表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/26

最終章

こんな天気の日に、長い間、立っていると、膝が疼いてくる。


もう完治はしているし、日常生活に支障はない。


運動だって、問題なく出来る。




無意識に膝を触っていると、


「膝、どうかしたの?」


例のOLさんが、また話し掛けてきた。


「高二の時、大怪我しちゃって。完治はしてるんですけど、こんな天気の日は疼いてくるんです。」


「そうだったの…。知らなかった…。」


「…?」


(知らなくて当たり前だろ?)


(何か変だな、この人…。)


(見た目と違って、天然なのか?)




「奥さん、遅いね。家は遠いの?」


「いえ、近いんですけど…。出掛ける時は、いつも時間が掛かる人なんです。昔から…。」


「恐妻家のキミは、文句を言えないんだね!でも、一回ぐらい、ガツンと言ってやれば?」


「それが出来たら、苦労はしませんよ!文句を言おうものなら、何倍にもなって返って来るんですから!」


「ふふっ、仲いいんだね…。ちょっと羨ましい…。」


「…。」


(また、余計なこと、言っちゃったかも…。)


淋しそうに笑う彼女を見て、申し訳なく思った。




「さっきは…、ごめんね。重たい話をして…。」


「そんなこと、気にしないでいいですよ。俺が、余計なことを聞いたのが、いけなかったんですから。それに、人に話せば、楽になることもありますから。」


「相変わらず、優しいんだね…。」


「…!」


(また、『相変わらず』って言った!)


(今度は、確かに言ったぞ!)


(やっぱり、俺のこと、知ってるのか?)


(名前を聞いてみたいけど…。)


(結婚してるのに、ナンパみたいなことするわけにはいかないし…。)




「ちょっと小降りになって来たみたい。」


彼女がそう言った時、妻が運転する車が、駅のロータリーに入って来るのが見えた。


「俺は、お迎えが来たみたいです。」


「今日は、話し相手になってくれてありがとね。いい暇潰しになったよ!キミに話せて、スッキリした。『結婚っていいかも』って、ちょっと思った…。」


「お役に立てて、幸いでございます。」


「ふふっ!」


(あっ、ウケた。)


この時、彼女は、一番の笑顔を見せた。


「それじゃあ、お先に!」


「お疲れー!」


彼女は、小さく手を振った。


プップー!


妻が、車のクラクションを鳴らす。


そして、車に向かって、走り出そうとした時…。


『さよなら、マサ君』


「えっ!」


『マサ君』と言われた気がして、彼女の方を振り返る。


彼女は、また空を見上げていた。


(気のせいか…。)




「遅いですよ、美咲さん!」


車に乗り込み、妻に文句を言う。


「ごめん、ごめん!支度に手間取っちゃって!」


妻は、謝ってはいるが、きっと、反省はしていない。


(車で迎えに来るだけなのに、どんな支度が必要なんですか!)


という言葉は、言えるわけがなく…。


俺は溜息をつきながら、何気なく窓の外を見る。


そして、雨宿りをしていた場所で視線が止まる。


(あれ?あの人、傘、持ってるじゃん!)


ちょうど、あのOLさんが、傘をさして歩き出すところだった。


雨でよく見えなかったが、何故か、泣いているように見えた。







「ねぇ、美咲さん。」


「何?」


「俺達が出会った日って、どんな天気でしたっけ?」


(俺は、何故、こんなことを聞いたのだろう?)


「はぁ?…多分、晴れだったと思うけど?」


「それじゃあ、付き合い始めた日は?」


「その日も、晴れだったような…。」


「結婚式の日は?」


「雲ひとつない快晴…だったけど…。急に、どうしたの?何か変だよ、マー君。」


(やっぱり俺は、『雨男』じゃないじゃん!)







〜完〜



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ご意見、ご感想がありましたら、お寄せ下さい。




この話を作るに当たって、イメージしたのは、『不純な純愛』です。

その為、性表現が多く含まれていることを、ご容赦下さい。




(第一章について)

第一章は、正宏と瑞希の出会いから、付き合い始めるところを書いてます。

出会いの場面で、お互いに、都合良く一目惚れします。

かなりベタな展開で、失笑してしまった方もいたかも知れません。

この話を作る上で、出会いのシーンは、出来るだけベタな展開にしようと思っていたので、失笑を買うのは覚悟の上です…。




(第二章について)

第二章は、恋人になってから、初体験までを書いています。

かなり端折る形になってしまいました。

本当は、恋人同士のイベントを通して、二人がラブラブになっていくようにしたかったのですが…。

一話に膨らませるようなネタがなく、クリスマス以外は、数行程度、触れるだけになりました。




(第三章について)

第三章は、少しずつすれ違う二人を書きましたが、ここが一番、難しかったです。

上手く伝わったでしょうか?

正宏と瑞希以外の登場人物を上手く動かすことが出来ず、中途半端な中だるみの章になってしまいました。

もう少し、上手く描ければ良かったのですが…。




(第四章について)

第四章は、二人の別れまでを書きました。【五】はオマケみたいなものです。無くても良かったのではないか?とも思います。

二人が破局した原因については、「たったそれだけのことで?」と、思ってくれれば幸いです。

それが狙いです。




以下、ネタバレ注意!!







(最終章について)

大人になった正宏と話しているOLは、大人になった神崎瑞希です。

各章の【序】では、隠すように書いたつもりでしたが、読み返してみると、バレバレですね…。

瑞希は、話している相手が正宏だと気付いていますが、正宏は、相手が瑞希であるとは、最後まで気付いていません。

二人がお互いのことに気付き、再び結ばれるというラストも考えましたが…、この形にした方が、面白いと思ったので…。

そういうラストじゃありません!という意味の伏線として、正宏は、既婚で妻は妊娠中という設定にしました。

正宏は、トラウマを抱えたままの瑞希を忘れて、自分ばかり幸せになったわけでは、決してありません。

その辺のことは、番外編で書きたいと思います。




以上、作者の呟きでした。







(人物紹介と補足)


『水野正宏』

本編の主人公。

身長186センチで結構イケメン。

それなりにモテると思われるが、好きな女の子に対して一途な為、それ以外の女性からの好意の視線には気付かない。

ごく普通の思春期の男子をイメージしていましたが、話が進むに連れ、酷い男になってしまいました…。


『神崎瑞希』

話し好きで明るい女の子。

ちょっと天然。

身長160センチ。

中学時代は、真面目な優等生の外見だったが、高校生になると、イメージチェンジをする。

下ネタも平気なオープンな性格だが、正宏に本音を隠して付き合いを続けていた。

正宏のことは、『マサ君』と呼ぶ。


『高木(名前は不詳)』

正宏のバスケ部の先輩。

身長180センチ弱。

中学時代は、正宏と瑞希のキューピッドになれず、高校時代は、正宏と瑞希の仲を掻き回す存在にもなれず、中途半端な人物になってしまいました…。


『滝本由香』

東高校バスケ部マネージャー。

身長160センチ弱。

正宏の先輩で、正宏にとって二人目の恋人。

いつもニコニコしていて可愛らし娘。

正宏に瑞希がいる間は、おとなしくしていたが、二人が別れた後は積極的になり、念願叶って正宏と付き合い始める。

正宏と別れる時、彼にトラウマを残す。

正宏のことは、最初から最後まで『水野くん』と呼ぶ。


『水野美咲(旧姓 大野美咲)』

正宏の妻。

正宏より三歳上の、姉さん女房。

身長176センチで、女性にしてはかなり背が高い。

最終話の時点で、結婚一ヶ月、妊娠六ヶ月。

正宏のことは、『マー君』と呼ぶ。

彼女を主人公にした番外編を書きます。

詳しくは、そちらを御覧下さい。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ