7-circle-サークル-
「――と、言う訳で今日から入ってくれることになったら米良キョーコちゃん。皆宜しくね~」
篠原さんに連れられて、私は篠原さんが所属しているというフットサルサークルの溜まり場だと言う教室に来ていた。
そして当然そこには先輩と―――コノハさんも居た。
学部が一緒なだけじゃなくてサークルまで一緒…そりゃ仲良い筈だよなぁ。
篠原さんに協力を申し込まれた私は、篠原さんと先輩が所属するフットサルサークルへの加入を勧められた。
学部の違う私が先輩に近づくにはこの方法が一番てっとり早い。
しかしフットサルはおろか、運動神経人並み以下の私がフットサルとか…。
邪な気持ちのみで入ってすいません!!と頭を下げたい気持ちをなんとか堪えた。
「……おい。どういう事か説明してもらおうか。」
そして私がやって来たのを見て一番驚いていたのはおそらく三島先輩だろう。
何故私がここに居るのか。
当然篠原さんに連れて来られた以外理由は無いのだが。
あの時と同じように酷く不機嫌な表情で篠原さんに詰め寄る三島先輩を宥めるのはやっぱりコノハさん。
まぁまぁ、と落ち着かせようとするその姿はもう恋人同士の様に私には見える。
―――どうしよう。先輩凄い怒ってる。
やっぱり共同戦線なんて受けるんじゃなかった!
後輩だからって調子にのって、やっぱり迷惑だったんだ。
「いやーだってさートシキが普通に話してる女の子なんてめずらしーじゃん!」
「だからコイツは高校の後輩だって言っただろ!」
私が見たことも無いような表情で怒る先輩に、私は目頭が熱くなる。
―――あ、泣きそう。こんな所で泣きたくない。絶対気使わせちゃう。
そんな私の様子に最初に気が付いたのは多分、コノハさんだった。
コノハさんは先輩を止めようと先輩の肩に添えていた手を私にそっと添えると、言い争う二人に向かって叫ぶように言った。
「コラ!二人とも、特にトシ!いい加減にしなさい!!そんなにキョーコちゃんをサークルに入れたくないわけ?」
――― 一瞬で、その場が静まり返る。
まさにツルの一声とでもいうべきか。
コノハさんの綺麗な声は私に優しく言葉を掛ける。
あぁ、これじゃぁ篠原さんが好きになるのも無理はないかもしれない。
篠原さんだけじゃなくて多分、先輩も……。
「キョーコちゃんごめんね。折角来てくれたのにこんな事になっちゃって…あの二人喧嘩が日常会話みたいな感じだから気にしないでね。」
綺麗な顔で綺麗に笑う。
しかしすぐにコノハさんがキリっとした表情で二人に向き直ると、先輩を呼びつけた。
先輩は嫌そうにと言うよりは困ったな、と言いたげな表情でこちらにゆっくり歩み寄って来る。
そして私と目が合うと気まずそうに目を反らした。
「こら!まずキョーコちゃんに謝る!」
「そもそも篠原のやつが」
「良い訳しない!!」
「う…」
私は構わないと言ったがコノハさんが断固として許さなかったので先輩が私に謝ってくれた。
「悪い。篠原の奴が強引に連れて来たんじゃねーのか?」
先輩が篠原さんを横目で見ながら言う。
篠原さんは相変わらず飄々とした表情で、コノハさんに睨まれていた。
「嫌…そんなんじゃ、ないです。確かに篠原さんに誘われはしましたけど…興味があったので…。」
嘘はついていない。
高校時代は先輩のサッカーの試合を何度も見に行った事がある。
ただ、運動神経が見合わなくてプレーには至らなかっただけの事で。
「……いいのか?」
先輩がはにかむような顔をする。
頑張って笑おうとしているような、そんな表情だ。
私が頷くと先輩はさらに「勉強とか、平気なのか?」と聞く。
私はまた頷く。
すると今度は結構な深いため息を吐いた。
私が先輩のため息に過剰に反応してしまうと、コノハさんが「大丈夫」と嬉しそうに笑う。
コノハさんにはもう解っているのだろう。
「コイツに変な事されたらすぐ言えよ。」
先輩が篠原さんを指さしながら言う。
篠原さんは「俺を何だと思ってんの?」と叫ぶが先輩が「チャラ男」と一括すると篠原さんは黙ってしまった。
……何だか罪悪感。
でもこれで合法的に先輩の近くに居る事が出来る。
ふと篠原さんに目をやると、篠原さんは先輩にまだ色々と怒られているらしく、こちらを気に留める様子も無い。
しかしコノハさんはそれを楽しそうに「仲良いでしょ~」と美しい笑顔で見ていた。
―――この人にはまだ、敵いそうもない。




