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マリアベルとジェシカ


 リュミの降りた馬車の中で、背筋を伸ばし座っているジェシカが話かけてきた。


「エアリル様からご相談をされた、先ほどのリュミエール様へのお話しの中には、良い人が好きな人かのくだりはなかった様に思われますが」


 少し可笑(おか)しみを含めた声だった。


「だって、優しくて良い人だから好きになるわけじゃないでしょ?もちろん、それがきっかけで好きになる人はいっぱいいるけど…それだけでリュミが惹かれるのかなぁって、マイク様もそう。リュミのどこに惹かれたのかしら?綺麗だから?高位貴族で控えめだから?リュミはそれだけではないもの」

「なるほど、まぁ理由がなく惹かれる場合もありますけどね」


 何かを思い出すように、ジェシカの瞳が上を向いた。


「ふふ、そんな思い出ある?」

「わたくしだって、生まれた時からこうだったわけではありませんわ」

「それはヘンリーのこと?」

「…それは忘れましたけれど…リュミエール様のことは見えるのにご自分のことはいかがなのですか?」

「それな」

「何ですか」


 ジェシカと恋バナができるなんて思わなかった。馬車の窓からは潮の香りがしてくる。


「海なんて久しぶりー!お兄様泳げないのに大丈夫かしら?浅瀬で足だけ浸してるだけとか、私も少し海にでたいな」

「アイシュア様は遊びに行ってるのではありませんよ。我が領ではないのですから、止めてくださいませ。川遊びとは違うのですから」

「はぁい」

「はいは短く」


 ジェシカとの会話は楽しい。怒られていてもどこか甘やかされている気がして。メイヤさんともそんな関係が築けるといいと思う。ううん、子供の頃から付いていたのだから、今回のことはたまたまあった失敗だわ。


「リュミの護衛を家から紹介するって本当?」

「はい。アイシュア様に良い者をご紹介いただけないかお話しがあったそうです。ゴーディでしたら情報が多少流れても大丈夫と思われたのでしょう」

「そうね」


 他家からの目や耳を入れるより良い。安全だし。


「ミモリにしようかと思っております」


 うぁぁ…ジェシカは私の表情を読んで困ったように笑う。


「ニシミルの妹ですから、まぁ普段の言葉遣いは注意が必要ですが、身体強化を持っておりますし、礼儀も及第点かと…リュミエール様のお輿入れが決まったら、領地に戻ってくる前提ですが」

「ちょうど、ハウネ様について王都に来ておりましたから、面接だけでもエアリル様にお話ししてます」


 来てるの?あの問題娘が!


「え!会ってないけど!」

「ふふ、せっかくの王都だから観光してくるそうです。領地から何名か連れ立っていっておりますわ」

「……お父様が災厄からの王都の守りに、メイドたちを回してくれたのね」


 災厄のための布石だわ、弓の扱いはうちのメイドたちはとても巧いから。


「そうですね」


 もう、ジェシカも濁さなかった。


「でも一つだけ違いますよ。お嬢様のためです。王都の守りはついでです。なんせ、壊される前に王都見ておこう~とミモリが言ってましたからね」

「あの子は、もう」

「ご領主さまもそうしろ、そうしろと」


 お父様ったら、もう。


「さ、アイシュア様たちが…あら、キュービス家の方もお見えのようですね。少し整えましょう」


 ジェシカが化粧道具を出し、馬車の中でメイクを直し、髪も綺麗に上げてくれる。

 馬車を降りると、寄港地としての洒落た海岸沿いが、ちょっとした野営地みたいになっていた。

 なんで、炊き出ししてるのかしら?


「マリー来たのか」

「お兄様!」


 武器(エモノ)であるハルバートを持ち、お兄様が口角を上げた。久しぶりに推し愛がトキメク。


「領地からお持ちになりましたのね」

「これか?」


 私より長いハルバートを軽く片手で持ち上げる。


「かっこよ!ですわお兄様」

「そうか」


 機嫌よく笑うお兄様に後ろから、キリアン様とお父様で在らせられるキュービス宰相もいらした。


「お久しぶりでございます、宰相閣下。ゴーディ・ハウネが息女マリアベルでございます」


 砂浜であるが、重心をふらつかせず、カーテシーをとる。


「マリアベル嬢、なんと美しく成長なされたことか、父上もご自慢であろう」

「光栄に存じます…キリアン様もごきげんよう」

「ああ、白いレースと淡いグリーンがスズランのように愛らしいな」

「ありがとうございます」


 貴族の嗜みを互いに笑顔でこなす。

 お兄様がわたくしの背に手を回すと、先へと促す。


「これからヘンリーと演習を行う。あいつも武器(エモノ)持ちだ」

「まぁ、素敵。お兄様頑張ってくださいませ」

「いいところを魅せよう」



 *  *


「父上、背筋が凍りました」

「ふむ、先ほどアイシュア殿が言ったのも戯言ではないようだ」


 マリアベル嬢を褒めた時のアイシュア様が私を見る目が、魔獣を見る目だった。そわそわした父が後に続く。


「楽しそうですね…」

「戦鎚と線斧の合わせだ、胸がときめかんでどうする」

「母上には内緒にしておきます…ああ、シルヴァン殿下にもか」


 私の独白は潮風に飛ばされた。



お疲れ様です。

いつも読んで下さってありがとうございます!


キリアン親子は書いていて楽しいなぁw

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― 新着の感想 ―
砂浜でのカーテシーは大変そうw (´ε`) 武器愛好家、再び! って感じですね〜。 (・∀・) 砂浜での戦いになるのかな? とても楽しみですよ。 (「`・ω・)「
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