8-mission-作戦-
つい先日、私は片思いの三島先輩に少しでも近づく為に、先輩の所属するフットサルサークルに入った。
最初は邪な気持ちで入った事に罪悪感を感じて居たが、元々興味のある事だったせいか、私は自分でも驚くほどにそこに馴染み始めていた。
私の役割はマネージャー業務みたいなもの。
最初はボールを蹴ってみるかとも言われたが恥をかくだけなのでやめておいた。
それに比べてコノハさんは凄い。
マネージャー業務以外にもメンバーのサポートや練習試合に出たりもする。
日に日に差、つけられてる気がするなぁ…。
一日二日で埋められるような差じゃない事はなんとなく解ってたけど。
「米良ちゃんーこっちタオルちょーだい。」
「あ、はい!」
練習後にメンバーの皆さんの雑用をやるのも私の仕事だ。
あらかじめ渡されていたタオルを持ち主一人一人に返して行く。
当然、三島先輩のタオルは―――コノハさんが持っている。
「トシ、はいタオル。すごい汗ねー」
先輩は何も言わずにタオルを受け取ると汗を拭きながらベンチに座る。
コノハさんもあたりまえの様に隣に座る。
何を話しているのかここから聞こえないが、コノハさんが楽しそうに笑っているのは解る。
先輩の表情は変わっていないようにも、心なしか楽しそうにも…見えた。
「あの二人、アレで付き合ってねーんだもんなー。やってらんねーよホント。」
その場に立ちすくんでいると篠原さんが声を掛けてくれた。
先輩とコノハさんの様子を見ていた事に気づいたらしく、軽く口を尖らせている。
私は三島先輩に、そして篠原さんはコノハさんに、お互い片思いをしている。
今私達はお互いの恋を成就するための協力関係にある。
とは言ってもそれらしいことは何もしてないのだけど…。
「なんかもうお似合いのカップルって感じだよな~」
水筒に入った水を飲みながら篠原さんが怨めしそうに二人を見る。
その視線に二人が気が付く様子は無く、完全に二人の世界だ。
私が入り込める隙なんて無い。
「じゃぁ、さっそく共同戦線しますか。」
「え?」
篠原さんが水筒をスポーツバックにしまい始めると、全員が徐々にその場から立ち去り始めている事に気が付いた。
そういえばもう練習は終わりなのだろうか。
気が付けば先輩とコノハさんも一緒に歩き始めている。
私もそれを追うように小走りで歩き出した。
その後を篠原さんが着いてくる。
「この後打ち上げでメシ行くんだけど、その帰りにさりげなくトシキ連れ出してくんない?あいつら絶対最後一緒に帰ってくんだよね~。米良ちゃんがトシキ連れ出してくれりゃ俺がコノハの事送ってけるって訳。どーお?悪い話じゃないと思うけど?」
篠原さんの提案を拒否する理由が私には無い。
このまま仲良さそうに目の前を歩いて行く二人の背中を私はずっと見続けるしか無いんだろうか。
嫌、そうじゃない。それじゃいけない。
私が先輩の横に並んであんな風に笑顔で笑える未来も、きっとある筈だ。




