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【書籍化】無華の花嫁〜蔵に囚われた少女は、黒薔薇の殿下に溺愛される〜  作者: 木風
第三章:白梅

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第十三話 振袖の使い道①

「あ、あの五条様……園遊会に私を連れて行くというのは……やっぱり本当でしょうか?」


部屋に戻るなり、居ても立ってもいられず、五条様に尋ねる。

声は自分でもわかるほどかすかに震えていて、喉の奥が乾いて、言葉の端がひっかかってしまう。


園遊会がどんなものなのか、詳しくは知らない。

けれど——あんな豪奢な着物を仕立てるほどの場なのだ。

きっと大勢の、高貴な身分の人々がたくさん集まるに違いない。

その中へ、五条様が『無華』の私を連れて行く。


——見られる。

——晒される。

——笑われる。


想像が、勝手に最悪の形を選んで並び立ててくる。

注目の視線。ひそひそ声。肩越しに投げられる薄い笑み。

そして最後には、『気味が悪い』『縁起が悪い』という、あの言葉。


その場のことを思い描いただけで、脚が竦みそうになる。

ソファの上に座っているのに、膝が今にも崩れそうで、手の平が冷たく汗ばむ。


「例年は一人で参加していたんだが。よい機会だ」


五条様は、手もとの書類から視線を上げることもなく、淡々と答えられる。


——やはり予想した通りだった。

五条様は、物珍しさから私をここに置いているんだ。


そして、その珍しい玩具を園遊会で、他の貴族の方たちに『共有』する——。

そう考えた瞬間、胸の内がきゅっと縮こまった。

怖いのは、蔑まれることだけじゃない。

五条様の隣で、笑いものにされてなお、私は笑っていなければならない気がした。

そうしないと、五条様にまで恥をかかせてしまうから。


こんな扱いに慣れたと思っていたのに。

どんな扱いをされても、これ以上傷付くことなんてないと思っていたのに。

ここに置いていただけるのは慰み者としてだと、わかっていたはずなのに——


——五条様がお決めになられたこと。

私がお断りなんてできるはずがない。


けれど、五条様は知らないのだ。

『無華』が周りからどう見られるか。

どれほど忌み嫌われているのか。

そして、何より——その視線が、どれほど深く人の心を抉るのかを。


『ああ。やはり、美しい瞳だ』


以前、五条様に言われたあの言葉が、ふいに脳裏に浮かぶ。

あの言葉が嘘ではないことも、わかっている。

五条様は本心で、そう言ってくださったのだろう。


でも同時に——

すべてを持っている五条様だからこそ、この呪われた瞳を『美しい』という一言で、簡単に包んでしまえるのだとも思ってしまう。


この瞳が、どれほど私自身を呪い、周囲を傷つけてきたか。

それを説明したところで、きっと伝わらない。

伝える言葉を私は持っていないし、そもそも、言葉にした瞬間に、また自分で自分を傷付けることになる気がする。


ほんの少し、期待してしまった。

それが今、全部、罰のように痛い。


このお屋敷で、人の優しさと、温かい体温に触れただけで、どうしようもなくなり、ほんの少し、安心してしまった。

やはり、私はどこまでいっても『無華』でしかないんだ。


その事実を、改めて突き付けられた気がして、心に深い罅が入ったような痛みが走る。

息を吸うたびに、その罅がひろがっていく気さえした。


園遊会は一カ月後だと、先ほどおっしゃっていた。

こんな崩れそうな気持ちを抱えたまま、この一カ月をどう過ごせばいいのだろう。

笑って食事をして、散歩をして、着物の支度をされて——

その全部が、最後の飾りつけのような気がしてくる。


「金のことは気にするな」と言われたけれど。

お医者様にかかったお金だけでもきっと高額なのに。

仕立ててもらう振袖一式。あの豪華な布地。

一生をかけても返せないものを、私は受け取ってしまっている。


——いっそ、すぐにでも慰み者として使い捨ててくれたら。

体調なんて良くならずに、あのまま死なせてくれていたら。


そしたら、あの着物も無駄にならずに済むのではないか。

そんな都合のよいことまで考えてしまう自分が、たまらなく卑しくて、情けない。


何より、五条様を困らせることが、一番の罪だと——

そう思ってやまない。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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