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The HEROINE  作者: こみつ
10/10

10-mission-作戦-(3)

完全に酔いの覚めた私は恥ずかしさのあまり居酒屋の外に飛び出した。

店の前で項垂れていると三島先輩が店の外に顔を出す。

あぁ…やっぱり格好いい。

ずるいなぁ本当にずるいよ。


「大丈夫か?」

「すみません本当に…本当にご迷惑おかけしました…!!」


あれ。なんか涙でてきた。

ここはこう、酔いに任せて先輩にくっつけてラッキーって所なんだろうけど、私は罪悪感の方が勝ってしまい思わず泣き出す。

今絶対泣くタイミングじゃないんだけどなぁ。

何だか涙止まんないよ。


「まだ酔ってんのか?」


先輩が私の顔を覗き込んでくる。

そして大きな手が優しく私の額に触れると、息苦しい程に心臓が跳ねた。


さっきまで酔って握り続けていた先輩の手。

おおきくて、指がながくて、綺麗だけどしっかりした男の人の手。


「…ごめんなさい…」


私は謝る事しか出来なくて、先輩は困った様に首を傾げると少し笑ってくれた。




それからすぐ解散になり、店の前で私、先輩、コノハさん、篠原さんが揃う。

篠原さんはごめんね~と私に謝ってくれたが絶対に悪いだなんて思ってないだろう。

むしろ「トシキに介抱されてラッキーだったっしょ?」とでも言いたげな顔だった。


……なんだか不愉快である。


「それじゃぁ解散しよっか?あ、そーだトシキ、このまま米良ちゃんのこと送ってってあげればー?」


「え」


篠原さんが何の悪びれも無くそう先輩に促すと先輩は嫌な顔一つ見せずに「そうだな」と頷いた。

私としてはこれ幸いだったが、これに苦言を呈したのはコノハさんだった。


「遅らせるなら篠原が送ってけば?篠原のせいでキョーコちゃんが酔っぱらっちゃったんだし。」


コノハさんのいう事は至極まっとうだ。

私にお酒を飲ませたのは篠原さん。

関係のない三島先輩に介抱された上にこのまま送って貰おうだなんて図々しすぎる。


「いいよ。俺が送ってく。コノハは篠原と帰れ。」


しかし三島先輩は自ら私を送っていくと言いだした。

コノハさんの顔が苛立ちに歪む。

どうして?と問いかけたいのを必死に堪えているようだ。


「篠原に送らせるなんて危なすぎだろ。」

「…じゃぁ私は良いって言うの?」

「そうは言ってねぇ。」


篠原さんはコノハさんに気があるのだから、私よりもコノハさんを送らせた方が危ないんじゃなかろうか。

しかしこれも篠原さんの「おもうつぼ」。

先輩に私を送らせて、自分はコノハさんと一緒に帰ろうと言う「作戦」なのだ。



「あの、私大丈夫です。もう一人で帰れます。」


私のその言葉に先輩達が一斉にこちらを向く。

篠原さんに至っては「馬鹿!協力だろ!」と言いたげな表情で私に何か身振り手振りしてくるが、そんな事はどうでもいい。

確かに協力関係にはあるが、もうこれ以上三島先輩に迷惑はかけたくない。


煩わしい、とか思われたら今後困る。


「さっきまでボロボロ泣いてた奴が無理すんなっての…」

「本当に大丈夫ですから、私一人で帰れますから!」

「いーから!!行くぞ!」


先輩が私の腕を乱暴に掴んで歩き始める。

それを見たコノハさんが怒ったように「トシのバカ!!」と言っているのが後方で聞こえたが先輩は振り返らなかった。


先輩に手を引かれながら後ろを振り返ると怒ったコノハさんが反対方向に歩き出し、その後を篠原さんが追いかけて行った。

どうしよう……あの穏やかなコノハさんがすっごい怒ってた…!!


「先輩!私本当に大丈夫ですから!コノハさん追いかけてあげてください!」


先輩に掴まれた手を離そうと力を込めるが、なかなか離れようとしない。

いつもの私なら先輩に掴まれた手を離そうとなんてしないけど、今は別だ。

コノハさんは確かに恋敵かもしれない。

いつも先輩にベタベタしてるし、正直私にとっては疎ましい存在かもしれない。


でもコノハさんはこんな気持ちを抱えた私にも優しくて、憧れで―――。


おかしいかもしれないけど、先輩とコノハさんが私のせいで喧嘩するなんて絶対に良くない。


「篠原が追いかけてったろ。」

「でも」

「いいんだよ。篠原もコノハには簡単に手出さねぇから。」


どうして―――そう聞こうとして口を噤んだ。

きっと先輩は篠原さんがコノハさんを好きな事を気が付いてる。

だから強引に私を連れ出したのかもしれない。


「あいつ、普段チャライ癖に本命の女に強引にいけねーの。解りやすいよな。」


そうなんだ…だから私に協力しようなんて言いだしたんだ。

そうだよね、普通に考えたらあんな社交的で誰とでも仲良く話せる人がコノハさんに対しては慎重だなんておかしいもん。


「篠原さんって結構真面目なんですね」

「ま、アイツ俺にそういう事いってこねーからな。」


それはきっとコノハさんが先輩の事を好きだと思う…と言いたいのを我慢して。


(…そういえば、手)


掴まれたままの手をじっと見つめると途端に身体が火照り出す。

さっきまで振りほどこうとしていたのが嘘の様に私は何事もなかったように足元を見た。


今先輩と私が歩いている方向は、私の家とは全然違う方向なんだけど…これを知ったら先輩はどんな顔するかな。

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