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1話 勇者

ルーシェは自分の目の前の光景に目を丸くしていた。

なぜなら、今まさに自分の命を奪おうとしていた巨大な火球が目の前に発生した光の粒子に触れたことによって消滅したからだ。

そして、その光の粒子は徐々に人の形に変わっていき、光の中から一人の青年が姿を現した。

ルーシェは光の中から現れた青年に目を奪われた。

なぜなら、その青年の姿はルーシェが昔によく読んだ御伽噺に出てくる勇者と同じ姿だったからだ。

黒髪に見たことのないような服装、まさしく物語に出てくる勇者と同じだった。


「勇者・・・様?」


ルーシェは誰にも届かないくらい小さい声で呟いた。




光の中から現れた青年、空は目の前で困惑の色を浮かべている大男を少しの間見つめ、その後自分が召還された部屋を見回した。

最後に自分の後ろにいた少女を見つけ、現状を完全に把握した。


「まあ、めんどくさい事は嫌いだが、いきなり魔王の部屋に放り込むとは思ってなかった・・・」


空がそう言うと同時に、魔王ルードは黒い火球を放った。

空は体を軽く横にずらし、攻撃を回避した。


「おいおい、急に攻撃してくんなよ」


「だまれ。我と勇者との闘争を邪魔しおって。許さんぞ人間」


「ハァ~、邪魔する気は無かったんだが、まあ運が悪かったと思って許してくれよ」


「ふざけるな、人間風情が我にものを申すな」


「たく、せっかく人が忠告してやっているのに」


空はそう言うと、目つきを鋭くさせ殺気を放った。

その殺気はをもろに浴びたルードは二三歩後退した。


「ば、馬鹿な。なぜ人間がこれほどの殺気を放てるのだ」


「どうでも良いだろ、そんなこと。とりあえず、ここからは勇者の代わりに俺が相手をしてやるよ」


「なめるな」


ルードは先ほどよりも威力を込めた黒い火球を放った。


「さて、とりあえず実験しておこうか」


空はそう言うと、避けるどころか自ら火球に当たりに行った。

そして、火球は空を包み込み盛大に爆発した。


「馬鹿が、自ら当たりに行くとは・・・。ただの自殺志願者だったのか」


ルードはそう言うと、視線をルーシェに向けた。

ルーシェは目の前で炎に飲み込まれた空を見て絶望に満ちた表情を浮かべた。


「さあ、貴様も先ほどの小僧と同じく我が手で葬ってやろう」


「・・・・誰が葬られたって」


「な・・・なに」


ルードは驚愕した。

なぜなら、先ほど自分が葬ったはずの人間が傷一つ負わずに立っていたからだ。

空は軽いストレッチを行い、体をほぐした。


「さて、そろそろこちらの攻撃ターンといこうか」


空はそう言うと、弾丸のようにとび出だした。

それは比喩ではなく、空は自身の足の筋力をバネのように扱い弾丸のような炸裂音と共にとび出したからだ。

そして、空はその速度のままルードに接近するとそのままルードを蹴り上げた。


「グハ」


ルードは空の蹴りを腹部にまともに喰らい、腹部を押さえうずくまった。

空はさらに追撃をするために拳を構えたが、何かに気づきルードから距離を離した。

空がルードとの距離を離したのと同時にルードの周りでいくつもの爆発が起こった。


「うわー。えげつないことするな~」


「それを言うなら、なにも力を付与していないはずの拳で我にダメージを与える貴様が言えた事か」


「あれ、あの程度でダメージを与えられるんだ」


「ほざくな。いいだろう我の本気を貴様に見せてやろう」


ルードはそう言うと、体中から黒い炎を放ちだした。


「駄目です。早くルードを倒してください」


「いや、倒せと言われてもあの炎の塊をどうやって」


「何か、武器は持ってないんですか」


「ハハハ、そんなものあったら最初から使っているだろ。普通に考えて。でも、どうやら遅いみたいだよ」


「え・・・・」


ルーシェは空に言われて、ルードを見ると、その姿に驚愕した。

なぜなら、その姿は先ほどの大男ではなく背中からは巨大な翼が生え頭には二本の角口には牙が生え、体の大きさも先ほどのよりも二まわりほど大きくなっていた。


「さあ、貴様に地獄を見せてくれよう」


「ハン、面白い。いいぜ、本気で相手になってやるよ!!」


空は口元に笑みを浮かべながら拳を構えた。

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