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第三章 【二】

高校一年生の春。







また、バスケット漬けの毎日が始まった。


俺が、バスケは中学で卒業しようと思っていたのは、自分の限界を感じたからだ。


それまでは、バスケで上を目指す気満々だった。


中学一年生の秋からレギュラーに選ばれ、俺は、結構やれる奴だと思っていた。


上級生に混じって試合をしても、引けを取ることはなく、中学二年の夏は、県大会まで行けた。


しかし、チームを引っ張る立場になると、自分の実力は、先輩達のフォローの上に成り立つ、見せかけの実力だったことに気付く。


自信を失ったまま挑んだ中学最後の大会は、市の大会のベスト4をかけた試合で、大差で負けてしまう。


自分が引っ張らなければいけない立場なのに、逆に足を引っ張ってしまった。


試合後、悔しいはずなのに涙も出て来ない。


俺のバスケットに対する思いは、こんなものだったんだと思い、苦笑いするしかなかった。







東高校バスケ部は、三年生が四人、二年生も四人、女子マネージャーは二人。


人数は多くないが、みんな真剣で、バスケが好きだった。


一年生は、仮入部には十人以上いたが、実際に入部したのは四人だけで、女子マネージャーはゼロ。


マネージャーは、隔年で募集するみたいだった。


「まぁ、今年も例年通りだったな。」


先輩達は、新入部員が少ないことを、気にしていないようだった。




体育会系高校生の最大の目標は、インターハイ出場だが、当面の目標は、西高との定期戦での勝利。


毎年、六月の文化祭の日に、どちらかの学校で、定期戦は行われる。


今年の会場は、西高の体育館。


東高も西高も、同じ日に文化祭が行われる為、俺的にはラッキーだった。


瑞希さんの前で試合が出来るから…。


彼女の前で、いいところを見せたい!


が、しかし、すぐに現実を思い知らされる。


半年以上のブランクは、あまりに大きかった。


技術的な勘は、すぐに取り戻せたが、いかんせん、体力が追い付かない。


(何とかしないと、瑞希さんに、いいところを見せられねぇな…。)


俺は、体力作りに励む必要性に迫られ、居残り練習をしたり、早起きして家の近所を走ったりした。


やると決めたら、とことんやらないと気が済まない性格だから仕方がない。







俺と瑞希さんはというと、相変わらず、月一回のデートを続けていた。


しかし、受験生だった時よりも、時間を作るのが、更に難しい。


平日は毎日、遅くまで部活。


土日も、練習や練習試合。


休みは、月に一回しかない。


俺達は、その日に合わせて、デートをするしかなかった。


体力不足の俺は、瑞希さんを押し倒す気力もなかった…。




五月のデートは、彼女と映画を見に行ったが…。


「もーっ、信じらんない!マサ君、ずっと寝てるんだもん!」


「すいません…。」


(俺…、デートの度に謝ってないか?)


映画の後に行ったファーストフード店で、瑞希さんに怒られている俺。


彼女が見たいと言っていた映画の途中で、睡魔に負けてしまった。


ラブストーリーだったはずだが、内容はほとんど記憶にない。


「学校、大変なの?」


「学校というより、部活が大変で…。」


「何で?マサ君なら、すぐにレギュラーになれるでしょ?」


(余計なプレッシャーを掛けないで欲しいんだけど…。)


「半年以上もやってなかったから、体力不足で…。」


「じゃあ、余計なことに体力を使えないね!」


「そうですね…。」


(また、そっち方面かよ…。)


「ちょっとー、今のは、ツッコむか、いつもみたいに慌てるか、どっちかしてよ!」


そんな彼女の言葉も、スルーしてしまった。




「文化祭の日、西高に行きますから。」


「聞いたよ!定期戦やるんだって?応援しに行っても…いい?」


「いいですけど…。でも、他校の応援なんかしてもいいんですか?それに俺は、試合には出られないかも知れませんよ…。とても、中学時代のようにはいきませんし…。」


「マサ君なら大丈夫だよ!まだ一ヶ月あるし。」


「まぁ、そうですけど…。」


彼女に励まされると、何とかなりそうな気がしてきた。


男とは、単純な生き物だ。


好きな女の子に応援されると、俄然、やる気が出てくる。


(彼女は、俺の女神だな…。)




「今日、これからどうする?また、私の家に来る?」


彼女の両親は、土日祝日、関係なく、仕事に行くらしいが…。


「うーん…、今日は止めておきます…。」


「今日は、押し倒す気力もなし…か…。」


「毎回、毎回、押し倒しませんよ!発情期のオスじゃないんですから!」


「やっぱり、マサ君はそういう反応をしてくれなくちゃ!素直で可愛いんだから!」


「…。」


(この人の趣味みたいなもんだな…。俺をからかって、楽しむのは…。)


(そういえば、俺、一度も瑞希さんの両親に会ったことないな。)


(一度、挨拶ぐらいしないといけないなぁ…。)




「それじゃあ、今日は、公園でも行こうか?暖かいし、天気もいいから。雨男のマサ君にしては、珍しいよね。」


「あのですね、百歩譲って、俺は雨男だとしましょう。でも、瑞希さんも雨女ですからね!」


「私は違いますー!マサ君だけが雨男ですー!」


毎度、お馴染みのやり取り。


別に、どっちだっていいのだが…。


二人が一緒にいることさえ出来れば…。







順調に、付き合いを重ねてきていた俺達だったが…。


俺は、周りの変化に、追い付けないでいた。



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