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The HEROINE  作者: こみつ
3/10

3-lunch time-昼食-(2)

食堂は混んでいたが丁度カウンター席が二つ並んで空いていたのでそこに座った。

隣だと先輩との距離がより近く感じる。


さっきまで私の腕を掴んでいた先輩の手が今はお箸を持ってご飯を食べている。

あの手が…あの…手が…私に……私に……!!



私のお箸を持つ手が震える。

かぁっと身体の内側から熱くなった私には先輩と楽しい会話なんか出来そうにも無い。

何も喋らずにランチプレートの上に乗っているコロッケを口にする。

緊張のしすぎて見事に味が解らない。


仕方なくそれを味噌汁で流し込むと先輩がこちらを向くのが横目で見えた。


「ラメって何学部?」

「えっえっあ、私?!」

「お前以外誰いんの?変な奴だなー」

「で、ですよね?!アハハ!!」


脳の奥も熱くなっているせいだろうか、上手く言葉が出てこない。

早くしないと先輩に呆れられてしまう…これを切っ掛けにして先輩と仲よくなるって決めたんでしょ!!?

えっと、とりあえず先輩の質問に答える!!


「私は、文学部です。」

「へー俺教育学部だから校舎反対だな。」

「で、ですね!あはは!」


……ど。どうしよう。話が全然盛り上がらない!!!!

その間にも先輩はぱくぱくと食事を食べ進め、私はと言えば全然食事が喉を通らない。

手も震えて居るせいか上手くご飯もすくえないし、味がしないのでどうにも食事が進まない。


どうしよう。

私から誘った癖になんかすっごいつまらないランチタイムになってる?

つまらないからもう帰る!とか言われたら………あ、何か落ち込んで来た。泣きそう。


折角隣に憧れの先輩がいるのに私は先輩の顔も見れないまま、俯いて食事をするだけ。

そんな時私の耳に先輩の呟くような声が聞こえた。



「…食べるのおせーな。」

「んっ…?!」


…あ、あれ??

もしかして今先輩怒ってる?

私が食べるの遅いから怒った?!

それとも話が弾まないから?!

どっちかと言われたらどっちもですよね?!



「ご、ごめんなさい…」

「ん?別に謝らなくてもいーけどよ」


……私って本当に駄目駄目だ。

こんなんで先輩と仲良くなれる訳がない。

自分が主人公になれるかもしれないなんて途方もない夢だったんだ…。



またしても先輩との間に沈黙。

先輩はもうすぐ食べ終えてしまう。

そうなったら先輩が席を立つのも時間の問題だろう。






「あれー?トシ?」


そんな時、騒がしい食堂の遥か後方から誰かを呼ぶ声が聞こえた。

私は俯いたままだったが、それに三島先輩が振り返った。


「…先輩?どうし」


「今お昼?一緒してもいい?」


“トシ”――その名前が三島先輩の事を呼んでいるのだとその時解った。

三島先輩の下の名前はトシキ。


先輩の振り返った先には髪の長い綺麗な女性が、ランチプレートを持ってこちらに向かって来ている。

この人が先輩を呼んだ人だとすぐに解った。


そして親しげに先輩を下の名前で呼ぶその女性はいつの間にか空いていた先輩の向こう隣の席に座った。


「おー。今昼か?おせーな。」

「ちょっと先生に呼ばれちゃって。…あれ?その子トシの連れ?」


女の人はじっと見つめていた私と目が合うと笑顔で微笑みかけて来る。

私は慌てて目を反らしたが、先輩は私の事を「高校の時の後輩」とだけ紹介してくれた。


「あーそっかぁ。トシって高校の時から後輩に好かれるんだねー。流石教師の卵!」

「別に好かれてるわけじゃねーとは思うけど。」


―――はい好かれてます。私めちゃくちゃ好いてます。


親しげな二人の仲に入っていけない私は再び日替わりランチと向き合う。

早く食べなきゃ…また先輩に遅いって言われちゃう。怒らせちゃう。

これ以上怒らせたくない。


「午後の授業出る?」

「あぁ。」

「じゃぁ一緒に行こうよ。」

「いいけど」


そんな二人にとって何気ない会話でも、私の耳にはまるで恋人同士の会話の様に聞こえてしまう。

高校時代でもこんな風に親しく話してる女子生徒なんて誰も居なかった。

だからきっとこの人は先輩にとって“特別”な人…。



……そっか、もう手遅れなんだ。

……きっとこの人が彼女さん、なんだ…。

もうこんな風に片思いするのも先輩にとっては迷惑な事になっちゃうんだ。


そうだよね。

私みたいなうじうじして会話もロクに出来ないような女より、美人でシャキシャキしてる人の方が好きに決まってる。



私は残った日替わりランチを一気に掻き込むと立ち上がった。


「わ、わたしもう行きます!」

「え?まだ食べ終わって―――え、もう食ったの?!早!!」

「今日はどうもありがとうございました!!」


ひとつくくりに結んだ髪が勢いよくしなる程に頭を下げると、私はその場から走るように逃げた。

背中では私の事を「どうしたの?」とか「なに?」とか言ってる先輩と彼女さんの声が聞こえたけど、振り向かなかった。

振り向いたら最後、本当に泣いてしまう気がした。



この広いキャンパスの中、もう二度と先輩と会う事は無いだろう。

全ては一瞬の夢幻。

そう思えば楽になれる。


やっぱり私は主人公にはなれなかった。

私なんかに主人公なんて格が違い過ぎた。

少女漫画の主人公なら、あの人みたいな綺麗な人の方が相応しいに決まってる。


……決まってる…決まってるん、だよね…??

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