×××が変わった日
復帰作第一弾。短い上にしょーもない。
物心ついた頃に見ていた世界は、とても鮮やかで明るいものだった。
遠い記憶の彼方、幼馴染と共に遊んでいた毎日は鮮やかな色と風景に包まれ、それは美しかった。
————もう、鮮やかな色合いはひどく朧げで、美しく輝いていたことしか覚えていないけれど。
俺が成長すると共に色は褪せ、その輪郭すらも漠然としていった。
それでも、幼い頃はまだ良かったのだ。
解決する術があり、すぐに世界は輝きを取り戻したから。
素晴らしい技術があるものだ、と子供ながらに感心した。
再び鮮やかな世界で生きることになった、けれども。
世界は気づかぬうちに、さらに色褪せ、漠然としていった。
気づいた頃にはすでに手遅れだった。
俺を取り巻く世界はどこか薄暗く、ぼんやりとした、まるで抽象画の様なものになっていた。
そして、何より。
俺自身が、その世界が当たり前のものだと受け止めていた。
美しい色などない、薄墨が混じった色合い。
鮮やかなものなどない、あらゆるものが入り混じった雑多な輪郭。
世界が美しいなんて、誰が言ったものだろう。
どう足掻いたって、世界には美しさの欠片もなく、鮮やかな色合いもなく、降り注ぐ輝きもない。
それとも俺の見る世界だけが違うのだろうか。
色褪せた、薄墨を垂らした様な、水で溶かした様な世界。
これは何かの罰なのだろうか。
俺は前世で何か罪を犯してしまったのだろうか。
かの堕天使ルシファーの様に。
だから世界は俺に見せてはくれないのだろうか。
世界の美しさを。
それならば俺は一体、何を償えば良いのだろうか。
————天啓はふとした瞬間に降りてきた。
直接俺に、ではなく、幼馴染の元に。
やはり俺は神に嫌われているらしい。
だが、哀れに思ったのかそれとも慈悲深かったのか、幼馴染に天啓を授けてくれた。
随分会っていなかった幼馴染に乱暴に腕を引かれた時にはどうしようかと思ったけれど、幼馴染は俺に光ある未来を見せてくれた。
最初は半信半疑で、この罪深い身が簡単に救われると思っていなかった。
けれども、幼馴染は俺を辛抱強く説得し、希望を持たせてくれた。
こんなにも罪深い俺を気にかけてくれる幼馴染には、きっと一生かかっても返せない程の恩がある。
それでも気負いなく笑うから、本当に感謝してもしきれない。
そして、今日。
世界は、色を取り戻した。
混じり気のない、薄墨などない、遠い記憶の彼方と寸分違わない鮮やかさで。
上から光が降り注ぎ、あらゆるものが明るく輝いている。
神よ、俺に何か罪があったとしたならば、今世は深く悔い改めよう。
慈悲深き貴方に背くことは何一つしない、哀れみをかけてくださったことに感謝し、生きていこう。
世界はこんなにも、こんなにも輝きと色鮮やかさに満ちている。
以前は確かに見ていたはずの世界————それは、確かに。
間違いようも疑いようもなく、美しかった。
ああ、なんて、なんて世界は美しいのだろう!
「………いやお前、それ」
—————眼鏡変えただけだから。
詳しい話は第二弾の方で。しかし、全く持ってしょうもない。