1-meet again-再会-
私には高校時代憧れている先輩が居た。
話した事なんて本当に数回ぐらいしか無いけど、勉強もスポーツも出来て美形でモテモテの先輩。
まるで少女漫画から飛び出したようなその先輩と私が釣り合わない事なんて当然解っていた事で。
だから諦めた。
―――諦めたつもりだった。
「……あれ?」
しかし私はまた出会ってしまった。
「……ん?」
憧れだった、三島トシキ先輩と。
私は高校卒業後家から一番近い大学に進学した。
理由は自宅から通える事と、私の頭でも行ける学部があった事。
それがまさか先輩と同じ大学だとは思わなかった。
「あの、私の事覚えてますか?」
明らかに動揺した声で話しかける。
先輩は大学の一番大きな中庭で一人コーヒーを飲んでいた。
周りには誰も居ない。
その隙を見計らって話しかける。
高校時代はいつも取り巻きの女子生徒達がいて話しかけるどころじゃなかったから、自分から話しかけるのはこれが初めてかもしれない。
「あーえっと…確か、ラメだっけ?」
「あ、はい!!」
覚えててくれた!
一回だけ親友の彼氏が先輩のクラスメイトだというつてを利用して遊びに行った事があるだけの私の事を覚えててくれた。
嬉しくて飛び上がりそうになった。
ラメは私の親友が私を呼ぶときに使うあだ名。
本名は米良キョーコと言う。
それでも私の事を覚えてくれていた事、あだ名で呼んでくれた事が嬉しかった。
「同じ大学だったんだな。」
「家から近いのでそれで」
「俺も。」
……どうしよう。
会話が止まってしまった。
次の会話が思いつかずにもじもじしていると先輩が「座れば?」と自分の座って居たベンチの隣を少し開けてくれた。
―――今自分がこの人の隣に座って居る事が信じられない。
どうやら大学では高校時代のように誰かに囲まれてるって事も無いらしい。
それでも特に私達の会話が弾む事は無く、先輩の紙カップに入ったコーヒーはいつのまにか空になっていた。
「じゃぁ俺授業だから」
「あ、はい…」
―――どうしよう。
このままじゃ先輩行っちゃうよ?
このままでいいの私?このままじゃ高校時代と同じ、ただ見てるだけ!?
それでいいの?良い訳無いでしょ?!
メアド聞く?電話番号?それとも、それとも…
「あ、あの!!」
「ん?」
何も考えずに私はただ先輩を引き止めていた。
先輩は少し眠そうだが、怒った様子には見えない。
何も言えないで固まっている私に歩み寄って来てくれた。
「どした?」
「あ、…えっと」
どうしよう。
早くしないと先輩の授業も始まっちゃうし、ウザい女だって思われる…!!
「お昼…」
「ん?」
「お昼っ…良かったら一緒にどうですか?!」
―――終わった。ああもう完全に終わった。
どうしようかと悩んだ結果メアドでも電話でもなくお昼に誘ってしまうと意味不明な行動。
私みたいに全然仲良くも無い奴に誘われたってOKしてくれるわけないじゃないか!
「…じゃぁ、第一食堂で良いか?」
「え」
「なんだ、場所わからねーか?」
「あ、いえ!!解ります!!」
「じゃぁその前でな。」
先輩は少し急ぎ足で校舎へと向かっていく。
その後姿をぼんやりと見つめていると、すぐに授業開始を告げるチャイムが鳴り出した。
それと同時に先輩が走って行く。
中庭に居た生徒達もちらほらと姿を消していく中、私は暫くその場から動けなかった。
確か自分もこの時間に出なきゃいけない授業があった筈だが、私の身体はベンチに貼り付けられたように動かなかった。
――――――どうしよう。
どうしようどうしようどうしようどうしよう!!
まさかの大成功。
絶対断られると思ったのに。
どうしよう、何で?これって少し脈アリって考えていいの?
―――――こんな事ってあるんだろうか。
ずっと憧れだった先輩とこんな風に再会して最終的に結ばれるお話なら、私は完全に少女漫画の主人公だろう。
私はなれるだろうか、主人公に。




