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無華の花嫁〜蔵に囚われた少女は、黒薔薇の殿下に溺愛される〜  作者: 木風
序章:雪

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第一話 一番古い記憶①

挿絵(By みてみん)

「お前さえ……生まれてこなければ……!!」


それが、私の最も古く、そして最も鮮明な記憶。


細く骨ばった白い指が、幼い私の首筋へ、ためらいなく食い込む。

爪の先が皮膚を掻き、喉の奥に鈍い痛みが走った。


顔を上げれば、そこにあったのは——見慣れているはずで、安心すべきはずの母の顔。

けれど、その眼は鬼のように真っ赤に充血し、濡れた睫毛の隙間から、煮えたぎった雫が、ぽたり、ぽたりと私の頬へ熱く落ちた。

息の温度も、涙の熱も、全部が怖い。


息ができない。

声を出そうとしても気道は塞がれ、水から揚げられた鯉のように、口をぱくぱくさせることしかできない。

畳の匂いだけが、やけに近い。


ごめんなさい。

私が、皆と違う『無華(むか)』なせいで。

ごめんなさい。

私のせいで、お父様が家に帰ってこなくなってしまって。

ごめんなさい。

お母様の胸を、こんなふうに焼き焦がすためだけに、生まれてしまって……


本当に、ごめんなさい。


心の中で、数えきれないほどの『ごめんなさい』を、絶え間なく唱え続けた。

息を奪われても、謝ることだけはやめられなかった。

私の存在すべてを、許しを乞うように。


「……ぉかあ、さん……」


ひゅう、と壊れた笛みたいに空気が漏れた。

ようやく絞り出したその一言で、母の手がびくりと震え、指の力がほんのわずかに緩む。


乾いた空気が喉に流れ込むと同時に、私は激しく咳き込み、涙で視界がにじんだ。

薄れゆく意識の中、母は青ざめたまま——罪に怯える子供みたいな顔で、私から逃げるように走り去っていく。

その背中を、私はただ見送ることしかできなかった。


そうして私は、一人、畳の上で静かに目を閉じた。

このまま眠ってしまえば、きっと楽になれる。幼い私は、そんなことさえ思っていた。

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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