。

「おいこれ、本当にあの一角獣の肉か?俺、前に一度食べたことあるけど、もっと筋っぽかったし、獣臭かったぜ」

「下茹でにクルルの実を使うと柔らかくなるんですよ。あと途中で見つけた香草も数種類入れたので、臭み消しになったかと」

「へえ!料理上手だったんだな、お前」

「いやあ、はは。それほどでも…。お口にあって、よかったです」

勇者は嬉しそうだ。

「誰にでもひとつは特技があるもんだなあ」

「あはは。…実は僕、昔から料理が好きで。料理人を目指したこともあったんですよ」

「へえー」

「本で食材のことを勉強したり、台所に忍び込んで色々作ったりして。だけどある日両親に見つかって、ひどく怒られてしまいました」

「どうしてだ?」

「…お前は勇者になるんだから、そんなことより武術を磨けと」

勇者は汲み置きした水をたらいに張ると、静かに皿を洗い始めた。

「僕の家は代々続く、勇者の家系ですからね。それで、諦めました」

「…そうか」

勇者の、意外な過去。

名家には名家の悩みがあるのだと、Aは初めて知った。

そして、勇者がそのことをなんの屈託もなく、ただの農夫である自分に話してくれたことが、Aには嬉しかった。

「…あ、そうだ。あの一角獣、結構お肉がとれたので、残った部位は塩漬けにしておきました。その後、燻製にするとこれがまたおいしいんですよ。日持ちもしますし」

「おお。そりゃ楽しみだ」

今までにない、刺激のある日々。この旅に、Aは愛着のようなものを感じ始めていた。



翌朝、Aが目を覚ますと、隣にモンスターが眠っていた。

「!?」

すぐに手元のクワを掴んで構えたが、どうも様子が違うようだ。

すやすやと眠るそいつは、よく見ればまだ小さい。しかも、翼に刺し傷があった。

Aはすぐに勇者を起こし、問いただした。

「なんなんだこいつは。お前が拾ってきたのか?」

「い、いや、僕は知りませんよ。えーと…これは翼竜の子どもですね。んー…この辺には分布していない種類みたいですが…」

勇者はモンスター図鑑をめくりながら言った。

「この小ささからして、ひとりで飛んできたとは考えにくいです。もしかしたら、人間に捨てられたのかもしれません」

「捨てられた?」

「ええ。ほら、怪我をしているでしょう?戦力にならないと判断されたのでは、ないでしょうか…」

Aは以前、別の勇者一行と鉢合わせた時のことを思い出した。

彼らはモンスター数匹を引き連れ、戦闘に参加させていた。

「ミー、ミー」

モンスターが目を覚ましたようだ。片翼を引きずりながら、二人のところへ近寄ってくる。

「ああ、羽、痛そうだね…君は、僕らに助けを求めて来たのかい?」

モンスターは小さな鳴き声を上げながら、勇者の手に頬ずりをした。

「お!そうだ!」

Aはポン、と手を打った。

「なあ、こいつを育てて、戦闘用員にしたらどうだ?楽になるぞ」

「…だめです。モンスターを懐かせるには特殊なスキルが必要らしいんですよ。だから、戦闘に出すのは無理なんです」

「えー」

Aは舌打ちをしてさっさと荷物をまとめだした。

「Aさん?」

「さ、行こうぜ」

「え、いやいやいや…」

勇者はがしっとAの腕を掴んで制止した。

「待ってください。あの、この子はどうするんです?」

「あ?この子って?」

「この、翼竜ですよ!怪我しているし、まだ小さいし…このままじゃ、餌も捕れずに死んじゃうかも…」

「だろうな。自然は厳しいもんだ」

「そんな!か、かわいそうじゃないですか!僕達が世話してあげましょうよ!」

「…はあ。お前はまたそうやってお人好しして…」

「だ、だって…」

「懲りないやつだな。それで前回えらい目にあったろ!俺が!」

「で、でも、ほうっておけません…」

勇者はモンスターを抱き上げ、すがるようにAを見た。

「お願いします…!せめて、怪我が治るまで…!」

「…」

「Aさんに面倒はかけませんから!餌は僕が用意しますし怪我の手当も散歩も全部僕がやりますから!」

「…」

モンスターがつぶらな瞳でAを見上げる。

「……ミィ」

「くっ…くうう…」

Aは根負けした。

「わかったよ!でも俺は一切、世話はしないからな!」

「わーい!ありがとうございますAさん!よかったねえ、コロ」

「…コロ?」

「この子の名前です。翼竜とか、モンスターとかだと呼びづらいので。さ、コロ。羽を見せて。手当てしてあげようね」

「ミー!」

「……」


コロが仲間になった!


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