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The HEROINE  作者: こみつ
2/10

2-lunch time-昼食-

――――昼休み。

先輩と約束した第一食堂の前は人で溢れかえっていた。

この食堂は多数の学部の生徒達が集まる為に混雑するとは聞いていたがまさかここまでとは。

普段私は第三食堂を使っていて、そこはほとんど私が通っている文学部の生徒達しか利用しない。

なので食堂がこんなにも混雑するなんて信じられなかった。


しかしこの人混みから先輩を探さなくてはいけない。

チビなりに一生懸命背伸びをして、この人混みの奥に頭一つ分出た先輩の姿を見つけた。

私は背が低いのでこの人混みに当然埋もれているが、先輩は背が高いので目立つ。


そして問題はこの人混みの中、どうやって先輩の所まで辿り着くかだ。

この人混みは中心が川の様に食堂に入る人達で流れている。

そして先輩が居る所はその川の向こう側。

つまりこの人の川を横切って先輩の所に辿りつかなければならないのだ。


今の私に「遠回りしよう!」なんて気持ちはまったくない。

先輩に待ちくたびれて帰られる前になんとしても辿り着かなければならない!!


私は意を決して人の川に飛び込む。

何度も人にぶつかりながら、「すみません!」と声を掛けて睨まれながら、先輩の元へ向かう。


しかし先輩が居る場所とはどんどん離れていくのは何故だろう。

あ、あれ?何で?!


私はいつのまにかその人の波に流され始めていた。

確かに最初よりは先輩に近づいた。

だけど食堂の人気メニューを欲する腹ペコな学生たちの波を私は甘く見ていた。


ま、待って!

先輩!!すぐそこなのに!!



「―――先輩!!」


必死に叫んだ。

しかし先輩がこちらに気が付いた様子は無い。


手を伸ばして必死に人混みを掻き分ける。


先輩!先輩!

私はここです!

気が付いて!お願い!



そのまま人の波に攫われそうになった時、先輩がこちらを見た気がした。

しかしすぐに私は背の高い人に阻まれて先輩の姿を見失う。


―――あぁ、駄目だ。

この様子じゃ落ち着くまでこの扉から外に出る事は出来ないだろう。

このまま先輩は私にすっぽかされたと思って、THE END…!!






「―――ラメ!」


その人の波の中、突然腕引っ張られる。

そしてそこには私が一番会いたかった人がいた。


「…っ…先輩!」

「何流されまくってんだ?」


先輩が、この人混みの中私を見つけてくれた。

それだけの事で私は泣きそうになる。

泣きそうな顔を隠すために私は俯いた。


「すいません…私、こんな人混み初めてで…」

「そーなのか?ま、このまま入るぞ。」


先輩は人混みに流されるように私の前を歩き出した。

はぐれないように思わず先輩の腕を掴む。

先輩がそれに気が付いたのか振り返ると私は我に返った。


「あ―――すみませ…」

「いい。掴んでろ。」


絶対に嫌がられると思っていただけに、私は遠慮がちに先輩の腕を掴んだ。



――――先輩はやっぱり素敵な人だ。


遠慮がちに掴んでいた私の腕が何度も離れそうになる度、先輩がこちらを振り返ってくれた。

そして最終的には先輩が私の腕を掴んで引っ張ってくれたお陰で、私達はなんとか食堂に辿りつく事が出来た。


いつも私が使ってる所より何倍も広いそこは内装も綺麗で新しい。

光が沢山入るようにと南向きは全面ガラス張りになっており、奥にはテラス席もある。

そこにはおしゃれな学生たちが楽しそうにランチをしていた。


キョロキョロと辺りを見回している私から先輩の手が離れる。

私をここまで導いてくれた先輩のあったかい手だ。


先輩が私を促し食事を買う列に並ぶ。

私も置いて行かれないように慌ててそれに続いた。



「俺は日替わりランチ。お前は?」

「私は…えっと…」


どうしよう。何も決めて来なかった。

いつもなら食堂に入って何にするか結構悩んでから列に並ぶ。

今日は先輩に置いて行かれたくなくて急いで並んだけど――。


私の後ろに並んでいる人たちの視線が痛い。

「早くしろ」と言いたげに私を見つめてくる人たちに威圧されて私はさらにパニックになっていた。


「揚げ物平気か?」

「え?あ、はい。」

「じゃぁ俺と同じのでいいだろ。こいつも日替わり。」


先輩の助言で私はなんとかメニューを決める事が出来た。


ここに辿りつくまでに私は何度先輩に助けられて来たんだろう。

人混みの中私を見つけてくれた事。

私腕を引いてくれた事。


どれも夢みたいな出来事に私の頭にはお花畑が咲いていた。

もしかしてこれは夢じゃないか?

私が見てる幸せな夢なんじゃないか?!


何度も頬を抓っているのを先輩に見られ、笑われた。

「なにやってんだ?」と笑う先輩が現実である事を私はなによりも願った。

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